魔弾
ここで颯爽と出て行って、盗賊団をやっつけられたら格好良いのだけど。
残念ながら実力が伴わない。
俺の実力では、1対1でも危なそうな奴がいる。
「大変・・・助けないと」
ジリアンが出て行こうとする。
「落ち着け、俺達の実力じゃ返り討ちだ」
「でもっ」
「それに、ちゃんと護衛はいるようだぞ?」
馬車から、冒険者がぞろぞろ出てくる。
盗賊団が叫ぶ。
「なっ・・・風の岩だと?!何故こんな馬車に!」
ランク4のパーティーだったかな。
かなり強そうだ。
「大人しく降伏しろ。命までは奪わん」
リーダーらしき大男が言う。
「ふざけるな・・・俺達にはお頭がついているんだ!覚悟するのはお前達の方だ!」
盗賊が叫ぶ。
盗賊団と風の岩の戦い・・・
風の岩が、巧妙な連携で、着実に盗賊を無力化していく。
やはり強い。
「てめえら、ふがいなさ過ぎるぞ!」
ひょろっとした男が、岩陰から出てくる。
「お前もすぐに捕まえてやろう」
風の岩のリーダーらしき男が盗賊に向かい・・・
ヒュン
リーダーの片腕が飛ばされる。
首に剣が当てられ、
「てめえら、動くな・・・後、うちの者共はさっさと立ち上がれ」
・・・強い!
〈あれは魔剣ですね〉
アテナの声が聞こえる。
・・・また悪魔かあ。
まさか魔剣で対抗とかする訳にもいかないだろうし。
リーダーの命が握られた状況・・・風の岩の面々が迷いを見せ・・・
盗賊が再度言い放つ。
「勘違いするなよ?人質でもないんだ。こいつを殺して、次に他の奴を殺して・・・皆殺しにもできる。その実力差は分かっているだろう?分かったら動くな。大人しく商品を渡せ・・・命は助けてやる。寛大だろう?」
盗賊は商品を運び出す部下を、そして動けない風の岩を見て・・・
「嬢ちゃん達は、俺と一緒に来い。今晩からたっぷり可愛がってやろう」
風の岩の女僧侶と、女魔法使いの事だろう。
どうするか・・・俺達が行っても何も出来ない・・・だが・・・
気付かれないように奇襲すればひょっとすれば・・・?
「ほーほー、落ち着いてお菓子でも食べませんか?」
不意に、何処から現れたのか、フクロウが現れる。
何処から来た?!
とりあえず今はお菓子をのんびり食べている場合ではない。
「・・・喋るフクロウ・・・?とりあえず今は何処かに行ってくれ」
「ほーほー、私と旦那の仲じゃないですか?」
「初対面だ?!」
「オーディン・・・落ち着いて・・・気付かれるよ!」
ジリアンが慌てて止める。
そうだ・・・危ない危ない・・・
「とりあえず渡しましたからね」
フクロウが無理矢理渡してきたお菓子は・・・待て。
棒状のクッキーに、傘の形にチョコレートがついた・・・これは・・・不味い。
「おい・・・待て、これは色々な意味で不味い。対になるアレとセットで扱わないと、単独で扱ったりしたら・・・これを食べる訳には・・・おい、もう一つのアレはどうした・・・?」
「ほーほー。私はそちら派なので、それ以外持ち歩いてませんよ!」
「ちょ・・・どうするんだ・・・」
これを食べる訳には・・・というか早くしないと盗賊に気付かれる・・・
「ほーほー、渡しましたからね!」
フクロウが飛び去る。
ちょっ。
焦りながら見ると・・・え、なんかみんな止まっている?
あ・・・動き出した。
盗賊が女性を抱え上げ・・・
「もう見てられない!」
ジリアンが木陰から飛び出、盗賊に向かって走る。
盗賊はリーダーのもう片方の腕を切り落とすと、蹴飛ばし、ジリアンの顔に蹴りを入れる。
軽く宙を飛ぶジリアン。
「死にたいのか?」
盗賊が魔剣をジリアンに向かって振り上げ・・・
ザシュ
盗賊の腕を俺が投擲した槍が貫く。
「おおおっ?!」
ふらっと後ろに下がる盗賊。
魔剣が地面に落ちる。
再び槍を手に戻し、再度投擲。
今度は足を狙い・・・
カンッ
盗賊が魔剣で槍を弾く。
手が戻っている?!
「残念だったなあ、小僧。この魔剣を所持している限り、勝手に魔剣が手に戻るし、身体回復能力も凄まじいのさ。せっかく見逃してやっていたのに・・・死にたいなら、希望を叶えてやろう」
盗賊が再び魔剣を振り上げ・・・
ヒュッ
盗賊の腕が再び貫かれる。
「効かねえ!」
盗賊が再び再生しようとするが・・・
ダンッ ダンッ
無数の矢が盗賊を串刺しにする。
ガッ
地面に転がった魔剣を、無数の矢が貫き・・・破壊される。
「な・・・」
反動だろうか、盗賊がその場にへたり込む。
風の岩が動き出し、動揺した盗賊を捕らえていく。
助かった・・・
ジリアンを助け起こす。
ジリアンが自分に回復をかけ、次いで、風の岩の治療を始めた。
「キミも魔剣使い?」
不意に後ろから声がする。
驚いて振り向くと、少女が居た。
確かこの少女は・・・
「魔弾ベティーナさん?」
「ん、正解」
「助かりました」
「ちょっと遅れちゃったけどね。まさか風の岩が負けるとは思ってなかったからさ・・・あれが魔剣か・・・それも魔剣だよね?」
「はい。アンデッドの出る洞窟で拾いました。危険なので、詳しい人に預ける予定です」
「ん・・・りょーかい。途中で盗られないでね?」
「分かりました」
結局、商人の馬車に乗せて貰って、街に帰った。
悪魔か・・・恐らく、悪人と正義のパワーバランスが崩れるのを見るのが楽しいのだろう。
愉快犯。
ジリアンと別れ、魔剣はアテナに渡した。
アテナが光の泡に分解してしまった。
・・・よく考えたら、既にアスモデウスがやったって分かってるんだから、持って帰っても調査も何も無いよなあ。
2018/05/18
未来からの干渉が有りました。




