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観測不能の侵略者  作者: 九月
第三章 DELETE

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101話 引き延ばし

 カナトは煙幕の中で騎士団を一人一人戦闘不能にしていった。正しくは二人ずつ、であるが。


 一陣の秋風が、街道に立ち込める煙幕を攫った。現れたのは二人の騎士。どうやら彼女たちが最後の騎士らしい。カナトの姿は無く、既に仕事は終わっているらしい。


 「きゃあっ!何よこれっ!!」


 いつの間にか全裸女性騎士その(いち)が自らの肢体を抱きすくめてうずくまる。その背中に熱視線を送るいつの間にか全裸女性騎士その()。彼女は自分がいつの間にか全裸であることよりも、視線の先でその一が全裸でうずくまっているという現実の方が重大らしく、視界の晴れた街道において仁王立ち。その姿はまさしく騎士である。まあ一見して騎士だとわかるような特徴は無いので、恐らくヌーディストに間違われるだろう。それくらい堂々としている。


 「嗚呼、お姉さま・・・。やっとわたくしに、振り向いて下さいましたのね?」


 その二が舌なめずりをする。柔らかく弾む唇を赤い舌がなめくじのように這い、てらてらと濡らした。疎らに雨が降り出したかと思えば、涎だ。それがポタポタと地面に染みを作る。


 「何言ってんのよっ!ってあんたも裸じゃないっ!は、早くどこか隠れましょっ!!」


 声のでかいその一。振り向くとその二の裸体が目に飛び込み、慌てて背を向け直す。


 「いいえ。いいえお姉さま。わたくし逃げも隠れも致しません。わたくし達は、一つに、なるのです」


 そう言ってその二は、うずくまるその一の背中を人差し指でツーっとなぞる。


 「ひゃんっ!」


 季節は秋。全裸には厳しい気温だ。外気にさらされた背筋を冷たい指先が這ったら、それはそんな声も出ちゃう。


 「な、なにするのよいきなりっ!」


 その二は、その一が可愛らしい悲鳴をあげたことでゾクゾクと嗜虐心をくすぐられた。恍惚に顔を歪ませるその二は、続いてその一の細い肩に手を置く。ビクッとその一の肩が跳ねるのを両の手の平で味わった。


 「ねえお姉さま。わたくしが、温めて差し上げます・・・。だから、その身を委ねて」


 「何言ってるのっ!?早く隠れないとっ!」


 「溶け合いましょう?ね?」


 「話聞いてるっ!?」


 肩に置いた手を二の腕へと滑らす。ゆっくりと、舐るように、優しく揉む。やがてお互いの熱が重なってぬくもりを感じるようになったら、また手を滑らす。前腕部も同じように、時間をかけて。そして次に手を繋いだ。後ろから、抱きしめるような恰好で。そう、いつの間にかその二の身体はその一の背中にアレしちゃってる。


 「んっ」


 ただ手を揉まれているだけ。そんな児戯みたいな行為に似つかわしくない甘い声が漏れる。寒空の下で晒されている素肌はとても敏感にお互いの存在を感じ取った。触れているトコロは温かいのにそこ以外はとても寒い。今すぐに抱きしめあって全身を余すことなくくっつけて。もはや二人で一つになってしまいたい。そんな衝動に、駆られた。


 「きゃ、え?お姉さま?まだこれから、あっ」


 その一は絡まった手指を解いてその二に向き直り、その首筋にそっと唇を寄せた。ついばむように何度も行われたそれは、やがてその二の唇に行きついて、二人は一つになった。そしてその辺の路地裏へ消えていった。


 朝日に照らされる街道には戦闘の傷跡だけが残り、人の気配はない。




 その後、彼ら彼女らがどうなったのか。それは誰も知らない。


 「さて、3番区でハンバーガーでも食べるか。そういやリンネとミリアはどこ行ったんだ?」




 「考えまとまった?」


 私はラヴィに問いかける。


 「いや、いーやちょーっと待って?んー、まだだねー。だってさー、怒るじゃん。消されちゃうじゃん。正直に話しちゃうとさー。僕まだ死にたくないなー。えー?でも正直に言うしかないよなー、うーん。あー、分かりました。正直に言います。でも怒らないでね?約束して?」


 私は頷いた。元々そこまで干渉するつもりは無かった。この状況は私を巻き込んだことによって起きている。私はただ知りたいだけだ。何故ラヴィ一人で解決できることを、アリスを操り私を巻き込んでまで複雑化させたのか。挙句それを私に問われているこの状況を作り出した意図を。


 「実は」


 ごくり、とリンネちゃん固唾嚥下。恐らくだがリンネちゃんはここを出たら今のお話全部忘れるだろう。何故なら先程から、リンネちゃんは疑問を抱かない。


 「僕は」


 ばささっ、とクリアスターを覆っていた布団がずり落ちた。アレな顔が網膜に焼き付いてしまう前にすかさず掛け直す。二度とずれないように縛ってあげた。ついでにラヴィを一睨み。じろ。


 「いや、誤解だよミリア様!その変態にもう能力(スキル)は使ってないよ!はあ、全くこのドスケベ淫乱女子大生には困ったもんだよ。夢の中でもまーだあんなことやこんなことを。ちょっと覗いちゃお!・・・ふわーお、こいつぁやべー!本当にあんなことこんなことあんあんしてる!とっても大好きじゃん!きゃ~!」


 「ラヴィ」


 「っ!?は、はいぃ!調子乗りました!申し訳ございませんっ!でも怒らないって約束したじゃん!」


 怒ってない。ただ名前を呼んだだけじゃないか。心外。

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