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観測不能の侵略者  作者: 九月
第三章 DELETE

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104話 大人って

 カナトは見ていた。仕事仲間がハンバーガー屋で変態を拗らせているところを。


 失望したわけじゃない。シャリテが変態だっていうのは周知の事実。既知である。


 普段から小学生だの園児だのとヤバい発言を繰り返していた。そう、彼が何かをしでかしたとしても「いつかやると思った」なんて感想しか出ないだろう。


 だが、今回目撃してしまった姿には愕然とした。衝撃を受けた。先程失望したわけではないと言ったが失望した。


 仕事では、頼れる大人という位置付けで多少は尊敬していたシャリテ。たまに、いやしょっちゅう、というより毎度、変態的なことを発言するのだって一種のムードメークだと思っていたのだ。そういう発言をすることでプライベート情報を口にすることへの心理的ハードルを下げてより親密な関係構築を図ろうという策略なのだろうと深読んでいた。


 そうつまりは仕事の外ならまともな大人なんだと、勝手に想像していた。流石に考えたくなかった。公共の場であっても変態的な行為をしているだなんて。あまつさえ他人を巻き込んで自分の快楽を追及しているなんて。マジで知りたくなかった。


 「もうここのバーガー屋入れねえよ」


 同僚がやらかしている場所に入れるほど面の皮は厚くない。ていうかなによりシャリテに会いたくない。きっとシャリテは毎日ここに通うのだろう。毎朝あんなシーンを見てたまるか。


 カナトは別の区に去っていった。




 「おっさん大丈夫なん?」


 2番区、病院。そのロビーで女性騎士がお菓子を咥えたおじさんを心配していた。


 「ああ。いや悪いね、ここまで運んでもらっちゃって。あんた良い人だ。からかって悪かったよ」


 おじさんの身体を持ち上げることが出来るぐらいには女性騎士は強かったようだ。その彼女が、芋虫みたいにのたうち回るシガレットにとどめを刺さずに病院に、文字通り担ぎ込んでくれたのだ。


 「別にもういいって。それよりヘルニアなんだったら大人しくしてなよ。なんであんなことしでかしちゃったわけ?」


 「いやぁ、おじさん実は脅されてて」


 「マジ?」


 「ああマジマジ!ヤバイよなマジ!あいつらさぁ!ほんと。途方に暮れてたんだよ。これでようやく解放されるよ。ふぅ。あ、騎士団の方でおじさんは持病のヘルニアが悪化して戦闘中に無様に死んだってことにしておいて」


 「ちょ、その脅してきたのって誰なん?一応調べないと」


 「ははは。あんた真面目だなぁ。国王様が死んだんだぞ?だったら今なにしたって意味ないだろ。俺はこのごたごたに紛れて雲隠れしたいんだよ。あんたが奴らに辿り着きでもしたら俺に追手がついちゃうでしょうが。言わない言わない」


 シガレットの言い草にムッとする女性騎士。


 「なにそれ。私がそいつらを逃がすとでも?」


 「ああ。なんなら殺されると思うぞ。簡単に」


 シガレットがそんな風に淡々と言うので、なんだかその話が真実味を帯びる。


 「そう例え騎士団が束になって戦ってもな。あ、そうだ。確か騎士団ってなんか専用のデバイス持ってるんだろ?見てみろよ。多分あんたしか残ってないぞ。もう、既にな」


 女性騎士が慌ててデバイスを起動させ、反応を探る。ロスト。頼みの綱である騎士団長でさえその反応は消失している。愕然。呆然自失。


 「な、んで」


 「あいつらはな、化物なんだよ。壊すだけなら誰か一人でも事足りる。むしろそっちのが得意なくらいだ。だから俺みたいな普通のおじさんが異常な奴のふりして紛れ込んで役割分担してんだ」


 「おっさんだって私の突きを躱してたじゃない!十分異常よ!」


 「点描穿ち(サウザンドピアス)な?俺が躱したのは点描穿ち(サウザンドピアス)だったよな?突きじゃなくて点描穿ち(サウザンドピアス)


 「うわあぁぁあっ!!」


 女性騎士が赤面発狂して点描穿ち(サウザンドピアス)を院内で放つ。シガレットの顔面に吸い込まれるようにいくつもの軌跡が伸びるが、そのどれもが人体に穴をあけることはなかった。


 シガレットはいつの間にか病院のエントランス付近におり、


 「おーい!さっきの話全部嘘だからー!あんまり知らないおじさんの言うこと真に受けない方がいいよー!彼氏さんとお幸せにー!」


 などと叫びドロン。


 悔しさと恥ずかしさで赤くなりながらわなわな震える女性騎士。その背中に声が掛けられる。


 「あのー、騎士さん。院内ではお静かにお願いします。あと武器仕舞ってください。何考えてるんですか院内で。痴話喧嘩にしたって院内で殺人未遂はまずいですよ。それとその鎧?ガチャガチャ音鳴って他の患者さんに迷惑でしょ。早く脱いでください、ここ院内ですよ?あと、まさか冷やかしで帰るなんてことしないですよね院内に入っておいて。うーん、ちょっと診察するのでこちらへ来てください。見たところ筋肉にかなりの痙攣が見られますね。これはいけない。当方マッサージの施術も行っておりますので、診察の後で治療に入ります。ほらそんなところに立っていられると困るんですよ。さあ早く肌着になって。勿論武装解除でお願いします。院内なので」


 勢いに押された女性騎士は言われるがまま鎧を脱いでいき、だが途中で我に返り院内で殺人を犯した。

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