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観測不能の侵略者  作者: 九月
第一章 巷で噂の変質者

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9話 自己紹介って知ってる?

コミュニケーション強者には理解を得られないかもしれない、ある種の地獄に哀れにも放り込まれてしまったわけなのだが。断る理由が思い浮かばなかったために護衛を取り付けられ、シャルヴィスに騙されて長時間会話が必要な空間に誘い込まれてしまった。


 なぜ予想できなかったのだろうか、当時の思考回路が恨めしい。しかし今更私にできることといえば、あまり会話が得意ではないという雰囲気を漂わせることでなるべく話しかけないほうが良いのではないかという相手側からの格別の配慮を賜ることくらいのものだ。とはいえある程度の会話を挟まなければ雰囲気が相手には伝わらない上、自尊心の大きい者が使うと相手に見下されているという被害妄想に囚われ、人間関係なんかに亀裂をいれることもある高等でも技術でもない処世術だ。救いようが無い。現代社会で大事なことは素直な心と客観視だ。自分で自分を見てみないと気付かないこともあるだろう。尤も、客観的視点の認知が歪んでいたらどうしようもないのだが。まあそんなことはどうだっていいのだけれど。


 結局のところコミュニケーションは取らざるを得ないのだと、私は早々に現実逃避を諦めた。やることなすこと全てを楽しんでやれるはずは無いが、楽しもうとする努力くらいはしよう。会話から得られる情報は私にとって貴重な糧となるだろうという希望をもって、色々お話させていただくことにする。ところで初対面の人間が交流するにあたってまず何をするのかというと大抵自己紹介だということをご存知でしたでしょうか。私はもちろん知っていた。とりあえずアルノア教団の方達と同じようにそこら辺に座った。


 「初めまして!僕はフワ・ベルガモット!少しの間だけどよろしく、ミリアちゃん。しっかり護衛するからね!」


 と、十字架がトレードマークな金髪の快活そうな少女が挨拶してくれた。少しの間ではないんだなあ。ところで一応言っておくと、少女といったが彼女もシャルヴィスも私よりは2つ3つくらい年上だろう。多分。なんか背が高いし。まあいい、よろしくよろしく。


 「私はマノン・エリュードといいます。よろしくお願いしますね」


 今度は、青みがかった黒髪ロングの落ち着いたお姉さんが挨拶してくれた。・・・今思ったけど女性しかいない。なんかそういう部隊なのだろうか。それと私がお姉さんと言う時は、20歳以上であると推察した時だ。さて、あと二人の挨拶を心して聞こう。


 「あたしライム!ライム・ドロー!よろしく!」


 ライムグリーン色の髪のお姉さん、というよりはお姉ちゃんが挨拶してくれた。お元気そうで何よりです。彼女は暑がりなのか、黒衣が半袖で丈も短くおへそが出てる。助かる。よろしく。


 「アリスです。よろしくお願いします」


 足元に届くであろうロング金髪を携えたなんか大人しい少女が挨拶してくれた。見たところ彼女はここらの人間ではなさそうだ。異国情緒というかなんというか雰囲気もそんな感じ。


 さてこちらも挨拶をお返ししましょうね。人間関係において第一印象とかファーストコンタクトは大事ですからね。それを大事なことだと思えるほどの生き方はしていないのだろうが。


 「知っていただいているようですがミリアと申します。皆様にはお手数をおかけしますが、どうぞよろしくお願い致します」


 なんて頭を下げてぺこりと挨拶をしてみると、皆様ポカンとしていらっしゃった。いや何を間違えたんだ私は。お忙しいであろう中、わざわざ護衛という形でご助力いただく立場の者としてはまだ足りないがそれ程堅苦しくない程度の割と簡素ともいえる挨拶を実現したはずなのだけれど。16歳にしては大人な態度だったのだろうか。それとも言葉の用法を間違えただろうか。もちつけおちつけ。まだ焦るような段階ではない。ゆっくり呼吸しながら周りの反応をうかがうのだ。ちらっ。


 そんな風に前方を見やると、意外にもアリスさんがふふっと笑った。アリスが笑った!


 「あなた随分と大人なのね」


 そんなことを言うアリスは、先ほどの大人しさはどこへやら、とても愉快そうにくすくすと笑んでいた。そんな振る舞いにはどこか気品があり、お姫様のようだ。


 そしてアリスが笑うのはやはり珍しかったのか顔を見合わせていた三人も、やがて笑顔になった。


 「ふふ、アリスの笑うところ初めて見たわ。素敵じゃない」

 「ははは!今日は雪でも降るんじゃないか?」

 「アリスちゃん、やっと笑ったねー。僕なんだか嬉しいよ」


 と、マノン、ライム、フワが口々にいう。すると我に返ったというか状況に気付いたというか、アリスはハッとすると顔をほんのり赤く染めてぼそぼそと言った。


 「べ、別に私だって笑うことくらいあるわよ」


 そんな反抗にも満たない子供じみたささやかな言い分にまた三人が笑い、アリスはさらに顔を赤くしたりおろおろしたりしている。うんうん、なんだか知らないが丸く収まったようでなにより。私の挨拶も記憶から流されたことだろう。


 「それにしてもアリスちゃんのいう通りミリアちゃんって賢いんだね!僕びっくりした!」


 流されなかった。トイレじゃないからな。当たり前だ。残念。

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