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観測不能の侵略者  作者: 九月
第一章 巷で噂の変質者

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16話 次の次の街

 おじさんは腹は膨れたものの、疲れがあるらしく眠りについた。静かな寝息をたてるおじさんに私は鞄から毛布を取り出して、体にかけて近くにいくつか食べ物も置いておいた。そしてまだ使っていない深めの皿に水を注いでおいた。後はモンスターに襲われないことを祈っておこう。


 まだ早朝とよべる時間なので、街には近づかずに白巻たちを出す。空間の揺らぎが一閃されると手品のように白巻たちが現れる。その辺の草を食べてくるように言う。白巻たちはどうするべきだろうか。懐いているようだが、私が急に裏切って殺すのはかわいそうだろう。かといって街に乗り込むこともできないし、今更ここに置いていくとすぐさま狩られるだろう。仕方がない。飼うか。どうせいつか死んでしまうけれど、死が訪れるまでは匿ってやろう。餌であるその辺の草だって一度取り込めば大量生産出来るだろうから、あまり手間にもならない。白巻たちを外に出さなくてもよくなる。もし砂漠に家でも造ったらベッドがわりにでもしよう。それまでは我慢してもらうとするか。


 そうしてその辺の草を食べ終わった白巻たちを再び隔離する。ペットでベッドになるかと聞いたら、喜んでいた。草も別途で取り込んでおく。そうこうしているうちに時間も経ったので、そろそろ街に向かうことにする。ちょっとだけ走って街に近づいておこう。あんまり歩くのは退屈だ。


 朝食の時間が近くなってきたのでそろそろ街に入っていくことにする。広い街であり、何か事件も起きていることもあって、現在歩いている道の延長線上、入り口の大きな門には厳重な警戒態勢が敷かれていた。警備兵が何人も待機している。この様子では街中も警備兵がうろついていることだろう。ともあれ門に近づいていく。


 門に着くと、警備兵に色々と質問されたが、この街に来た目的は何かという質問に対する応答として冒険者ギルドへの登録だということを告げると、私が一人でここまで来たのも何やら訳あり故なのだと納得して、ようこそエルドレへ、なんて言って街への侵入を許可してくれた。珍しいものを見るような視線を投げかけられつつも、私は街へと入っていく。


 予想を裏切らず街は警備兵で賑わっているが、街に住む人々も朝らしい賑わいを見せている。まあこれだけ賑わっていれば犯人も朝は活動しにくいだろうから主に夜に犯罪を断行しているのだろうと考えるのが自然だ。夜に行われやすい犯罪で、さらにこれほど警備兵が出動しているところを見るに、よほどの重犯罪なのだろう。シャルヴィスたちはこの街に来るべきではなかったのだろうか。まあ彼女の能力(スキル)は色々なところから仕事を奪ってしまうようなものではあるから、経済なんて人間が生み出した偽りの平等回路には邪魔なのかもしれない。アルノア教団の上層部というのはそういった点も考えてシャルヴィスを動かしているのだろう。あれは危険すぎるからな。


 なにはともあれまずは朝食をとらなければ話にならない。ところで本日は何かの祭の日であるらしく、いつもより一入街が賑わっているらしい。そこかしこにある出店もいつも以上の人数に待機列ができている。私もなけなしのお金で何か簡単なものを出店で頼みつつ食べ歩きでもしようかとも考えたが、なるべくなら座りたいと思ったので、なるべく空いている飲食店を探すことにした。人ごみに苦労しつつも街の奥の方へと進んでいくとふと横に逸れる道があった。そちらは人通りが無く、随分歩きやすそうだ。私は当然のようにそちらへと逸れた。


 その道を歩いていくと『雨宿り』という喫茶店らしきものがあった。モーニングセットなんかがあるかもしれないという期待を抱きつつ、店の扉を開ける。


 ベルではなく風鈴の音が、扉の動きによって店内に零れた。店内には図書館のように本が沢山整列されていた。いくつかのテーブル席とカウンター。カウンターの奥、従業員がいるところには老人が一人座って本を読んでいた。風鈴の音でこちらに気が付いたのか、本から顔をあげてこちらを見て、不思議そうな顔を浮かべる。


 「雨は降っていないと思ったんだが、ボケちまったのかな」


 私は別段濡れた箇所のない服を見せつけて、雨は降っていないと告げる。それとも『雨宿り』というぐらいだから、雨の日にしか利用できない決まりでもあったのかと思い、聞いてみる。


 「それはそうに違いないんだが、別にそんな決まりは無いな。うむ、お好きな席へどうぞお嬢ちゃん。注文を聞こう」


 私はそのままカウンター席に座る。あまりご老体をむやみに動かすと死んでしまうかもしれないからな。そんなことはありえないだろうけれど、と考えつつメニューを見る。やはり喫茶店だったようで飲み物が多い。中には聞いたことの無いようなものもあるが、今は朝食だ。モーニングセットとホットミルクを頼む。老人は奥へと赴いて料理を始めた。おいてある本は自由に読んでもいいらしい。私は少しの待ち時間を、『隔絶彗星の保持概念性について』というこの辺りでは空想話として一蹴されるような内容の本で潰すことにした。

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