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観測不能の侵略者  作者: 九月
第一章 巷で噂の変質者
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8話 誤解は解こうね

シャルヴィスは部下の下に歩いていった。そして何やら指示を出そうとしたらしいが、部下の一人にからかわれて上司としての威厳を示し損ねていた。とはいえ関係性は良好なようで、部下の皆さんは彼女の意向に従っている。まあそうでなければ私の護衛など請け負わないだろう。お互いの信頼があるからこそ、護衛なんて面倒な厄介事も承諾できるのだ。とにかく、彼女らが仲良くやっている隙に冒険者二人組に一応の挨拶でもしておこう。


 昨日荷馬車を降ろした場所へ行くと、二人組が話し合っていた。ふむ、よく見ると中年男性冒険者は弓を背に、若人男性冒険者は剣を腰に提げている。帯剣。いかにも冒険者といった風貌ではないか。よくよく考えたら森を二人で通行するくらいなのだから、けっこう強いのかもしれない。だからどうといったことは別段無いのだが。


 「おはようございます。先日は荷台に乗せていただいて助かりました。」

 「お、おう。ああ昨日の嬢ちゃんか、びっくりしたぜ」

 「おはよう。君もこれから出発かい?よかったらまた乗せるけど」


 そこで私は、アルノア教団という人達に街まで護衛してもらえることになったと伝える。ここで得られる反応によってはシャルヴィスとの距離を考えなければならなくなるが、予想に反して冒険者二人はアルノア教団に好印象を持っている様だった。だって黒衣纏ってるから怪しげなんだもん。邪神かなんかを崇め奉っているマイナー宗教団体過激派なのかとも思うだろう。


 そんな流れでアルノア教について尋ねてみると、昔からあるにはあって別に普及してはいない宗教がいくつかある内の一つであり、最近布教が盛んになってきたそうだ。それで今はアルノア教が宗派としては主流らしい。ようするに今の流行だということである。もともと無宗派の人間が多かったみたいなので、流行としては広まりやすいものだったのだろう。聞いたところ彼女たちの行動の評価も概ね高いようだし、アルノア教の教えは簡単に言うとシンプルでわかり易いみたいだ。とりあえず危ない思想の集団ではないということがわかって安心だ。


 「それにしても昨日は気付かなかったけれど、君は高貴な身分なのかな?アルノア教団が護衛につくみたいだし、それに昨日は言葉遣いも今と違ったような。あとは顔立ちも気品があるような気がするし」

 「そういやそんな感じするな。森を一人で歩いていたところを見ると嬢ちゃんなんか大変みたいだな。ま、俺たちに出来ることなんて無いだろうけど頑張れよ」


 誤解されてしまった。ただの村人だと言っておかなければ。誤解は早めに解いておいたほうが今後の憂いを少しでもなくすという意味でも大変よろしいのだ。


 「誤解です。生まれも育ちも村ですし、アルノア教団の皆さんが護衛してくださるのも私が一人で森を抜けるのは危ないので見過ごせないという、とてもお優しい思いからです。きっと同じ状況の人がいれば身分なんて関係なく手助けしてくださることでしょう」


 アルノア教の株を持ち上げて隠れ蓑にしておいた。


 「そうなのかい?まあ森を子供一人で歩くのは本当に危険だからね。何か事情があったんだろうけど今度からは大人の人にきちんと相談するんだよ?」

 「はい、心配してくださってありがとうございます。行先も同じみたいなのでそれまでよろしくお願いしますね。ではそろそろ」

 「おう。気ぃ付けるんだぞ」

 「はい!」


 元気な返事を披露することで、一介の村人風情であることを演出しておいた。元気なことは良いことだ。ともあれ無事に誤解が解けたようなのでよかった。誤解なんてものは要らぬ気苦労の元でしかないからな。私はシャルヴィスのいる所にとっとこ走り出した。




 「・・・・・・村人というのは無いと思うけどね。どこかの王族の血が入っているのかな」

 「・・・天使かもしれん」

 「天使って、え、まさかそういう趣味が?今そういうの危ないよ」

 「違ぇよ!変態と一緒にすんな!いやなに、俺に娘がいたらあんぐらいの年だろうしよ。あんな笑顔向けてくれるのかねぇ、なんて思っちまっただけだ。」

 「ふーん、まあ天使の笑みだったかもね」


 そんなこんなで誤解は解けていなかった。大人の対応だったのでした。ミリアは、自らが去った後に行われた会話なんてものを認知するほどの超聴覚はあいにく持ち合わせておらず、残念ながら自身の思惑はあまり上手くいかなかったことを知る由もないのだった。残念。




 シャルヴィスたちは準備を大方終えて、配置とか打ち合わせをしていた。私は護衛していただく立場なので、なるべく目立たぬよう身を小さくして謙虚な態度で、そこらへんに落ちていた木の棒でお絵描きでもしていることにした。ねこねこ。


 そうこうしているとシャルヴィスに声をかけられ、荷馬車に案内された。荷台に上るとアルノア教団の方が4人いた。話したそうにこちらを見ている。・・・謀ったなシャルヴィス・X・インフェルノォォ!!これが貴様の能力(スキル)地獄(長時間の会話強制)かあ!?なのかぁ!?ああああああ!!!

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