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観測不能の侵略者  作者: 九月
第二章 海から砂へ

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40話 くらげの骨

 そもそも何故口論になっていたのだろうか。私はバ行さんに噛みつくレイニーをどうどう、となだめて原因を聞く。


 「私がここに戻って来たらこの男が急に夕飯をご馳走したいって言いだしたのよ」


 「ぼぼ僕はただ、き、君のお話が聞きたいなって思っただけで。そ、それとミリアちゃんに昨日のお礼もしたかったし。き、君たち、他にも沢山店があるのに父さんの店に来てくれていたから。気に入って、くれると、思って」


 段々と語気がしぼんでいくバ行さん。猫背になっていく。


 「ねえ、ミリアに昨日のお礼って何?あんたミリアに何したのよ!白状しなさい!このっ、このっ!」


 ポカポカとバ行さんを殴るレイニー。攻撃力は0だ。


 「よ、夜に、一緒に星を眺めて、それで、お話をしただけだよ」


 「ミリア、本当?」


 私は本当だと頷く。これでレイニーが静まってくれると良いのだが。


 「はぁ。とりあえず何もされていないのなら良かったわ。それと、勝手にあなたのこと決めつけてしまって悪かったわね。ごめんなさい」


 「い、いや、誤解が解けたならいいんだ。そ、それで、夕飯をご馳走させてもらっても構わないかな」


 「ミリアが良いんだったら私も別に構わないけれど」


 私は別に構わないという意を示す。


 「やった!じゃ、じゃあ僕準備してくるよ!き、君たちは部屋でまっていてくれ。少ししたら呼びに行くよ」


 そういってバ行さんはドタドタと去っていった。レイニーが、もう少し痩せればいいのにと呟いた。




 部屋に戻って今日散歩した時の海辺の様子をレイニーに話していると、階段をドスドスと登る音がして、バ行さんが部屋のドアをコンコンコンとノックした。


 「料理ができたよ!下にテーブルを出したんだ。そこで食べよう」


 ドアを開けると、嬉しそうなバ行さんがそういった。夕飯には昼食分の期待も乗せられているので頑張ってほしいところだ。


 私とレイニーが下に降りると、大きなテーブルに様々な料理が沢山並べられている。どれも美味しそうだ。さて味はどうだろうか。期待が高まる。席について待つ。


 やがて食事が始まった。まず目の前にあった肉料理を食すとしよう。鶏肉だ。


 「そろそろ魚に飽きてきたと思って肉料理も沢山作ったんだ。口に合えばいいけどどうかな?」


 「おいしい」


 私は感想を述べて、色々なお皿に手を伸ばす。そのどれもが美味である。魚も肉も野菜も美味しい。


 「そうだ、飲み物を出すのを忘れてたよ。ミリアちゃんはりんごジュースとぶどうジュースどっちがいいかな。それと、えーっと、き、君は何か飲みたいものあるかな」


 「レイニー」


 「えっと、ごめん。知らない飲み物だ。カクテルってやつなのかな?お酒は詳しくなくて」


 「レイニーは私の名前よ!ぶどうジュースでいいわ!ふん!」


 「ご、ごめん。すぐに持ってくるよ。ミリアちゃんは、りんごジュースだね。わかった」


 すぐに持ってきてもらったりんごジュースは新鮮な味がした。新鮮というのは、初めての感覚という意味ではなく鮮度のフレッシュという意味だ。そういえばどの料理も鮮度が良い食材が使われているような気がしないでもない。私はこの知見をバ行さんに伝えてみた。


 「わかるかい?実は僕の能力(スキル)で鮮度を保っていたんだ」


 「へぇ、あなた能力を持っているんだ。凄いじゃない」


 「バハムート・ビヨンド・ブラッド・ベルセルク・ボーン。a.k.a.(またの名を)バ行」


 「?」


 「ぼ、僕の名前だ」


 「ふーん。かっこいいじゃん、バハムート」


 レイニーがニマっと笑って言う。


 「ふぉぐぅ」


 バ行さんが奇妙な鳴き声をあげた。





 その後、話は弾んで二人は仲良くなったみたいだ。よかったよかった。そうして食事も終わって私とレイニーは部屋へと戻った。


 「そうそう、言いそびれていたけれど明日のお昼ごろに船が来てくれるみたいよ。場所はちょうどミリアが今日散歩したっていう海岸辺りね」


 私は尋ねる。


 「レイニー、いいの?せっかくバ行さんと仲良くなれたのに」


 「ミリア、バハムートのことそう呼んでるんだ。うーん、まあ仕方がないわね。もともとこの街はすぐに離れる予定だったし、この街の雰囲気も苦手だし。きっと幸せにはなれないでしょう?それにまたいつか会えるわ。未来には国の行き来ももっとスムーズになっているでしょうし」


 そう言いながらレイニーは未来に思いを馳せたようだった。彼女はある面では凄く大人なようである。子供っぽいと思ったことを許して。




 やがて夜。さて私は眠りにつく。打ち上げられたくらげに思いを馳せて。

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