80話 カナトなでりこした
好きってなんだろうか。私はよくわからない。それも幸せの一種なのだろうか。リンネちゃんは幸せそうだ。リンネちゃんを見ていればわかるかもしれない。
「治すね」
「うん。お願い」
不可視の速さで白がカナトを飲み込む。通過するとカナトの時間が動き出した。
「わっ。あれ?リンネ?」
「後ろだよぉ」
「うわ!どうやって、ってかもしかして」
カナトは時間を確認した。
「やっぱり。時間止まってたか」
「うぅ。ごめんなさいぃ」
「いや、気にしなくていい。発現したばかりだし。それに時間はまだまだあったし、人もいないみたいだったしな。ミリアもいたし。けどまあいつかはコントロール出来るようにしないとだな。ミリアが居る内は俺で練習してもいいからな」
「う、うん。ありがとう。えへへ」
「それで周囲には人がいないみたいだから、早速罠を仕掛けに行こう」
「はーい」
私は頷いた。
外は暑い。アパートの室内もかなり暑かったが、リンネちゃんが色々持ってきていたので凌げた。まあ私には気候など関係ないものだけれど。
「暑いな」
「暑いねぇ」
二人がそう言うので私も頷いておいた。
「さて、ここから倉庫の中まで移動停止剤を撒いていくか。一応倉庫の外で取引が行われる可能性もあるので、っていうか俺は外で行われると思っているが。とにかくそこかしこに撒いておくか。万が一停止できなかったら怖いからな」
「は~い」
皆でボトルに入った液体を地面に撒いていく。導火線のように。これはすぐに見えなくなって、見ただけではわからなくなるみたいだ。ばれる心配は無い。便利だ。
「よし、大体撒けたな。目印もつけたし大丈夫だろう」
「うん。いい感じ~」
「後は念のためカメラを設置しておいて昼飯を食べに行くか」
「そうだねぇ。暑いねぇ」
「リンネ?会話が、ってすげえ顔赤いな!?」
「うんうん。好き好き~」
「ミリア、取り敢えず日陰に連れて行こう」
私は頷いた。
リンネを日陰まで運んできた。しかし少しはマシという程度だ。取り敢えず冷感シートを額やうなじ、太ももに貼っておいた。後は、どうしようか。
「私、治す?」
ミリアが喋った。俺に対して。本当に嫌われてたわけじゃないのかも。
「そういえば俺を治せるんだからこれくらいなんてことはないのか。ミリア頼む」
こくりとミリアが頷く。
それにしてもミリアが治せるということを見落とすなんて少し動揺したのかな。こういう時こそ冷静にならないといけないだろうに。
ミリアが一歩リンネに近づくとリンネの顔の赤らみは消えて、苦しそうに瞑っていた目も開いた。
「あれ?わっ。ちゅめたい」
かわいい。
「治ったかよかった。すまん、もっと暑さ対策してればよかったな」
「ううん。あたしが浮かれてただけだよ。迷惑かけてごめんねぇ。ミリアちゃんありがとねぇ」
「ミリア、リンネを治してくれてありがとな」
ミリアは首を横に振った。気にしないでという意味だろうか。
「この冷感シート、ミリアちゃんが貼ってくれたんだよね?涼し~い」
「いや俺が貼ったけど」
「え!?太ももに貼ってあるよ!?」
「そりゃ血が集まるから冷やすだろ」
「今日、あたし、スカートなんだけどぉ!」
「安心しろよ。パンツ見たりしてないから」
「そういうことじゃ、ないぃ。うわぁんカナト君が女の子の太ももなでりこしたぁ!」
「してねえよ!それに女の子じゃなくてお前だろうが!」
「え?あ、あたしのこと、女の子じゃないっていうのぉ?うわぁんカナト君あたしのこと男の子だと思ってたんだぁ!」
「違う違う!お前のことはちゃんと女の子だと認識している!ただお前が人聞き悪いことを、ああもう!説明めんどくさいな!」
「うわぁんあたしのことめんどくさい女って言ったぁ!」
「言ってねぇっつってんだろ!」




