68話 アリスと寝た
そういえばお薬を飲むと言っていたが、どういう作用をするのだろうか。少なくとも人記というやつには全く影響を及ぼさないだろう。それなのにどうしてアリスは子供の姿から元の姿に戻れたのだろうか。
「お薬って何のお薬なの?」
「ただのビタミン剤」
私は混乱した。ビタミンというのはそんなに凄いものだったのか?確かに人間の健康には欠かせないだろうけれど、そんなになんでも治してしまう万能薬だったのか?
「ビタミンって、凄いの?」
私が恐る恐る聞くとアリスが笑った。
「ふふふ。そうよ。ビタミン剤は大抵の病気を治すって、これもどこかの国の常識だったのよ」
「凄いね」
「一日一回朝に飲めば子供にならない。って言っても毎日子供になるわけじゃないけど。たまたま今日は誰かさんのおかげで飲みそびれちゃったけどね。それで何故かミリアに触られて子供化が始まった。まだまだ謎が多いわね」
不思議なこともあるものだ。
夕飯をアリスが作った。家事は普段からやっているそうだ。期待。
「はい出来ました。ミリアこれ持っていってね」
「はーい」
料理をテーブルに置く。美味しそうだ。良い匂いがする。アリスは凄いな。
「いただきます」
「召し上がれ」
ぱくり。うむ、とても美味しい。アリスはとても良い人間になるよ。これからも頑張ってくれ。もぐもぐ。
食べる私を見てアリスが微笑んでいる。その顔を見て私は少し嬉しくなった。
「アリス、幸せ?」
「急にどうしたの?」
「私アリスの笑った顔好きなの。それで私は幸せになるけど、私はアリスに幸せあげれないから。幸せじゃないなら何かあげたいと思って」
「うーんあのねミリア、幸せってあげたり貰ったりするものじゃないの。ミリアは私が笑ったら幸せなんでしょ?それって私がミリアに何かあげてるってことになる?うーん、なるのかもしれないけど違うのよ。自分で感じたんでしょ、幸せを。それはあなたが得たものでしょう?ならお返しなんていらないじゃない。それに私は幸せだから何もいらないわよ」
「幸せなの?」
「笑ってる私が不幸に見える?」
私は首を横に振った。
「ミリアといて楽しくて幸せだから笑っているの。つまりミリアと一緒にいれば二人とも幸せということね」
なるほど、アリスは私といて楽しかったのか。それで笑ってくれていたのか。全然気が付かなかった。いや思いもよらなかったというのが正しい。誰かを幸せにするなんて考えられなかった。発想に無かった。幸せって、なんだか凄く良いものだ。
お風呂。広いらしいのでアリスと一緒に入ることになった。気持ち悪がられるかもしれないと思ったけれど私はタオルなどで体を隠さなかった。アリスは私の体を見て少し驚いたようだったけれど何も言わなかった。ただ頭を撫でてくれた。
アリスと体を洗いっこして、お湯に浸かる。少し震えていた体のこわばりが解けて、目から何故か水が出た。アリスはその水が止まるまで頭を撫でてくれた。
そろそろ寝る時間になった。お布団は買ってないのでアリスのお部屋のベッドに二人で寝ることになった。私は床でもどこでも眠る気概があったのだが、アリスがベッド以外で寝るのなら自分もそこで寝ると言うので仕方がない。まったくアリスは仕方がないな。
「ミリア、灯り消すわよ」
「うん」
パチリとスイッチが押され、灯りが消える。少しの間真っ暗でけれど段々と目が慣れていく。
「今日は色々あって疲れたわ、ミリア。けれどとても楽しかった。まるでずっと前から一緒だったみたいに思えたわ。でもあなたといて知ることは新しいことばかり。あなたのこと今日まで殆ど知らなかったけど今日だけで誰よりも知れたんじゃないかしら。今日は素敵な日ね」
「私もアリスのこと今日沢山知った。明日もアリスのこと知れたらいいな」
「そうね明日もあるわね。明後日もその先も。ねえミリア。私といつまでもお友達でいてくれる?」
「うん」
「ありがとう」
「ううん。私もありがとう」
「ふふ。寝ましょうか。明日は早いわよ」
「うん。おやすみアリス」
「ええ。おやすみミリア」
そうして私たちは眠りについた。意識が途切れる数秒前、右手がそっと包まれた。温かくて、幸せで、きっと素敵な夢が見られるだろう。限りない幸せに包まれて、私は眠った。




