30話 夜
夕食を済ませてあさむぎの家に一緒に帰る。辺りは既に暗く、今日という日はあと数時間で終わるだろう。私とあさむぎは明日を迎える為に、家で寝なければならない。いや、別に明日は寝ていようが寝ていまいが勝手に来るものなのだけれど。人間が寝る周期は25時間であり、それは陽の光によってリセットされているらしい。つまり夜寝て朝起きた方がリズムが乱れないから人間はそうしているのだろう。まあ朝は明るいからという理由でしかないのかもしれないが。というかそれが真実だろう。しかしどれほど昔から人間はそのようになったのだろうか。誰に言われたわけでもないだろうし、人間になる前からの習慣が今も継がれているのだろうか。どうでもいい。
家に着くと、あさむぎはお風呂を沸かした。私は汚れは随時消去しているが、森の宿で湯に浸かって以来、体を温めていなかったからもし入れてもらえるのであれば遠慮せずに入りたいところなのだが、そこらへんどうなのだあさむぎ。
「もちろん入っていいですよ。この家にあるものは何でも自由に使って下さい。あっ、でも刃物は駄目ですよ!危ないですからね。お風呂に先に入りますか?では熱すぎたりしたら呼んでくださいね。それではごゆっくりどうぞ」
あさむぎに了承をもらい、浴室にはいる。家に浴室があるというのはまあまあな金持ちだと思うのだが、極東では一般的に普及しているそうだ。そしてなんと驚くべきことにあさむぎによると極東の上流階級の人間はオール電化の家に住んでいるという。思ったよりももの凄い発展をしているようだ。俄然興味が湧いてきた。砂漠のあとは極東に行こうかな。
衣服を脱ぎ去り、畳んでおく。扉を開けると何かの木の匂いがした。なんか木でできているようだ。体に汚れは無いものの、一応洗っておく。浴槽に浸かる。ちょうど良い熱さである。私はこのままここで寝てしまいたくなったが、あさむぎもお風呂に入るだろうと考え我慢して、惜しみながらも十分体が温まったところで浴槽を脱した。いつか誰にも迷惑がかからないような状況でやってみようと思う。楽しみだ。
お風呂交代をあさむぎに告げ、私は明日の準備を済ませる。明日受ける依頼では私も何らかの実績を残してやろう。ともあれナイフの使い方くらい覚えておかなくてはな。昨日の喫茶店にそんな本があっただろうか。さすがに営業終了時間になるだろうけれどあさむぎが寝た後に行ってみよう。
あさむぎがお風呂から上がって、それから色々と明日のことなどを話して、やがて就寝の時間となった。私に気を遣ってかどうかは知らないが、別々の部屋で床に就いたあさむぎが静かな寝息をたてている気がしたので、私は家を出た。
街は未だ明かりがついている店が多い。今日とか明日とかを考えずに、今を生きている人間たちが酒盛りをしているような店なのだろう。時折、騒ぐ声が聞こえる。そんな大通りにいる人間もまあまあな数で、こちらに視線を向けて様々な感情を抱いているような気がした。15歳から成人なので私が歩いていてもなんら不思議はないはずであるが、やはり髪や目が目立つのだろう。
昨日の記憶を頼りに横道を探していると、居酒屋のギャーギャーという喚き声に交じって、どこかの路地からキャーという甲高い悲鳴が聞こえた。周りを見るといつの間にか人気は無くて、私を路地へと向かわせるようであった。そんな雰囲気にあえて飲まれて路地へと向かう。




