65話 アリスとラーメン食べた
街。ビル群を抜けて人通りの多い通りに出てきた。昼という時間もあってか、人が沢山行きかっている。通りに面して展開されているお店には続々と人が並んでいる。獣人族を連れて歩いている人たちはお店に入らない。そういう決まりがあるのだろう。
この際だから獣人族をしっかり眺めておこう。どこかな。見つけた。猫人。特徴としては柔らかそうな猫耳と尻尾があるくらいのものだ。薄茶色の毛並みで可愛らしい。人間に大人しくついて歩いている。服もちゃんとしたものを着せられている。やはり奴隷ではなくペットという扱いなのだろう。
歩きながら、他の獣人も観察していると、連れられている獣人は全員女性だということが分かった。それと身体的特徴が人間に近しい種族をペットのようにしているらしかった。なんだか闇の部分がありそうだ。
歩いていると好奇の視線を向けられているのを感じた。制服が似合っていないのだろうか。それとも髪色?目の色?けれどそれほど目立っているわけでもなさそうなので安心した。
やがてアリスに連れられて入ったお店はラーメン屋さんだった。広い店内の割にお客さんは殆ど居なくて私としては幸せである。お店にとってどうかは知らないけれど。
店内には楽し気な歌が流れていて、向こうの大陸との文化の差がこんなところからも感じ取れる。しかし食事については、何故かどこでも同じくらいのレベルで高い。ここの国々は他の大陸と交流はなさそうだが。不思議なことに料理の情報は勝手にどこまでも広まるらしい。
「さ、メニュー。選んで」
ラーメンか。私は醤油の気分だ。落書き醤油ラーメンというのにしてみようかな。面白そうだし。
「これにする」
私がアリスにメニューを指で差して伝えると、アリスがフッと笑った。
「懐かしいわ。昔はよく遊んだなあ」
アリスは懐かしむように目を細める。そこには過去への憧憬がほんのりと現れているようだった。
「アリスもこれにすれば?塩味もあるよ?」
私がそう言うとアリスはクスッと笑って、
「そうね。食べあいっこしましょうか」
と言ったのだった。
もしかして私が塩味も食べたいからアリスに促したと思われたのだろうか。まったく、そんなわけないというのにまったく。私はただ、たまには童心に帰ったらいいのではないかと思っただけだぞ。そういえばどんな病気なのか聞きそびれてしまった。後で聞こう。それよりも今はラーメンの食べ比べだ。
注文してから少し経って、ラーメンが運ばれてきた。いい香りだ。お箸と一緒にペンのようなスティックが五本横たわっている。赤、青、黄、白、黒。
「これをスープにつけると色が出るの。それで麺を食べる時に色が絡まって。そしたらまたスープに絵を描くのよ。熱いと食べられない子供向けだけどね」
アリスは照れたように微笑む。よく笑ってくれて嬉しい気持ちです。
店の中ではアリスの落書きラーメンは子供向けという発言に動揺している中年男性が3名いた。
「子供向けだけどね」
「(えっ、まじ?俺、楽しいからってずっと落書きラーメン頼んでたけどこれ子供向けだったの?いや、あくまでもあの子の見解だ。俺は信じない。だが見られたら恥ずかしいしちょっと急いで食べるか)」
「子供向けだけどね」
「(く、知ってたさ落書きラーメンが子供向けだってことくらい。けど仕方ないじゃないか。猫舌なんだもの。ラーメンは好きだからせめて時間かけて食べても違和感のないこのラーメンを食べてるんだい。でも見られたら恥ずかしいしちょっと急いで食べよう)」
「子供向けだけどね」
「(えええぇ!!!!これ子供向けかぁ!!初めて入った店で面白いラーメンがあったから頼んでみたけど子供向けかぁ!!まあ確かに?いや子供向けかぁ!うわ見られたら恥ずかしいしちょっと急いで食べなきゃ!)」
ガタンと席を立つ3人。セカセカと器の乗ったトレーを返却する3人。そこで同じ境遇に気付く3人。
「お、おまいらもか?」
「お、おう」
「お前もか?」
こくりと頷きあう3人。3人は意気投合したのか連れだってレジへ精算に向かう。3人は全く同じ金額を払っていった。その後彼らは仕事をサボって昼間から居酒屋を渡り歩いて3人仲良く会社を首になった。
「さっきのおじさんたち、離れた席に座ってたけどお友達だったのかな?」
アリスがスープに絵を描きながらそう言った。可愛らしい兎の絵だった。




