秘密任務
悪魔による、または悪魔に従う冒険者によるクラン襲撃が続いている。
高ランクの者は、悪魔に加担こそしないものの、人質・・・いや、神質をとられているので、反抗も出来ない。
街には享楽に溺れる人が溢れ、治安は低下した。
早く状況が解決すると良いのだけど。
遊戯場や歓楽街には興味があるけど、リパーが不安がるので、4人で集まって行動している。
「オーディンさん、怖いです・・・」
リパーがぴとっとくっついている。
「大丈夫だよ、きっともうすぐ、強い人達が解決してくれるよ」
人じゃないけど。
アテナ達は参戦を決定。
捉えられていない神々で作る、対策本部。
そこに通達済だ。
実際にはアテナ達自身ではなく、アテナの眷属を派遣するらしい。
俺も一応、仮初めの眷属だから、見ようによっては同じ立場。
「もう・・・耐えられません・・・今夜は・・・その・・・オーディンさんのところに泊まって良いですか?」
恐怖からだろう。
顔を真っ赤にし、絞り出すように言う。
上目遣いに見上げながら、震える手で両手を重ね・・・可愛いなあ。
俺は、そっと告げる。
「リパー・・・ごめん、今日はエイプリルと過ごすんだ。大丈夫、きっともう少し、だから」
アテナによる作戦決行は、今夜らしい。
その為、俺とエイプリルは、万一のサポートの為、アテナのクランのアジトですごす。
きっとエイプリルが何か上手く続けて、サポートしてくれ・・・え、何でエイプリル、ジト目なの?!
「ごめんなさい、リパー。ギルドの、遊戯場潜入捜査の秘密任務受けてるのよ。治安が悪いらしくて危険、人身売買も行われているらしく・・・人数が多いだけでも目立つから・・・私とオーディンだけで様子見するの」
「遊戯場・・・怖い人がたくさん居るって聞きました。大丈夫ですか?」
「私とオーディンは、荒事に慣れてるから大丈夫ですわ。いざとなったら散開、各々逃げれば、まず大丈夫よ」
「侵入自体は既に3回目だしな。奥には入り込まず、表層部分や、出入りしている層のチェックがメインだ」
俺も続ける。
「いつの間にかそんな事してたんだね」
ジリアンが驚いて言う。
「まあ、汚れ仕事は大人に任せて、ジリアンとリパーは安心して寝てて。貴方達の安全が確保されていないと、私達も安心して任務に就けないわ」
「・・・了解だよ」
「分かりました」
・・・ギルドからの秘密クエストを受けている事になってしまった。
いつもの様に、俺と熱い夜をすごすとか、適当に冗談言ってくれれば丸く収まったとは思うのだけど。
まあ、警戒を促して、アジトから出ないようになれば、より良い結果かな。
そうか、エイプリルはそこまで考えて。
流石だ。
「オーディンさん・・・気をつけて頑張って下さいね!」
リパーが心配そうに言う。
頑張るのは俺じゃなく、派遣されてくるアテナの眷属だけどな。
「大丈夫、気を付けるよ。有難う」
俺はそっとリパーの頭を撫でた。
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今夜、全てが片付く。
作戦が始まったら、シアターへの移動をお願いしようと思う。
とりあえず、自室にエイプリルを招き、くつろいでいる。
「アテナ様の眷属って、どんな方なの?」
エイプリルが、両面にYESと書かれた枕をくるくる回しながら、尋ねる。
枕はアテナに渡されたらしい。
「会ったこと無い。名前も分からない」
まあ、俺みたいななんちゃって眷属では無いしな。
かなり有名な名前の神か、それとも英雄か・・・
失礼が無いようにしないと。
好意的に見てもらえるとも限らないし。
「そうよねえ、私もトール様の眷属、他の方は知らないし」
エイプリルがYESYES枕をぎゅっと抱きしめて、
「それにしても、この枕無駄に快適ね。柄がこうじゃなかったら、喜んで貰って帰るのだけど」
エイプリルが残念そうに言う。
〈エイプリルさん、オーディン、シアターに来て下さい〉
行こうか。
〈すまない、リパーを残しては行けない〉
〈〈〈あんたじゃない〉〉〉
神々の総ツッコミ。
俺の名前のせいで。
「行こう」
こくり、とエイプリルが頷く。
シアターに着くと、大勢の神々に出迎えられた。
俺は神々に一礼すると、
「アテナ様、私達は何をすれば良いですか?」
「エイプリルさんは、後日の口裏合わせをお願いします。オーディンは悪魔連中の無力化、捕縛、服従の誓約、そして捉えられた神々の解放と、混乱の沈静化です」
うん・・・うん?
「・・・え?」
「悪魔連中の無力化、捕縛、服従の誓約、そして捉えられた神々の解放と、混乱の沈静化と、視聴者サービスです」
アテナが全く同じ文言を繰り返す。
・・・あれ、全く同じだよな?
「オーディン、頑張ってね」
エイプリルがぽん、と肩を叩く。
「や・・・アテナ様の他の眷属はどうしたのですか?」
俺がそう言うと、アテナは溜息をつく。
「・・・良いですか、オーディン。私はこれでも最高神に名を連ねています。その眷属ともなれば、序列2位の神々よりも高位。そうそう簡単に眷属なんて作りませんよ?私が眷属にしたのは、貴方が初めてです。これは凄い事なのですよ?」
いや、それを聞けば凄い事んだけど、凄過ぎて理解が追い付かないと言うか、何故かとか、そもそも知らない間にとか、説明が無いとか、ツッコミが追い付かないと言うか、そもそも突っ込むべき内容なのか。
ぽん
落ち着いて、と言わんばかりに、エイプリルが肩を叩く。
その手は少し汗ばんでいて、冷や汗をかいている。
エイプリルもトールの眷属になってるしなあ。




