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観測不能の侵略者  作者: 九月
第一章 巷で噂の変質者

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17話 ギルドで登録しよう

 ほどなくしてモーニングセットが運ばれてきた。私は本を読む手を止めて朝食に手をつける。一応、カウンターを挟んで向かい側に座り直した老人にいただきますを告げる。ところでいただきますというのはこの辺りからしたら極東と呼ばれる島国の文化らしい。老人は気に留めた風でもなく頷くと、読んでいた本に目を落とし始めた。私は音をたてないで、とてもおいしい目玉焼きやらフレンチなトーストやらを食すのだった。


 食後に、少し冷めてしまった残りのミルクを飲んで、ふぅ、と息を吐く。私は一応ごちそうさまでしたと言って、お代はいくらかとたずねる。すると老人は、雨が降っていないのならお金はとらないと言う。雨宿りする時は雨宿り代を貰うのだろうか。そういうことならばお言葉に甘えさせていただこう。私は老人にお礼を言って、また店に来ると約束した。ここには読みたい本が沢山あるからな。私は風鈴の音色を奏でつつ店を出た。




 逸れていた道から大通に戻ると、相変わらず人々の賑わいが衰えることをしらずにいた。私が朝食を食べた後に行うべき目的は、冒険者ギルドへ行って冒険者登録をすることだ。身分証明もたやすくなるし、路銀も稼ぐことが出来るようになる。旅を行う上でも必要な行程である。ともあれギルドの場所をそこらの人に聞くのも面倒で、祭りの雰囲気を味わいつつも周りを見渡しながら彷徨っていると、ようやくそれらしき大きめの建物を見つけることに成功した。


 意を決して中に入ってみると、やはりというべきかなんというべきか案の定一斉に視線が向けられた。ギルドの中にいる人々は皆が冒険者然とした風貌というか装いというか装備で身を固めており、掲示されている依頼書を見たり、テーブルを囲んで何やら話したりしていたようだ。私は「ふ、ふえぇ」と怯えている意を表す鳴き声をあげた。まさか16歳の女子供に絡む大人はいないだろうが一応だ。そんな私を見て冒険者たちはばつが悪そうに目を逸らす。大人気にないことを自覚したのだろう。弱いものを大の大人がよってたかって睨めつけるなんて状況を客観視してくれたようだ。しかし好奇心かなにかは残るのかちらちらと伺いつつそれぞれがヒソヒソと話し始めた。


 「珍しい髪と目だ。どこぞの貴族か?」

 「下手すりゃ王族だったりしてな」


 「なんだってこんなところに。格好もそこらの村娘だしなんか訳ありってか」

 「それにしても一人ってのはどうなのかねぇ」


 「オウフwwwデュフフw」

 「ドプフォカヌポォwwwwwww」


 「迷子かなんかだろ。お前声かけてみれば?」

 「いや、ここは女がいくべきだろ」


 色んなテーブルで憶測が飛び交う。私は受付へと進んだ。幸い誰も並んでいない所があったのでそこのお姉さんに話しかける。


 「あの、冒険者登録をしたいのですが」

 「えっ!あっ、失礼しました!えっと冒険者登録ですか。あの、その、しょ、少々お待ちください!すぐに戻りますので!」


 そういってお姉さんは受付の奥に駆けていった。なんとなくざわつく冒険者の皆様方。少しして受付のお姉さんが戻ってきて別室に案内する旨を告げられた。私は受付のお姉さんの案内に従って、カウンターの端の扉から来客用の部屋が数個並ぶ廊下へと入った。受付のお姉さんについていくと重厚感のある扉の部屋にいきついた。受付のお姉さんがノックすると、中から返事があった。受付のお姉さんが扉を開けて中に入るのに私も続く。


 「し、失礼します。お連れいたしました」

 「おう、ありがとさん。業務に戻っていいぞ」


 部屋の中は割と高そうな黒いテーブルを挟んで二人掛けほどの大きさの同じく黒いソファーが二脚あり、壁際の棚には整理された書類やら本やらが収まっていた。そして執務を執り行うであろう机には壮健そうな体躯の男性が座っていた。


 「それでは失礼しました」


 と受付のお姉さんは部屋から出ていった。


 「さて、とりあえず座ってくれ」


 椅子から立ち上がりつつそう言うので、私は言われるままにソファーに腰掛ける。男性は、お茶やらお菓子やらをテーブルに置いて私の向かいに腰を下ろした。


 「俺はこの街のギルドマスターのギリーってもんだ。早速だが嬢ちゃんに色々質問がある。まずは名前を教えてくれ」

 「ミリア」


 ミリアは相手によって、無意識か実験的にか態度というか雰囲気を変えているようだ。先程まで幼女っぽかったミリアは急に大人びた雰囲気を纏った。


 「ミリアか。端的に聞くが君は貴族か何かかね?」


 なるほど私の見た目的には珍しさが目立つので、色々と勘繰られているというわけか。貴族だからといって冒険者になれないというわけでもないが、貴族と冒険者の折り合いは悪く、訳ありの貴族なんかを冒険者に入れてしまうと、貴族側から何か介入されるような可能性があり、ともかく面倒事の種はお引き取り願いたいというところだろう。


 「私はただの村娘です。貴族には何の関わりも持っていません。私が冒険者として活動してギルドに貴族が何かしてくることはあり得ませんのでご心配なく」


 無くなってしまった今は、障害も仕方がないと受け止めよう。

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