88話 壊すために
時刻は深夜2時。今日、国が一つ滅ぶ。
人々が寝静まった夜。季節はすっかり秋で、頬を撫でる夜風が冷たい。私には関係ないけれど。
暗さはそれほど感じない。街灯が、看板が、大きなビルが、きらきらと辺りを照らしている。アリスはこの国の中心地、1番区の「キングオブ電力」という所に来た。ここからでも見えるあの煌びやかに光っているお城は勿論ここの電力供給を受けているわけで。つまり。
「破壊するわよ」
その言葉を聞き、アリスの後ろで無数の兵器達が躍った。
一方、リンネとカナト。こちらは6番区。奴隷収容所。
街のある区から離された場所にある収容所。周りには建物がなく、一面草原だ。そんな草原にたまに生えている木。その下に二人はいた。
「電気が落ちたら突入。電気が落ちたら突入」
「落ち着けってリンネ。変装は完璧だし、混乱に乗じれば上手くいく。兵器だってあるんだ。所長の拉致くらい簡単な筈だ」
カナトがリンネを落ち着けるように、けれど自分も落ち着かせるかのように言った。
「そ、そうだよね!対象を無力化する兵器も沢山持ってきたもんね!よーし頑張るぞぉ」
ふんすと息巻くリンネ。兵器の扱いに長けた二人だ。きっと大丈夫だろう。
シガレットとシャリテ。ここはお城。その地下通路。
「捕まっている奴隷はこれで全員か?」
お菓子を咥えながらシガレット。
「ああ。警備が手薄で助かった。ところでここの使用人連中はどうする?確か報告じゃ少なからず不満を持ってるって感じだったと思うんだが」
そう聞くのはシャリテ。仮面の男だ。
「いや、あいつらは駄目だ。王族同様腐ってる。盗みもいじめも日常茶飯事。どうしようもねぇ」
「そうか。そのいじめられてるのって確か子供だよな?」
「そうだ。二人いて、一人は妾の子ってやつだな。もう一人は半獣人の子だ。こっちの子は殆ど牢屋みたいなところに閉じ込められてるな」
「その二人も逃がそうぜ。それでやっと遠慮なく潰せると思うんだ」
「まあそうだな、純正な王族ってわけでもないからな。殺す意味も無いだろう」
「よし、そうと決まれば俺は半獣人の子を攫ってくるぜ」
「おう、じゃあ俺ももう一人の方誘拐するか」
「「ぐへへへへ」」
最後に気持ち悪い笑い方をしたせいで、奴隷の獣人たちが引いた。
そしてミリア。どこでもない光の中。真白の中。そこで全てを観測していた。
「・・・」
スッと出ると、そこはお城の地下通路。
「回収しに来た」
「どわっ!ミリアちゃん!びっくりするってぇ!」
大袈裟に驚くシャリテ。
「おうミリア。一先ずここの奴隷全員だ。そのあと追加で二人頼むことになるが、一応配慮してくれるとありがたい」
ミリアはその言葉に首を傾げる。
「配慮ってのはその、追加の二人は一応王族なもんで。つまりこいつらにとっちゃあ」
「あのう」
一人の獣人が声を発した。
「ん?どうした?」
「その子たちと一緒でも我々は構いません。いじめられてるのも見てきましたから。それに我々に会釈してくれるのはあの子たちぐらいだったもんで」
「おお!そうなのか!でも、いいのか?半獣人の子は。差別とかはないのか?」
「とんでもない!我々は家族を大切にする種族だ。その子ももう一人の子も、我々が害することは無いと誓おう」
「そうか、なら安心だ。じゃあミリア、取り敢えずこいつら頼む。急ぎ、子供を攫ってくるのでな」
「話は終わったか?じゃあ俺はモフモフしてくる!!」
そう言って二人は闇に紛れるように消えていった。
さて。このお城にいた獣人族の奴隷の方々30名程。男女比2:1を移動させるとしよう。移動先は、勿論万能地獄だ。この間帰った時にミラに事情説明してお家をリフォームした。その結果、このお城よりも大きな家になってしまった。まあスペースは十分だ。お仕事するとしよう。
白が包む。パッと場面が切り替わるように、奴隷たちは砂漠のお家に移動した。
「こ、ここは?」
「どうなってる?」
「エントランス?広すぎるだろ」
「窓の外、砂だ」
奴隷の方々が起きた現象に驚いているようだ。まあ後はミラに任せるとしよう。
「おかえりミリア。ぎゅ。行ってらっしゃいミリア。ちゅ」
往復する度にこれをやるつもりだろうか。むずがゆい。さらば。
パッとお城の地下通路。ここで二人が来るのを待つとしよう。まだ夜は長いのだから。




