24話 バナナは足を引っ張らない 掬うのだ
この辺りの国々では、広大な面積を占有する砂漠、万能地獄に近いほどに強いモンスターが生息しているというのが常識である。砂漠に近い街のギルドには、強いモンスターに対抗するためにランクの高い冒険者が複数存在している。冒険者にはランクがあって、通常はF級~S級、例外としてSS級やSSS級までもが用意されているそうだ。ミリアは言わずもがなF級である。冒険者に登録する際、初めは誰もがF級からのスタートではあるものの、飛び級制度があり、自分のランクよりも難しい難易度の依頼を受けて、成功していると、ランクもギルド側に上げられる。
現在ミリアがいる街は、砂漠から北上し広大な地面があり、それを越えてさらに海を越えると辿り着く。割と遠いものの砂漠の影響が強いのか、この辺りの街のモンスターはそこそこ強い部類である。そのためこの街にいる冒険者もそこそこの実力を持っている。
極東のパーティーメンバー4人に加わって受けることになった依頼はモンスターの討伐である。その依頼は本来ならC級の冒険者が受ける依頼であるので私も参加していいのだろうかと思ったが、冒険者はどんな依頼も受けていいらしい。ただしすべてが自己責任で完結するようなシステムである。依頼を受ける際には、掲示されている依頼書を受付に確認してもらうのだが、その際にあまりにも無理そうであるならば受付側から注意喚起は一応なされるのであるが、実力を過信するものや、お金欲しさに高難易度に手を出したものなどはそれを無視してしまうことがままあるようだ。しかし今回私がいても別段注意はされなかったので、このパーティーはそれなりの実力を持っているのだろう。
今回討伐するモンスターは、街の東の森に生息しているゴランノスというモンスターだ。もしもゴリラという動物がいるとして、このモンスターはゴリラに長い尻尾のついたものである。握力が50トンであるといわれているが動きは遅いためにさほど危険視はされていないものの、捕まったら終わりである。このモンスターはバナナが好物であることが知られており、一日の消費量が一匹50本程度で、森にバナナが無くなるとゴランノス同士で奪い合いを始め、最終的には街に強奪しに来るという。そのためゴランノスは害獣指定をされており、見つけたら報告することが義務となっている。さらには定期的な討伐も依頼とは別に直接指名を受けて仕事をすることもある。今回は依頼として出ていたゴランノスの討伐である。
5人で森にやってきた。林とよんでもいいと思うくらいにはそれほど鬱蒼としていなく開放的であった。私は4人に、植物の種類と見分け方、水場の探し方、モンスターの残す痕跡についてなどの冒険者としての能力を色々と教わりながらゴランノスを探していた。パーティーらしく前衛と後衛に分かれている。前衛が黒戸あさむぎ、宵月えるも。後衛は納城花火、言ノ葉摂理。その間に守られる形で中衛として私だ。
しばらく歩くと大きな足跡を見つけた。私が見つけたわけではないが、パーティーを組んでいる以上その功績は全員に還元されるものなのである。
「この足跡がゴランノスの足跡よ。まだ新しいし、どうやら一体だけみたいだからこれを辿ってみましょう」
花火がリーダーらしくそう言うと皆は頷きを返す。足跡を後ろ向きでたどり、樹上に息を潜めて隠れているなんてことをする頭脳は持っていないそうなので、頭上に警戒する必要はあまり無いだろう。
足跡をたどっていくと、やがてバナナの木が多く存在する場所に出た。その場にいるゴランノスは一体で、木の上でバナナを貪っていた。その下には大量にバナナの皮が落とされている。
「じゃあ今から摂理とあさむぎに倒してもらうからミリアは見学ね」
花火がそう言うと、皆準備を始める。そして摂理があさむぎに確認をとる。
「準備はよろしいですか?まず木から落とします。あさむぎ様はそこを叩いてください。えっと、それだけで十分ですよね?」
「ええ、特に問題はありません。では私が走りだしたらお願いします」
「承知しました」
そんなやり取りを交わし、あさむぎが前触れなく走り出す。そして摂理が何事かを言葉にする。
「落ちろ」
その目には闇が広がっていた。
ゴランノスはバナナを食べていた。やがて鼻糞をほじりそれを食べようと思ったが、バナナを持っているのでいらないなと思い直して指で飛ばす。その鼻糞は粉々になった。それをつまらなく思いながらバナナを食べようとしたその瞬間、ゴランノスに超重力がかかった。それによりゴランノスは自らが座っていた枝もろとも地面に落下する。お尻から落ちて地面にはちょっとしたクレーターが出来る。バナナを顔じゅうに塗りたくることになってしまったゴランノスは丈夫なのか、それとも落下したという結果が確定した時点で効果が解けたが故無事なのかはわからないが、ゴランノスは元気に怒り出した。それが落とされたことへの怒りなのか、バナナを台無しにされたことへの怒りなのかもまたわからなかった。




