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観測不能の侵略者  作者: 九月
第二章 海から砂へ

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59話 鏡の中の誰か

 起きたらもこもこだった。全身に感じるもこもこ。けれど圧力も熱も感じない。快適すぎる。このままでは永遠にこのもこもこに沈んでいることになるかもしれない。なんて危険なモンスターなんだ。


 強い意思を持ってもこもこから抜け出した。さて、この砂漠で少しばかり暴れるとしよう。おでかけ。




 僅か半日ほどでミリアは破壊の限りを尽くした。その結果、かつての万能地獄(ヘルオール)は見る影を無くし、更なる地獄が誕生した。空間が捻じ曲がったかのように極寒と灼熱が共存し、降りやまぬ雨、雪、雷。地形も激しくでこぼこで、山脈が連なるようである。中心へ向かえば向かうほどそれらは威力を増していき、本来のヘルオールの名残である砂も吹き荒れる。もちろん砂漠全土をそうしたわけではなく、ヘルオールに入ってしばらくの間、これらの異常は姿を見せない。しかも誰もヘルオールがどんな所なのかわかっていないため、ミリアが作り替えたなどとは誰も考えない。




 私はひとしきり遊んで満足した。これからは暴れたくなったらここで好きなだけ暴れられる。ところでこの場所には文明があった形跡は無かった。未発見の種族とかモンスターが隠れているのではないかという噂なんかもあったが流石に生物が生きていける環境では無かったみたいだ。


 次の目的地を考えておくか。あさむぎたちの故郷である極東の島国にしようか。けれど絶対行っては駄目だと言っていたし。何か特別な用事でも出来たら行こうかな。


 後は、アリスがいる国。多分科学技術が発展しているのだろう。大陸を移動して文化の違いを見るのも良いかもしれない。冒険者ギルドはどこにでもあるというしどこでも仕組みは共通らしいので困るようなことはあまりないと思う。


 それと行きたいと思っているのは他種族の国楽園(パラダイス)。この大陸では他種族なんて見なかったから、いつかお目通り願いたいものだ。もしかしたらこの大陸の貴族かなんかは奴隷として他種族を所有しているのかもしれないが生憎貴族のお世話になることなど無いので覗き見する機会は無かった。どこかの街なんかに住めばそこの領主が貴族で民からお金を徴収したりするのだろうか。まあ住むことなどないからどうでもいい。


 それと一番南とされている大陸の魔界だ。魔王がいるらしい。けれど勇者として名乗りをあげるような人間はいないらしい。まあ大陸を魔界にして引きこもっているのだからわざわざ退治する必要はないだろう。


 どこに行こうかな。取り敢えず候補として、決めるのはそのうちにしよう。残った半日はガーデニングでもしよう。私は割とお花が好きだったりする。綺麗なお庭にするとしようか。




 ガーデニングは着々と進み、お城の周りのスペースは白巻たちも安心して走り回れるように質のいい土を敷き、その上に柔らかい草を生やしておいた。花壇なんかも作って色々植えてみた。しかしここで問題になるのが、管理だ。私がいない間の、庭、白巻含めお城の管理をしてくれる誰かが必要だ。




 お城の一室。私はその部屋にある鏡を眺めていた。ここに映っている私は、私であって私でない。私は今思考しているこの存在で、鏡の中の存在はきっと別のことを考えている。例えばお城を管理したいなぁ、とか。お世話大好き!とか。お花可愛いとか。そんなことを考えて私は鏡を白で飲み込んだ。そこに映っていた誰かを誰かだと認識して。


 空間が揺らいで、ミリアと似た少女が現れた。その少女はきょろと辺りを見回して、ミリアに向き直った。


 「私はミラ。ミリアのお姉ちゃん」


 「ううん。私がお姉ちゃんだよミラ」


 「譲らない」


 「なんで?」


 「だってお姉ちゃんなんだもん」


 「わかった。別にいいよ」


 「本当?ありがとう。ミリア大好き。ちゅ」


 ミラが私の頬にキスしてきた。やはり鏡の中にいるのは自分ではない誰かだと証明されたな。私はこんなことしない!

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