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魔王達の非日常  作者: 真っ黒チェイサー
3/8

謎と紅茶、ときどき書類。

「・・・その人に、成り替わる?」

噂とは言え、にわかには信じられないのかサンディは怪訝な声を上げた。

「ええ、成り替わるんです。姿かたちから何から、ほぼ完全に。」

「・・・ほぼ完全に、ね・・・。で、それがこの書類に関係してるのか?」

「今思うと、そうとしか考えられませんよ。だって、そうでなきゃ『いる人』の捜索願なんて出されないですもん。」

自信ありげに言うティル。だが、サンディはその理由が分からないようで首を捻っている。

「・・・俺はそこがイマイチ分からないな。何でその噂と、この書類が関係するんだ?」

「えー・・・?分かってくださいよ、そこは。」

そう言うと、ティルは説明を始めた。

「まず、Aさんが居るとします。Aさんは不幸にも、『もう1人のAさん』に出会ってしまい魂を奪われてしまいました。」

「ふむふむ・・・。」

「そして『もう1人のAさん』はAさんに成り替わり、Aさんとして生きていきます。そこで私が1つ疑問に思ったのは、『なぜ成り替われるのか』という事です。」

「と言うと?」

「見た目を真似するだけなら簡単です。そういう魔法や能力、最悪の場合化粧とかメイクでも出来ないことはないですよ。でも、親しい人に怪しまれないレベルで成り替わるなんて昨日今日で出来ることではないですよね?」

「・・・確かに、その人の癖とか日常生活とかも全部真似なきゃいけないしな・・・」

実際その通りである事に気づくサンディ。外見を偽る事は簡単だが、その人にほぼ完全に取って代わる事は一朝一夕に出来ることではない。

「そこでこう考えました。『時間はかかるが、ほぼ完全に成り替わる術がある』と!」

びしっ!と効果音が聞こえそうな勢いで指を指すティル。

「ほぼ完全に・・・って、記憶とか癖とかもか!?」

「多分ですが、私はそう思っています。きっとその作業にはかなり時間がかかるのでしょう、親しい人が心配するか怪しんで捜索願を出す程度には。」

「それで、捜索を始めた頃には成り替わりは終わっている・・・と?」

「まあ憶測の域を出ませんけどね。」

紅茶を飲み干し、カップを置くサンディ。そのまま書類に手を伸ばし、作業を再開する。

「なるほどな・・・確かにその可能性が1番高い。例え憶測の域を出ないとしてもな。」

「ありがとうございます♪」

「でも、仮にそうだとすると疑問が浮かんで来る。」

彼は今日何度目かの捜索願にサインをしながら呟いた。

「疑問、ですか?」

「ああ。『そんなに時間をかけてまで、なぜ成り替わりたがるのか』という疑問が・・・」

「・・・それは噂に出て来る怪人とか全般に言える事では・・・?」

「多少なら怪人とかの行動原理は分かってるだろ。それに、それだけじゃない。『どこで中身の成り替わりを済ませているのか』『成り替わりの対象は無差別なのか、そうでないのか』『もし選んで成り替わっている場合、成り替わる基準は何なのか』・・・一旦考え出すと止まらなくなってくるな・・・」

次から次へと疑問を述べていくサンディ。こちらも紅茶を飲み終えたのか、カップを片付けながらティルも答える。

「それに関しては何とも。こちらで調査しておきますので、まずは書類を片付けてくださいね★」

「うへー・・・・・・。」

「あ、あとなるべく捜索願から処理して貰えますか?」

「・・・いいけど、何で?」

サンディは一旦手を止め、未処理の書類の山から捜索願を探し始めた。

「書類を片付け終わるまでに、1番最初に解消出来そうな疑問を片付ける為ですよ。」

処理済みの書類から捜索願を選り分けながらティルは答えた。

「『成り替わりの対象は無差別なのか、そうでないのか』。それが分かれば、『もし選んで成り替わっている場合、成り替わる基準は何なのか』も分かるはずです。」

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