12話 次の街
一方後方では、マノンとアリスが戦いに加わるまでもなく片がついた。
そもそもマノンとアリスが荷馬車から出た時には一つ後ろの荷馬車からアルノア教団の何人かが既に荷馬車から出ていたし、それより後ろの荷馬車には全部冒険者が乗っていたので、彼らもとっくに武器を構えていたのである。やがて交戦が開始されても、盗賊たちの数に頼った連携ともいえないような戦い方に、冒険者たちは苦もなく対処し少しずつ数減らしをしていった。
盗賊に能力を持つものはいなかったらしく、大した抵抗もなく全滅した。冒険者の方には二人ほど能力持ちがいたようで、冒険者側は被害を被ることなく戦いに勝利した。アルノア教団は怪我人が居ないものなので応急処置なんかもできず、豪快な笑い声をあげつつ死体を漁る冒険者たちを呆れ交じりに見守るしかできないのだった。
全体的に盗賊を処理して、いったん集合したミリアとライム以外。色々話し合って、生かした盗賊七名は冒険者たちの荷馬車に乗せることになったようだ。次の次の街まで行かなければ犯罪者をどうこうする施設は無いため、冒険者たちに持って行ってもらうことにしたようだ。ただし、シャルヴィスが改心?させた二人は次の街でアルノア教団で引き取るそうだ。強く生きてほしい。そうこうしていると、ライムが荷馬車から大慌てで飛び出してきた。
「皆ァ!大丈夫か!!」
そんな言葉に皆が大きく笑って、ライムは不思議そうに首を傾げた。
それにしても随分あっさりと盗賊襲撃を処理したが、盗賊が弱かったのか、彼ら彼女らが強かったのか、それとも能力の有無か。そこがよく判断できない戦いであった。やはり能力があるものは組織や冒険者に集まり、そんな中で能力がなく落ちこぼれたようなものたちが生きていくために徒党を組み盗賊などが生まれるのだろうか。そうだとするとそもそもの力の差も、あって当然だということだろうか。社会の縮図を見た。
それから荷馬車が動き出して、そろそろ夜になろうかという時間に私はようやく目を開けた。これ以上はさすがに心配されるかもしれないと、一応考えたためだ。
「随分寝ていたわね。もう夕方よ?」
「あ、ミリアさん。多分あと四時間くらいで着きますよ」
「あはは!今頃起きたのか?」
「ライムちゃんが言うことじゃないと思うけど」
そんなことを言う彼女らは、けれど盗賊についてはなにも語らなかった。私の情操教育の心配でもしているのだろうか。会話の種を一つ失ってしまったものの、色々な国の話やマノンの御伽噺を聴いたりしているうちに、会話はつつがなく紡がれていき四時間はあっという間に経過していった。そして街に到着した。
街は喧騒に満ちていて、そこかしこの建物から明かりが漏れ出している。荷馬車が余裕をもって交差通行できる程度に広い道には酔いどれ人がちらほらと見受けられる。彼らは何が楽しいのか、けらけらと笑って酒場をはしごしていくのだった。
「宿はここがいいでしょう。空いていそうです。フワとマノンで受付してきてくれますか?私は荷馬車を置いてきますので」
「はーい」
「わかりました。ではいきましょうかフワさん」
「うん!」
そうして二人は荷馬車を降りて宿に入っていった。そういえばアルノア教団のもう一台の荷馬車は着いてきているが、冒険者たちの荷馬車は早々に宿を決めたのか見当たらなかった。そんなことを考えていると荷馬車は無事停車したようで、シャルヴィスが後ろの荷馬車にも指示を出しに行った。
「アリスぅ、荷物運ぼうぜ」
「はあ、仕方ありませんね」
ライムの誘いに渋々といった感じでアリスが応える。重い腰を上げるアリスに、目で私はどうすればいいか尋ねる。
「あなたはフワとマノンに部屋を聞いてそこにいっても良いし、街に出たいなら一応シャルヴィスにでも告げてから行くといいわ。それとも荷物を運ぶのを手伝ってくれてもいいのだけれど」
私は荷物運びを手伝うことにした。荷物といえどそれ程大きなものは無いだろう。
「ありがとう。じゃあこれとこれ持てるかしら。重くない?そう、それじゃついてきて」
やがて荷物もすべて運び入れ、与えられた部屋で落ち着くことができた。大部屋に案内されかけたが、そこはちょちょいっとなんやかんやして一人部屋を見繕った。基本的に夜は一人で過ごすタイプなので、そこは妥協してあげられなかったが、明日は朝食の席で詫びを入れようと思う。そしてそこで彼女たちアルノア教団とはお別れすることにしよう。そういえば次の街では何が起きているのか聞くのを忘れていた。明日にでも情報は勝手に耳に入ってくることだろう。
私は軽く食料を腹に入れて、22時頃まで持ち物の点検をして明日に備える。次の街までは徒歩になるだろうから、大体三日くらいかかるだろうか。シャルヴィスに正直に言うと止められるだろうから、行商人に乗せてもらうということにしておくとしよう。
やがて22時が訪れ、ベッドに身を横たえていた私は眠りについた。




