67話 アリス症候群
アリスのマンションに帰る途中。辺りはオレンジがかってきていた。日が長いようで太陽もゆっくりと動いている。
「そういえば部下の人達は良いの?」
「さっき連絡はしておいたわ。それに私がいなくても各々ちゃんと仕事はするし」
「なんのお仕事?」
「うーん、内緒。明日皆いるところで説明する」
「わかった」
ぬるい風が通り過ぎていく。気温は暑いままだ。夜になっても涼しくならないかもしれない。まあアリスの家は快適なので暑さの心配はない。
「暑いわね」
「うん」
「アイス買ってあげる」
「ありがとう」
アリスがおもむろにカラカラと民家の扉を開けた。しかしそこはお店だったようでなんのお咎めも無かった。外装がお店に見えない。しかし内部には沢山お菓子が並んでいた。駄菓子屋さんというやつだ。
アリスはお店のレジの前の冷凍棚から、パッケージで梱包されているアイスを一つ取り出して買った。
「歩きながら食べる?座って食べる?」
アリスはアイスを半分にして私に手渡した。一つで二人分のアイスだったらしい。
「歩きながら食べる」
地面に落ちたがるアイスを舌で宥めながら歩いた、口に広がるのはソーダ味。感じる冷たさが夏を色濃く感じさせた。
マンションに着いた。アリスはエントランスでなにやら機械に鍵を差してパスワードを入力した。すると透明なガラスのドアが開いて、中に入れた。そこからエレベーターの到着を待って、乗り込む。慣性に苛まれながら上昇していく。
辿り着いたのは最上階だ。アリスはそこの一室に住んでいる。
「着いた」
部屋の前に着くと、そこには今日お買い物した服などが置いてあった。野ざらしというわけではなくちゃんと袋に入っている。どこに行ったのだろうと思っていたが先に帰宅していたらしい。賢いな。
「アリス、この国の服って賢いんだね」
「え?ふふっ。そうね。ミリアは想像力が豊かね」
笑われたのだが。別に宅配されたのだということぐらい知っていたもん。ただ賢いなと思っただけだもん。ん?
「じゃあ荷物お部屋の中に入れてあげて」
「うん」
私は素直なので従う。しかしもう少し精神年齢は高い方がいいかもしれない。ともかく荷物を両手に持つ。
夕方だ。外は赤い。部屋の中は涼しい。冷房がつけられている。しばらく涼んでいるとアリスが話し出した。
「私の病気、不思議の国のアリス症候群P型っていうの。体の大きさが変わるの。それに合わせて精神年齢とか性格とかそういうのも変わる。本で読んだことによると世界の記録に人記という欄があってそれが歪んでたり壊れたりしてるんだって。アリス・アメリアの項目が。だからこれは本当は病気なんかじゃなくて世界のバグみたいなものなんだって。歪んだ情報に身体が振り回されるの。記録は整合性を取らなければならないから。私の体が変わって元に戻るたびに本当に私は私なのかが不安でいっぱいだった」
「今は昔ほど酷くないのよ。昔は背が伸びきってなかったから、大きさも振れ幅が大きくて。もう背が伸びない今となっては、体は小さくなる以外にない。どうやら人記というのには生涯の身長があってそれ以上は情報がバグることはないみたい。あくまで範囲内でバグが起こるらしいわ。それと私の場合は何故か10歳くらいの子供になることが多いみたい。結局よくわからない現象よ。それとこのP型は今のところアリスって名前の子にしか発症が確認されていないらしいわ」
とんでもない現象だった。よくそれで済んでいるとしか言いようが無い。大丈夫か世界。




