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観測不能の侵略者  作者: 九月
第二章 海から砂へ

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38話 夜明けと朝

 やがて空が白んできて、いつの間にか隣で寝息をたてていたバ行さんを起こさないように私は自分の部屋へと戻ることにした。レイニーはまだ眠っているだろうか。廊下も扉も音をたてないで通過していく。私が自分の泊っている部屋に入るとレイニーはまだ眠っていた。この部屋に他の何者かが入った形跡はなさそうだ。そういえば昨日部屋に感じた違和感はバ行さんの仕業だったのだろうか。バ行さんはどうやらこの部屋に私たちがいることを知らなかったようだし、昨日海を眺める為に部屋に入ったのかもしれないな。荷物も何もなかっただろうし誰も泊まっていないものだと思うのが自然だろう。


 しばらくして太陽がその姿を完全に人間たちの視界に晒した頃になってレイニーが起きた。


 「んっ。ふぁぁ、うーん」


 レイニーは体を伸ばして、キョロキョロと辺りを見渡している。この宿に泊まったということを思い出そうとしているのかレイニーはぼうっと思考を巡らせ始めた。やがて思い出したのかはっとした顔になって私に顔を向ける。


 「ミリア!昨日何も無かった?ごめんなさい、私寝てしまっていたわ・・・・・・。何も無かったの?本当に?そう、なら安心したわ。私にも特に違和感を覚える部分も無いし大丈夫だったみたいね」


 私はレイニーにバ行さんのことを話そうかと迷ったが、心配されるだろうと思い、やめておいた。それにレイニーはバ行さんのことを警戒してしまっているようだし事件に発展する可能性も無きにしも非ずでは無いだろうかと思った次第だ。まあこの街の男がレイニーにとっては恐怖なのだろうから、先入観を抱いてしまうのは仕方がないかもしれない。人間が人間を判断する材料はごく限られた部分であり、その人間の本質がその部分には無いことだって多々あることだろう。故に面倒なものなのだ人間の社会は。




 私とレイニーは連れだって朝食をとりに行くこととなった。今日は取れたての新鮮なお魚を食すことが出来るだろう。私はあいにくそれほど味の違いに敏感ではないが、どうせなら新鮮なものを味わってみたいとは思うものだ。それにしても朝ということもあってか街は人で溢れている。どこからか向けられる視線を無視して、なるべく人のいない落ち着いた雰囲気の店を捜し歩く。


 結局、昨日のお昼に入った店に入ることになった。そこは相変わらず人があまりいなくて落ち着いた雰囲気で私にとってのベストプレイスといっても良いかもしれないような店であった。まあベストプレイスは言い過ぎたけれど。早速新鮮なお魚料理を注文する。少し待って、運ばれてきたものは活きが良いという表現を死後にも使えるくらいの鮮度である活け造りというやつだ。美味しくいただく。


 この街にいるのは後1、2日程度だろう。その間を海を延々と眺め続けて過ごすというのも良いものであるが、やはり少しくらいは体を動かしたくもある。この街のギルドには立ち入らないにせよ、気ままにモンスターを討伐しに出かけてみようかな。しかしその場合レイニーにはどう伝えるべきか。おそらく私がそのようなことを言えばレイニーは高確率でついてくるだろう。私がモンスターを倒すところを目撃されるのは嫌だ。体を動かすというのはある程度出力を上げて行う行為なので、レイニーがついてくると不完全燃焼に終わってしまいそうである。うーむ駄目だ、上手い言い訳が思い浮かばない。こういう他人によって行動が縛られてしまう点はつくづく人間の面倒さを感じる。とはいえ現在私の行動を縛っているのは私でしかないのだが。




 今日は結局体を動かすことは諦めて、海岸を散歩して過ごすことにした。私たちが泊まっている宿から覗ける海岸は、漁船や商船が停泊している港から岩場を隔てた西側に位置していてその上距離も離れているため喧騒も届かず人もいない良い場所だ。私はレイニーに今日はここで遊んでいると伝え、何も危ないことは無いことをアピールして一人になるように仕向けた。


 ここは人がいないとはいえ、体を動かすわけにはいかないのだ。どこに目や耳があるかわからない。人間は秘密を守ることに向いていない。私の情報が誰かに知られたりしたらそれが漏洩する可能性はいくらでもあるのだ。人間は感情を持つが故に行動をコントロールされることもある。それを考えると人間は情動に左右されるもののようでもあるが、さらに思考回路や肉体があるのだ。相当生きづらい生命体であるということがわかる。まあどうでもいいけれど。

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