33話 港町
私が花火のパーティーメンバーとなってひと月ほど経っただろうか。既に資金は十分に溜まっている。これだけあれば砂漠への道のりで尽きることはないだろう。あさむぎたちには事前にある程度の事情は話していて、お金が溜まったらパーティーを抜けて旅に出ることは一応了承してもらっている。故に本日旅立とうと思う。前から、今日旅立つことは皆に言っており、昨日はさよなら会をしてもらった。また会おうという約束をしたが、私はそれを束縛だとは思わなかった。私にもまた会いたいという気持ちがあったからだろうか。
「じゃあね~、ミーちゃん」
「元気でね。頑張りなさいよミリア」
「それではどうかご無事で。私のことを時折思い出して下さると幸いです」
「さようならミーちゃん。またいつか会える日を楽しみにしています」
最後に皆とお別れをして、私は南に進む。今回はちゃんと行商人の荷馬車に乗せてもらう。心配をかけるのは面倒だからな。そして私は時刻が昼をさす前に街を発ったのだった。因みに今までのおおよその生活費をあさむぎの家に置いてきた。直接渡したら断られそうだと思ったからである。お金は信用。
空は晴天で草木は風にそよいでいる。まさに絶好の旅日和だといえよう。目指すは海で、そこにある港町には荷馬車で2日ほどで着くことだろう。よって私は荷馬車で何をするでもなくただぼんやりと空の様子を観察しているのだ。一応この荷馬車には護衛の役割として乗せていただいているのだが、現在はモンスターも盗賊も野盗ものぶせりもおらず、道中は平和なものであった。
途中の休憩で、荷馬車から一瞬で物凄い距離をとってから白巻たちを出して様子を見てみると元気そうで安心した。毎日餌は補充し清潔さも保っていたのだが、ちゃんと外に出していなかったから今は光合成をさせておこう。荷馬車に気を配りつつ、白巻たちの満足度を満たして、やがて全てを回収して荷馬車に戻った。行商人はのんびりと馬に水を与えていたようでこちらの行動が別段気付かれた様子は無い。そのうちまた荷馬車が動き出した。
時間はゆっくりに感じられたが確かに時は流れているようで、あっという間にその今日という日を終わらせようとしていた。そうして時間の流れにぼうっと身を任せているといつの間にか港町は目前に迫っていたのだった。驚愕。
意識をはっきりさせて、港町の外観を見る。奥の方に灯台らしい背の高い建造物が見えるものの、海は見えない。海。それは広大で雄大で膨大なのだという。それゆえに海に発生するモンスターは分布が広く、すぐに狩らなければどんどん増える。そのためにシーハンターという海のモンスターを専門とする冒険者の区分があるそうだ。彼らは非常に好待遇であるものの、その危険度故か人数が多くないのだそうだ。それとも教育体制がないからだろうか。学校という高等なものは王都くらいにしかないらしく、田舎の子供たちは大抵が家業を継ぐか冒険者になるかという道を選ぶ。しかし平民でも才あるものは王都の学校を目指すこともあるらしい。どんな扱いを受けることになるのかは知らないけれど。そうだな今度は学校に行ってみるのも良いかもしれないな。きっと色々なことを学ぶことができて楽しいだろう。
港町に到着して、特に検査とかもない門を荷馬車がくぐった。現在時刻は昼頃ということもあってかそれともずっとこんなものなのか港町であるからなのか大層賑わっていた。どうやら私たち以外にも旅人やら行商人は大勢いるようで、宿屋もそこらの店も市場も随分と繁盛しているようだ。
私は荷馬車に乗せてくれていた行商人にお礼を言って、護衛の報酬を断って、今度会ったらいくらかまけてくれるようにお願いしておいて別れた。なかなか良い行動をとれた気がする。
さて昼食のお時間だ。ここは港町だぞ?もちろんお魚を食べなければなるまい。この世界には動物も魚も虫も微生物もいるが、ある時モンスターが発生したことで、今ではその種類は少なくなっている。昔はある一定の種を親の仇であるかのように狩るモンスターが多くいて、その種が絶滅するとともにそれを狩るモンスターも消えたのだった。故に現在存続している生き物は、特にモンスターにその数を多く減らされるようなことはなく、均衡を保っている。幸か不幸かまだ人間を執拗に狩るモンスターは発見されていないそうだ。
とりあえずお刺身が食べたい。




