朝の調理台に七色の虹を
あなたが置くのはいつもきまって水槽の横
朝の調理台に七色がキラキラ生まれて、水玉がコロコロ転がって
はじめてあなたの白い喉が水を貪る裸身に、透明が濡れて溺れて
唇を食べつくした唇は、あなたの命そのものの紅
ふたりでふたりを味わいつくした唇に、真紅に染まって
あの日も透明に洗って水槽の横に置いた、あなた
あなたはいつも、水槽の横にガラスコップを洗って
僕が食器棚にしまっても、あなたはいつも水槽の横
キラキラ七色に華やかに
なにもない二人を、なにもいらない二人にした、あなた
すべてを失っても、透明になるまで洗った、あなた
あなたを失って、僕は水槽の横にガラスコップを置く
あなたほどの透明は無理だけれど
あなたとふたりほど華やかではないけれど
あなたのいない生活を、あなたのしたように、透明に洗って
朝の調理台にキラキラ光る七色の虹を架ける