34話 魚は海から陸に上げられて切られて食べられる運命
海で星を見たいです
昼食をいただきたいわけであるが、漁というのは夜から朝方にかけて行われるようなものであるため、新鮮なお魚は朝のうちに殆ど使われていると思われる。漁は、モンスターに襲われることもあるため、シーハンターも同行して行われる場合が多いもののやはり人手不足のため、罠などを上手く工夫して手間をあまりかけないようにしているようだ。ともかく私が食べるお刺身は様々な苦労の末に手に入ったものであることを忘れてはならない。
適当な、落ち着いた雰囲気の、あまり人が多くいないような店を見つけてそこに入ることにした。入ってみるとお魚料理が沢山あるようで迷ってしまったが、当初の目的通りお刺身を食べてみることにする。ここであまり食べ過ぎてしまってお金が減るのも馬鹿らしいので今回はお刺身だけで済ませよう。とはいえ腹に溜まる程度の量は外聞的にも食しておくべきであろう。よってお刺身の盛り合わせを頼んだ。
ほどなくして目の前に運ばれてきたお刺身の盛り合わせは、様々な彩のお魚の切り身が綺麗に盛り付けられており、その量は思っていたよりも少しばかり多いものであったが、美味しいものを沢山味わえるのだから得したと思うべきだろう。実際食してみるととても美味しいものであった。ついうっかり海鮮丼という料理を追加で頼もうとしてしまったが、これ以上は外聞的によろしくないだろうなと思い、そして何より金銭面へのダメージも増してしまいそうだったので流石に我慢した。
昼食を終えて、次は宿をとっておこうと思ったが、やはり先に海を見ておきたいと思い、そしてどうせなら海が見える宿に宿泊しようと考え、まずは海へ向かうことにした。街の南へと進む。
海というものを初めて目にした。凄い。これが星の7割も占めているというのか。水浸しではないか。波が延々と連なっていて、それはいつか星が終わるまで永遠に繰り返されるものであるのだと感じた。この膨大で果ての無い水を、人間やその他の種族は移動手段とさえしている。自然の上で生きているということが、海を進む船を見るだけでありありと感じさせられるようなものである。この星には様々な生命が息づいており、それぞれが独自の生き方をしている。非情に学習しがいのある星であることは間違いがない。
ひとしきり海を見て楽しんだので、ようやく宿をとることにした。私がとった宿は海の近くにあって、それでいて安くて人も殆どいないような2階建ての宿だった。店主の話によると、誰かに襲われても責任はとれないという。どういう意味かと案内された部屋を見てみるとなるほど扉に鍵がついていない上に部屋はぼろいというかなんというか、それなりに広いスペースはあるもののそれはベッドしかないからであるという風な様子であり、なかなかひどいものであった。これなら安いのも納得である。私としては部屋から海を臨むことができればそれでいいという思いであったので、寝具があるだけ大満足である。よし、今日は夜起きて星と海を一緒に眺めるぞ。きっと綺麗だ。凄く。
それからやるべきことといえば、この街のギルドに顔を出しておくくらいだろうか。この街には、南に渡る船を見つける為に数日ほど滞在する予定である。ギルドでお金を稼いでみたり、船の情報を探したり、この街でもちょっとした寄り道が必要である。それに新鮮なお魚をもっと味わっておかなければならないからな。というわけでギルドを探しに行こうか。もちろん荷物は全部持っていく。店主に出かける旨を告げて、宿を出る。
ギルドを探し当てて中に入ると、案の定視線が集まる。大抵は居心地の悪さに身じろぎも取れなくなるところであろうが、私はそうはいかない。私の今の格好は、一目で冒険者なのだとわかるような装備で身を固めているとはいえ、やはり白い髪と黒い目が目立ってしまうので冒険者然とした立ち回りをみせなければ上流階級の人間だという風に思われてしまうかもしれない。郷に入っては郷に従えと言うように私はこの場になじんでいるかのように動かなければならない。とはいえただ掲示板を見てみるだけなのだが。さっさと閲覧して宿に戻って海を眺め続けなければ。それは最高の時間の使い方になるのではないだろうか。楽しみだ。
私が無事に掲示板まで辿り着き、船の情報や割りのよさそうな依頼を探していると不意に後ろから声をかけられた。振り向けばそこにいたのは青いセミロングの髪の冒険者の女性であった。
「あなた、冒険者、なのよね?そう、なら話したいことがあるんだけどちょっといいかしら」
そんなことを言ってくる女性の後ろをちらと見ると、ギルド内の男たちがニヤニヤと笑っていた。今気が付いたが女性がとても少ないようだ。それにどうやらあまり治安はよろしくないみたいである。どうでもいいけれど。とりあえず女性の話は聞いておこう。返事返事。
「うん」
うん、というのがどういういきさつで肯定をあらわす音になったのかは謎であるが便利なのでよく使う。
「ここじゃなんだから、どこかの喫茶店でも行きましょう。もちろん奢るから安心してね」
「うん」
うんにうをつければううんになって否定になるのも謎だ。たまに使う。
そういうわけで私は謎の女性に奢ってもらううえに、ありがたいお話まで拝聴させて頂けることになったのだった。
ひとでって海星って書きますけど
星が☆っていうイメージができてから考えられたものなのでしょうか
調べてみたら違ったようです




