74話 リンネ発現した
「おわ!な、なんだよリスカ」
「えへへ。まだ後ろむいちゃだめだよ?」
「なんでだよ、もしかしてまだ服着てないのか?」
「着てるよ。それと、リンネだよ」
「あ?ああ、悪い、リンネ」
「えへぇ。あのね?カナト君あたしに言ってくれたでしょ?可愛いからそのままでいろ自身持て、って」
「ま、まあそんな感じのこと言ったかもな」
「あたし凄く嬉しかったよ?だからこれからはありのままの自分で頑張ろうと思ったの」
「おう、それは偉いな」
「でね、カナト君にはね、あたしを頑張らせた責任をとってね、」
リンネちゃんが一歩カナトに近づく。カナトの肩に手が置かれる。伝わる体温。すぐ後ろにある気配。視界の端にちらりと映るプラチナブロンドの髪からふわりと香るシャンプーと塩素の匂い。
「な、なんだよ!俺をどうするつもりだよ!」
カナトがやけくそ気味に聞く。
「あたしのこと見て褒めてほしいの!」
リンネちゃんがカナトの肩をグイっと引いて、椅子の背もたれが傾く。カナトは上を見上げるような角度だ。それをリンネちゃんは上から覗き込むようにして、精一杯笑った。
しばらく見つめあう二人。リンネちゃんは最高の笑顔を見せていたが、何も言わずに見つめるカナトに恐れをなしたのか、次第に目をキョロキョロさせたり口をもごもごしだしたりした。あの、えと、とボソボソと涙目で。リンネちゃんの首筋を汗が伝う。もちろん冷房は効いている。
「か、カナト君?」
いまだ何も言わずに見上げてくるカナトにリンネちゃんが呼びかける。しかし反応は帰ってこない。ぐるぐると目が回る。ダラダラと汗が流れ出る。カナトはリンネちゃんの汗をしこたま浴びても無反応だ。
「う、うわあぁん!カナト君のバカァ!!」
とうとうリンネちゃんが泣いて、カナトを抑えていた手を離した。すると椅子が反動で戻り、カナトはデスクに頭をゴンっと打ち付けた。しかしそれでも何も反応しない、どころか動かない。
「カナト!?」
「カナ君、まさか」
アリスとクリアスターが焦ったように駆け寄る。そんな様子にリンネちゃんも焦りだす。
「えっ、嘘。カナト君?」
デスクにうなだれているカナトを引き起こす。目は見開いたまま、体は石みたいに固くなっている。
「息をしていないわ。心臓も動いてない!」
「落ち着けアリス!これは能力だ。見ろ、服まで硬くなっている。カナトは死んでない。リンネも落ち着いて?・・・カナ君は大丈夫だから。能力が暴走するかもしれない。深呼吸して」
こくこくと頷いて深呼吸するリンネちゃん。
皆が落ち着いて、話し合いが始まった。私はコーヒーメーカーというやつをいじって、コーヒーを3杯運んだ。ミルクと砂糖もあるぞ。
「ありがとうミリア。あなたとクリアスターが冷静で助かったわ」
「ははは。私がこの中じゃ年長さんだから」
私は何もしていない。クリアスターが能力だとすぐに気が付いたのだ。凄い。
「あ、あたし、カナト君にこんなこと、するつもりじゃ」
「わかってるわリンネ。突然能力が発現してしまったのよ。これは事故だわ」
「そうだね。あんなタイミングで発現するとは」
リンネちゃんは能力が発現したらしい。能力というのは発現した時に使い方がわかるのではなかったか。そのタイミングで発現したとわかるものだと思っていたが。
「リンネちゃん、どういう能力かわからないの?」
「そ、それが、目を合わせて相手のことを強く思えば発動するみたいなんだけど。どういう効果なのかはさっぱりわからないの」
それは困った。解除方法とかはないのだろうか。
「解除できない?」
「解除の方法を知ろうとすると頭に靄がかかったみたいになって。うぅ。カナト君このままなんてやだよぉ」
「ふむ。リンちゃん、君の家族に能力保持者はいたかい?」
「う、ううん。いない」
「では、君の先祖に貴族や王族がいたなんて事実はあるかな」
「無いと思う。そんな話聞いたことないし」
「ならばリンちゃんの能力は血統が関係しない、新型の能力だろうね。現在の能力保持者の殆どはどこかに貴族だったりの血が入ってて、能力はそこから似たようなのが受け継がれる。能力というのは初めは効果も何も殆どわからないらしい。それが親の代で解明されて、子にも発現すると、子はどんな効果があるのかもわかっているみたいなんだ。だから一般的には能力は発現した時、すぐに扱えるとされているのだけれど、リンちゃんはレアケースだね」
詳しい。サヤラも知っていただろうかこの情報。
「クリアスターは能力の研究をしているの?」
「そう大学でね。と言ってもそこまで広く研究してるわけじゃない。私は主に能力の兵器的利用」
大学でも仕事しているようなものだそうだ。




