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観測不能の侵略者  作者: 九月
第二章 海から砂へ

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50話 心象原点 スクウ

 「正確にはこの星の模型みたいなものだがね」


 やはり嘘ではないか。「よ」の発音がおかしかったから絶対そうだと思ってた。

 

 「嘘ついた」


 「ははは、嘘というわけでもないさ。この模型にはこの星の大体の情報が模倣されていて現在進行形で更新されているのだからね。殆どこの星みたいなものだろう?」


 じゃあ嘘じゃなかった。嘘って言ってごめんね。


 「嘘って言ってごめんね」


 思ったことは口に出さないと伝わらない。汲み取ってもらえることもあるかもしれないけれど、自分から言った方がもやもやしないと思う。


 「謝らくていいよ。私が変な言い方をしたのが悪かったんだ。悪魔の性なのかもったいぶってしまった。人間を惑わせるのが仕事みたいなところがあるから。それにしてもミリア君は純粋で素直で天使さんかな?私を飢餓から救ってくれたし海を見せてくれたり、あっ、でも私の心ってやつを惑わせちゃったりしているところあるよね。うん。ミリア君そういうところあるよ。そういうところは小悪魔さんなのかな?はっ、一つの体に内包される正反対の性質!人間が持ち合わせる善悪を極限まで高めたら、即ち天使と悪魔!しかし共存するのはあり得ない筈!?っ、そうか!!子供の、幼女の精神性だ!!まだ善悪という概念を持ち合わせておらず感性で行動する様は無垢な天使と言えよう。されどその無邪気さは時に悪魔的所業をいとも容易く行える!善悪とは他人の評価と自己による評価で全く異なることもある。それはつまりミリア君に私が天使と悪魔を見出すのは、本来同居しえない二面性がミリア君に存在しているのはつまり、、、あなたが神か?」


 「そうだ」


 「ばれてしまっては仕方がない」


 「滅べ」


 白い光が星を包み、後には何も残らなかった。。。ミリア先生の次回作にご期待下さい。とはならず。


 「違うよ」


 私は神様ではない。それは嘘ではない。


 「それよりも、その模型にどうやって本を隠していたの?」


 そんな最初の疑問を再提起する。


 「ああ、そういえばそんな話だったね。脱線してすまない。うむ、この模型にはこの星の情報が模倣されていると言っただろう?私はその情報をこの模型から掬い上げたのだよ。この本はそういうことだ。しかしこれは大悪魔としての私の権能というか、人間とは違い最初から持っている固有能力(ユニークスキル)みたいなもので人間以外の種族と似ているね。まあ我々悪魔は己の権能を固有能力とは言わずに心象原点(オリジン)と評しているが、おっとこういう情報はあまり口にしてはいけないものだった。ミリア君が相手だとつい喋りすぎてしまう。そういうところが悪魔的、いやなんでもない」


 まあ私は聞き上手というやつだからな。いっぱい話してくれ。それにしても悪魔というのが何人いるのかわからないが、こんなに凄い力を持ったのが沢山いたら相当危険なのではないだろうか。恐らく悪魔は寿命が無いだろうし。しかし今現在人間が滅んでいないということはきっと大丈夫なのだろう。安心だ。


 「ローリスキーは凄いんだね」


 「む?いや、はは、まあそうだな。私は大悪魔だからな。・・・そ、そうだミリア君、私に何か用事があって訪ねてきてくれたのではなかったのかね?おじさん、褒められちゃったから大抵のお願いは叶えてあげちゃうかもなー」


 ようじ?ああ、そういえば深海の生き物を一緒に見に行こうと思っていたのだった。ローリスキーがお話上手だから忘れてしまっていた。失念。


 「操縦室で海の中が見れるから、一緒に深海の生き物見に行こう?」


 私がそう伝えると、彼にとっては想定外の用事だったのか、少しの間動きが止まってしまった。


 「いきたくない?」


 私がそう聞くと、


 「いや、行くよ!行きたいよ、うん!行きたくないわけないよ!行こう行こう」


 深海生物が見れるとは思っていなかったようだ。大喜びで何より。


 「あっ、ところで一緒にということは半径0.5メートル以内でいいかな?」


 そんなことを言う彼に私は右手を差し出した。




 差し出された右手に大悪魔たる私は動揺した。昨日、手を差し出してしまったことを思い出す。悪魔の手を取るという行動はそれだけで意味を持ち、下手をすれば勝手に契約を結ぶことも出来た。ミリアの一生を縛り付けるような契約も。だからこそ己の緩みを恥じていたのだが、ミリア相手だとどうしてもまるでただの人間だ。この体にされたことも影響しているのだろうが、普通の人間相手にここまで感情が揺らぐことなど無いはずだ。ミリアは、何なのだろうか。とはいえ幼女であることは事実なので、ミリアから伸ばされた手を拒絶することは絶対にしてはならないだろう。




 彼は数瞬の逡巡の後、私の手を取った。


 彼は照れたように笑っていたが、その表情にはほんの少し苦悶の影があった。

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