81話 カナトも偉い凄い
「全く。ほら、立てるか?飯食いに行くぞ」
カナトがリンネちゃんに手を差し出した。
「う、うん」
リンネちゃんはそーっとカナトの手に手を伸ばして、ちょんと触れた。一瞬止まってしまったカナトだが、その手を握ってリンネちゃんを引き起こす。
「あ、ありがとう」
「おう」
お互いに顔を逸らしてそんなやり取りをしていた。私はその間、空を見上げていた。青くて白くて夏だった。
カナトに連れられてレストランにやってきた。ファミレスというところらしい。美味しそうな匂いが外まで漏れちゃってるよ?もしかしたら人間をおびき出して食べるモンスターなのかもしれないと思うほど、道行く人が吸い込まれていく。けれどちゃんと店内から生還してくる人間もいるのでその線は薄そうだ。まあもしかしたら数人は凄く美味しいものを食べさせた上で生かしておいて、宣伝させることを目的としているのかもしれない。もしそうだったら恐ろしいな。探せばどこかにそういう習性を持ったモンスターもいるのだろうか。そんなことを考えながら店内に入った。
「何食べよっかな~♪」
「あまり食べ過ぎるなよ?」
「分かってるよぉ」
「ミリア、食べたいもの選んで」
私はカナトからメニュー表を受け取った。どれにしようかな。
「あたしこれにする!パレードランチ!」
「おい。明らかに凄い量あるじゃねえか」
「じゃあ一緒に食べよ~?」
「あー。そうだな。お金も浮くしそうするか」
「うぇ!?」
「なんだよ変な声出して」
「だ、だってカナト君が乗ってくると思わなくて」
「お前から言ったことだろ?それにあまりお腹膨れてもらっちゃ困るからな」
「そ、そうかもだけどぉ。一緒に食べるとぉ。あ、あれ、しちゃうんじゃない?」
「?」
「その、間接的な?キス的な?」
「そんなの取り皿に取り分けて食べるに決まってんだろ」
「でもでも!取り皿そこまで大きくないしぃ、何回かすることになるんじゃないかなぁ」
「取り分け用のスプーン一個用意するよ」
「あっ、その手があったかぁ。でも!何個もカトラリー使っちゃうの良いのかなぁ!」
「いいだろ別に。どうしてもって言うならミリアが移動させて取り分けたりできるんじゃないか?ミリア出来たりするか?」
私は頷いた。
「おお出来るのか。凄いな。後でやってくれるか?」
ちらとリンネちゃんを見ると首を横に振っていたので、私も首を横に振った。
「やりたくないってことか?まあこんなこと頼むのもどうかと思ってたし。変なこと頼んでごめんな」
私は首を横に振った。
「スプーン一個追加で使うくらい許してくれるだろ。リンネもそれでいいだろ?」
「う、うん!いいよぉ」
「んで、ミリアは何食べるか決めたか?」
私はメニュー表を指さす。夏野菜トルネード。写真では野菜が螺旋状に重なっている。それだけ。多分焼いてあるんだろう。
「ベジタリアンなのか?」
私は首を横に振った。
料理を食べた。美味しかった。驚いたことに夏野菜トルネードというのはモンスターだった。比喩でなく。野菜が全部繋がっていて面白いなぁと思って食べ進めていたら、お皿の一番下に口があったのだ。恐らく食虫植物みたいなモンスターなのだろう。カナトもリンネちゃんも知らなかったらしく驚いていた。食べてる人を見たことが無かったらしい。それもそっか。
お店を出た。
「美味しかった~」
「それじゃアパートに戻って待機だな。ミリア頼む」
私は頷いて、真白の光で包む。ちゃんと誰にも見られていないタイミングでやった。
「ありがとうミリア」
「ミリアちゃん偉いねぇ。凄いねぇ」
リンネちゃんが撫でてくれる。リンネちゃんがくっついてくる。柔らかい。私は暑くないのだろうか。
「ミリアちゃん冷たいねぇ」
私は冷たいらしい。体温がだぞ。
「店の冷房で体冷えたのか?あまり気温の差が激しいと危ないかもしれないな。リンネ、なるべく部屋を涼しめにしてくれ」
「分かったぁ」
リンネちゃんが荷物から色々取り出して設置した。すぐに涼しくなった。リンネちゃんは凄いなぁ。撫でたくなった。私は我慢していたが、リンネちゃんはよく撫でてくれるのでお返ししてもいいだろう。
「リンネちゃんそこ座って」
「え。な、なぁに?」
少しびくびくしながらも座るリンネちゃん。丁度良い位置だ。なでり。
「わ」
なでりなでり。リンネちゃんのプラチナブロンドの髪なでりこ。
「えへへぇ。ミリアちゃん急にどうしたのぉ?」
「リンネちゃんが偉いし、凄いのでお返し」
なでなでなでなで。
「えへ。そーお?えへへ。ミリアちゃんの手冷たくて気持ちいいねぇ」
リンネちゃんはそう言って私の手を取って頬に運んだ。すべすべでぷにぷにで柔らかくて温かかった。
「えっ、なに?尊いんだけどぉ」
カナトはソラカラを操作しながらぼそりと言った。




