63話 アリスとお話
そういえば私の着ている服は冒険者装備なのだが、ビルの屋上から下を見た時このような恰好をしている人間は見かけなかった。本当にここにも冒険者ギルドが有ったりするのだろうか。服は後でアリスに見繕ってもらおう。
玄関を少し進むと左手にある部屋からアリスがぴょこんと顔を出した。ムムムと唸っている。何というか顔立ちが幼い。それに顔を出している位置が低いのが気になる。
「みりあ、いじわる、しない?」
「しないよ」
私は両手を挙げて敵意がないことを示す。アリスは臆病な生き物なのでゆっくり近づかなければな。そろり。それにしても何故こんなに言動が幼いのだろうか。
「ほんとにぃ~?」
「うん。私とアリスはお友達でしょ?」
「おともだちぃ?」
首を傾げて言葉の意味を反芻するアリス。
「おともだち!うん!みりあこっちおいで!」
そう言ってアリスは私の手を引いて部屋へ連れて行った。私の手を引くアリスは、驚くべきことに私と同じくらいの身長であった。
「ここ、わたしたちのおへや」
その部屋は左右で二分されていた。左側には仕事をするためのような机。難しそうな本が入った本棚。黒色が好きなのか殆どの家具が黒で統一されている。対して右側には子供が使うような丸い木のテーブル。絵本の入った本棚。そこかしこにあるぬいぐるみ。色の統一は無い。そして真ん中にあるベッド。
「わたしはこっちであそぶけど、私はそっちでおべんきょうしてるの」
どちらもアリスが使っているということだろうか。
「なにしてあそぶ?みりあ!」
「私はアリスとお話しに来た」
「おはなしぃ?」
アリスはムムムと唸った。
「じゃあわたしおくすりのんだほうがいいかもね」
「どうして?」
「あのね、わたしびょーきなの。あっ、うつったりしないからだいじょーぶ」
「どんな病気?」
「よくわかんない。おくすりのんだらきいてみて」
そう言ってアリスは部屋を出ていった。
しばらくして部屋に戻ってきたアリスは大きくなっていた。
「こんにちはミリア。さっき挨拶返しそびれたでしょう?」
アリスは少し気恥ずかしそうに言った。
「うん。今日はアリスとお話しに来た」
「ええ。聞いたわ。こちらもミリアには聞きたいことがあるし。お話しましょうか」
「アルノア教団はどうしたの?」
「あそこは基本的に来るもの拒まず去る者追わずだから入るのも出るのも苦労は無いわ。まあ里帰りってことにしてるから一応籍はあるの。シャルヴィスたちも元気でやっているでしょう」
「なんで私に発信機を持たせたの?」
「やっぱり気付いてたんだ。何故渡したのかは簡単よ。だってあなた殺されてから生き返ったんですもの。そんな特殊な人間を私は放っておかない。あの時、アルノア教団があの場にいたのは私が関わっていたの。ほら、馬車でマノンがあなたに御伽噺を聞かせていたじゃない?あの森には不死身の怪物がいるっていう。私もあれを聞いて森の調査を進言したのよ。表向きは結界の調査だけど。それで宿であなたに出くわした。死んで生き返った不死身のあなたに。特徴も似ていた。白い髪の少女。目は赤いらしいけれど御伽噺に出てくるのは殆どあなたみたいなものよミリア。マノンもそう思って、あの御伽噺をあなたに聞かせてみたのでしょうけど。けれどあなたは特に反応を示さなかった」
そもそも何故アリスはそんな怪物を調べようと思ったのだろうか。
「私はあなたが御伽噺に出てくる怪物じゃなくてもいい。とにかくあなたを手に入れたかった。だから後で拾えるようにって。だけど迎えに行く算段がつくって時にあなたは砂漠に入った。ますますあなたの特異性が現れた。あんなに目立ってたら誰かにとられちゃうって気が気じゃなかった。けれど今日あなたは私の前に、後ろだったけど現れてくれたわ。とても嬉しい。会いに来てくれてありがとうミリア。友達って言ってくれたことも嬉しかった。わたしを見せたのもあなたが初めてだった」
何をするために私を欲しているのだろうか。
「やっぱり、友達と言ってくれたあなたを利用するようなことは出来ない。けれど力がいるのよ。世界を覆すには、常識を覆すような力が。それをミリアが持っている。友達なのに。私はあなたを利用しようとしていたけど今はそんな気持ち無いわ。叶うならこれからも私のこと友達だって思っていてね」
「待って。私は友達は助け合うものなんだって分かってる。アリスは困っているんでしょ?なら助ける。だから私のことも助けて」
「ありがとう。あなたがそう言ってくれて嬉しいわ。けれどミリア、私があなたを助けることなんて」
「出来るよ。アリスなら」
「けど、今更、私は」
「断るなら全部壊しちゃうよ?助けてくれないならどうなるかわからないよ?」
「助ける!助けるから!そんなこと言わせてごめんなさい!!私のことも助けて!!」
「うん。助けるよ」
ところでどんなことをするの。




