73話 リンネ恥ずかしい
お昼をリンネちゃんが言っていたパン屋さんで済ませ、私たちは服屋さんへと向かった。
「美味しかった~」
「私メロンパンが気に入ったな」
「ドーナツ美味しかった」
「よかったわねミリア」
道中の会話はパンのこと。どれも美味しかったが、私が気に入ったのはモチモチのドーナツだ。どこから食べていいかわからなくて混乱するところが面白い。それに美味しいし。
服屋さんに着くと、リンネちゃんが不思議そうにした。
「ん?なんで服屋に来たのボス」
「貴女の服を買いに来たのよ。裸でカナトと話すつもり?」
「うぇあ。た、たしかに頑張るって言ったけどぉ。明日からじゃだめぇ?」
「だめだよリンちゃん。そんなこと言ってたらずっと出来ないでしょ」
「うぁー。うん。今日から頑張るよぉ。でも恥ずかしいぃ」
「心配いらないわ。一回見せちゃえばすぐ慣れるわよ。カナトも貴女も」
「そうかなぁ」
そんなこんなでリンネちゃんの服を選ぶ。
「これなんか似合うんじゃない?」
「うーん。好きだけどサイズが」
「これリンちゃんにピッタリ!」
「ボタンは苦しそうだなぁ」
「リンネちゃんこれ」
「ミリアちゃん、これ夏には着れないよ」
リンネちゃんの服選びには苦戦した。胸に配慮するとダボダボとしてしまい、なかなか合う服が見つけられなかった。それでもなんとか3着ほど見繕って、それらを買った。下もズボンではなくスカートを買った。試着したところを見たけれど、とても可愛らしかった。
リンネちゃんは変身を解いて、店で買った服を着ている。私たちはビルの地下へと戻ってきた。エレベーターの中で怖気づくリンネちゃんが微笑ましかった。ドアが開いて涼しい空気を感じる。外の熱気には参ったものだ。私には関係ないけれど。
「ただいま」
「おかえりなさいボス」
「カナトだけ?シガレットとシャリテは?」
「フラスコだかに行きました。仕事です」
「フラップス・コール社ね。まだ諜報の段階だったかしら?」
「はいそうです」
「そう。ところでほらリンネ、こっち来なさい」
「む、無理だよぉ」
「何かあるんです?ってかリスカってリンネって名前なんすか?」
「ええ、そうよ。リンネ・フリージア。昨日皆にバレちゃったからカナトも知っていていいわよ」
「へえ、素敵な名前ですね」
「あうぅ。なんでそんなこと言うのぉ?可愛いとか素敵とか。無理ぃ。好きぃ」
物陰でぼそぼそと悶えるリンネちゃん。
「はぁ。仕方がない子ね。カナト、これからはリスカじゃなくてリンネって呼んであげなさい。ほら、リンネって呼べば出てくるから。そこから出してあげて」
「え、はい。お、おーい、リンネー?どうしたー?」
「うわぁー。カナト君に名前呼ばれたぁ。凄いぃ」
「え、凄い?凄い気持ち悪いってこと?俺お前になんかした?」
「ち、違うよぉ。気持ち悪くなんて無いの。凄い嬉しいってことぉ」
「お、おう。そうか。そりゃ、良かったな?」
「うん」
「おい、出て来いよ。何で隠れてんだ。何かしたなら謝るぞ?」
「恥ずかしいの」
「は?あ、ああ。もしかして俺が、お前の半裸見ちまったせいか?悪かったよ。すぐに目を逸らせばよかったよな。でもお前だと思わなくて」
「そ、それどーいう意味!?あたしじゃなかったらまじまじと眺めてたってこと!?どうしてあたしは目を逸らすのよ!」
「違う違う!!知り合いの半裸見ちゃったら誰でも目逸らすだろ!!だって気まずいもん!!それに侵入者かもしれなかっただろうが!そうだったら目が離せねえだろ!」
「た、たしかに!」
「だろ、そういう意味だ」
「そっかそっか」
「ふぅ。ほら出て来いよ。恥ずかしいかもしれんがそこにいたらいつまでも仕事出来ないだろ。俺も思い出さないようにするから気にすんな」
「忘れてはくれないの?」
「忘れられないくらい衝撃的だったからな」
「そ、そんなに、か、かわいかった?」
「ん。まあ(エロかったし)」
「そ、そぅ。えへへ」
「で、出ていく!カナト君あっち向いてて!!」
「お、おう。わかったわかった」
カナトが視線を外すと、ニマニマしているクリアスターと目が合った。カナトは今のやり取りが皆に聞こえていたのだと思い当たって赤くなった。そして俯く。
「カナ君エッチだねぇ。女の子の裸が忘れられないんだ」
からかうクリアスター。
「いや、誰でも忘れられないものでしょ。異性の裸なんて。まあ半裸でしたけど」
「ふーん」
「なんすか」
「別に。ピュアだねぇ」
カナトはクリアスターを無視して、デスクのパソコンで仕事する。彼は基本的に雑用をやっているそうだ。
「カナト君」
いつの間にか後ろに立っていたリンネちゃんに声をかけられてカナトの肩がはねた。




