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魔王達の非日常  作者: 真っ黒チェイサー
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風の中より探し出せ

サンディが書類を処理している頃、アリウス王国と隣国のスティギア帝国の国境付近にて小規模な戦闘が繰り広げられていた。

と言っても国家間の争いでは無く、スティギア帝国からの不法侵入者・・・もとい、テロリストを排除しているのである。

「いぃやっはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

叫び声をあげながらガトリングガンを乱射しているのは、アリウス王国の所持している『兵器』、「KW-01-BA」。愛称はデビー。

彼女の駆体はしなやかで、それでいて銃弾程度なら軽々と跳ね返すほどの強度を持ったエルザニウムファイバーで形成されている。また四肢が機械のそれに置き換えられており、怪力や搭載された無数の武装を駆使して敵を殲滅出来るよう作られている。

・・・彼女の意識をプログラムしたのはティルやサンディ達なのだが、その意識には1つだけ致命的な欠陥があった。それは・・・

「はーっはっは、汚物は消毒だぜェ!」

・・・倫理観が全くないのだ。

一回だけ市民の救助にデビーを用いた時、救助する筈の市民ごと敵を虐殺した事例があった。それ以降、救助に彼女を使用する事は禁じられている。

「くそっ、何なんだあいつ!?強過ぎる!」

テロリストのうち1人が物陰に隠れ悪態を吐く。もはや残ったテロリストは彼しか居らず、他のテロリストは皆彼女に虐殺されてしまっている。そもそも彼らの武装がデビーに比べて明らかに劣っているので、万に1つも勝ち目はないのだが。

「ふんふふんふふーん♪」

モノアイを光らせ、辺りを見回すデビー。両腕の武装をガチャガチャと交換しながら、幼子に呼びかけるような声を出す。

「おーい、出ておいでよー!今なら楽に殺してあげるよー?」

当然、答える声はない。その声を聞きながら、テロリストの男は考えた。

「(・・・隠れるんだ・・・瓦礫に紛れて、息を殺していれば・・・あいつが行ったら、逃げるんだ・・・!)」

「・・・うーん、もう皆死んじゃったのかなー?」

どうやら諦めたのか、キャタピラやジャッキの音が混じった駆動音が遠ざかっていく。男はしばらく息を潜め、その音が聞こえなくなるのを待った。

しばらくして、駆動音が完全に聞こえなくなってから男はホッと息をついた。

「・・・ようやく行ったか・・・」

男がゆっくりと身を起こす。次の瞬間、彼の頭が血しぶきを撒き散らして弾け飛んだ。

ぐちゃりと潰れたトマトのような頭になって崩れ落ちる死体を見ながら、デビーは満足そうに笑った。

「ふふふ、これでみんな殺せたかなー?」

そのまま辺りを軽く機銃掃射し、動く物がないのを確かめてから鼻歌を歌いながらその場を立ち去った。


魔王城エリマの地下に位置している、機械や工具などで埋め尽くされた巨大な部屋。「整備室」と呼ばれるそこに、デビーは帰還した。

「たっだいまー!任務完了、全員殺したよ!」

何かの機械を組み立てていた髭モジャ男がその声に応えた。

「だろうな。で、何か不調はなかったか?」

「ううん、バッチリ☆流石は親方、機械いじりの腕は世界一だね!♪」

「おいおい、褒めても何も出ないぜ?」

褒められて少し嬉しそうにしている髭モジャ男は、この城の機械整備を担当している機械技師達の長である。本名はロビンソン・エッジワークス、皆からは親方と呼ばれている。

「あ、ところでマスターは?」

「ああ、魔王様なら・・・どうだろうな、仕事でもしてるんじゃないか?」

ガチャガチャと機械を組み立てながら答える親方。よく見ると、それはデビーの両脚のパーツと同じものだと分かる。

「ふーん・・・・・・ところで、他の子達の進捗はどう?ちゃんと進んでる?あと何日で完成する???」

親方の背後に固定されている、無数のパーツに目を向けるデビー。そのパーツはデビーの四肢や胴体とほとんど同じ形を取っていた。

「まあ待て。今は両腕の武装格納システムに異常がないか最終チェックしてる、これが終わればいよいよ組み立てだ。」

「ふおぉぉぉ・・・♪遂に可愛い妹達に会えるんだね!!」

「ああ。インストールするプログラムの方は既に完成してると聞いたからな、組み立てとインストールが終われば完成だ!」

そう、彼らはデビーと同型の兵器を追加で開発しているのだ。全部で4体ぶんのパーツが組み立てられており、全てが完成すればKW型の兵器は計5体となる。

「・・・ったく、量産といえど手間がかかるな・・・。それに、どこの物とも知れない技術を丸ごと盗み取ろうだなんて、魔王様も考える事が突飛過ぎる・・・」

デビーを開発した時にも聞いた台詞を呟きながら組み立てを進める親方。デビーはそれらを右から左へ聞き流し、親方に聞いた。

「ねぇねぇ、妹達とチームとか組むのかな?皆で一緒に殺すの、楽しそう♪」

「そうじゃねえか?計画名も『台風の目』だったし、お前達でチーム組ませる予定なんだろ。」

「よっしゃあ!♪」

嬉しそうに腕を振り回すデビー。腕とともに鉤爪も振り回され、頰を掠めた親方が声を荒らげる。

「危ねぇ!?おい、そんな危ねぇもん振り回すんじゃねぇよ!」

「はーい・・・」

怒号を聞いて少し落ち着いたのか、そのまま壁際に歩いて行き体にコードを接続する。

「じゃ、ボクはしばらく休んでるねー!」

デビーはそのままメンテナンス用ユニットに体を預け、親方達の確認作業を楽しそうに眺めていた。


その頃、ティルは書類を抱えて廊下を歩いていた。捜索願に記されている人達に共通点があるかどうか確認するためである。

「んー・・・この量だと、結構時間かかりそうですね。手っ取り早くやりましょうか!」

そのまま資料室に入り、エリマに住んでいる人のデータが記録されているファイルを引っ張り出す。手近な机にそれらを広げ、一人ずつ確認し始めた。

しかし、いかんせん量が多いのとファイルに記録されているデータだけでは量が少ないのとで数時間経っても共通点は見られなかった。

「・・・これは、共通点無しと見るべきですかね・・・。」

彼女は半ば諦めたように呟き、大きく伸びをした。しかし、どこか諦めきれないのか一言叫んだ。

「・・・・・・ええい、こうなったら最後の手段です!スカイラさんに聞いちゃいましょう!」

そう言うと、ケータイを取り出してどこかに連絡し始めた。


エリマに限らず、魔界はそれなりにテクノロジーが進歩しています。ポケモンの街のような感じをイメージして貰えれば分かりやすいかと。

なのでテレビやケータイなどは普通に存在します。

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