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観測不能の侵略者  作者: 九月
第二章 海から砂へ

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49話 あおいほし

 お風呂あがり。微かに湯気を立ち昇らせて部屋に戻る。


 ドアを開けると、暗がりに月の光が差し込んでいた。質素な部屋も月明かりがあれば情緒のあるものだ。私はそのまま、部屋の明かりは灯さずにベッドに座る。少々長すぎる気がしないでもない髪を、踏んでしまわないように肩に流して。


 ちょうど、ここから窓を覗くと月が見えた。丸く大きな月だ。月の光は太陽光の反射。月は恒星ではない。世界を二度照らす光。月は太陽の力を借りて夜を照らす。


 窓の外の平原は風も無いようでただただ静かだった。ただ静かに月に照らされて、、、思考はそれ以上続かなかった。特に何も言うことは無かったから。




 やがて夜が更けて。とりとめのない思考がぼやけてきて。次第に瞼が閉じていく。本当は必要のない筈の睡眠も当たり前のように受け入れている。それがこの世界で生きているということだ。


 眠りに落ちる数秒前あるいは数分前。まるで自分も世界も何もかもが消えてしまったかのような、そんなまっさらな時間。その時確かに私は生きていて、けれども何も観測していない。自分が消えているかのような時間。そんな時間がずっと続いたらいいのに。ミリアはそんなことを考えることも出来ずにいつの間にか眠った。




 目が覚めると部屋には太陽光が差し込んでいた。現在地は海の中だというのに生活リズムが狂ってしまわないのは大変すばらしい。拍手。


 良い匂いに誘われて食堂に赴くと、既に朝食を摂っている者が数名いた。私も朝ごはんを食べるとしよう。


 メニューは昨日の晩に引き続きカレーであった。寝かされたカレーだ。美味しいに違いない。ホカホカのお米にアツアツのカレーをよそってもらって、テーブルにつく。いただきます。


 美味しかった。後から来たレイニーもにっこにこだった。元気で大変よろしい。


 さて、聞いたところによると南の大陸に着くのは今日の午後あたりになるらしい。それまでは操縦室にお邪魔して深海の生き物でも探して過ごそうかな。ローリスキーも誘おうか。海を見せる為に呼び出したと言ったのに少ししか見せてないから。


 ノック。ココンコンココン。


 「ミリア君かい?どうぞ」


 どうしてわかったのだろう。ドアを開ける。


 「どうしてわかったの?」


 昨日もしたやり取りだ。


 「簡単さ。良い匂いがしたからね」


 カレーの残り香でも漂っていただろうか。確かにこのドアには下の方に隙間がある。それともここから私の靴でも見えていたのだろうか。まあきっとそんなところだろう。


 部屋に入ると、彼はベッドに腰掛けて本を読んでいた。どこに隠し持っていたのだろう。


 「その本、何処に隠し持っていたの?」


 疑問を抱いたら質問。けれどするべきでない質問があることを忘れてはならない。それを見誤ってしまえば人との関係は脆く崩れ去る可能性もあるのだ。ありきたりな質問が回答者にとって傷をえぐる行為だったらどうしようもない。こういうことがあるからコミュニケーションというものは厄介なのだ。とはいえ誠意をもって向き合えばきっと仲直り出来るだろう。きっとそうやって仲を深めていくものなのだろう。どうでもいい。


 「ははは、別に隠し持っていたわけではないよ。しかしそういう風に捉えられる可能性もあるわけだ。ふむ、なるほど。ああ、何処に隠していたかというとこれさ」


 そういって彼はズボンのポケットからガラス玉のような球体を取り出した。一見青い。彼の目と同じ海の色。


 「それは、なに?」


 問う。


 「これは、この星だょ」




 嘘だ。


 私はそう思った。


 だって「よ」の発音が変だったし。

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