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魔王達の非日常  作者: 真っ黒チェイサー
2/8

非行方不明者捜索願

この世界の何処か、【奴】が佇んでいた。【奴】はそれを眺め、独りごちた。

『・・・さて、これで配置は終わった。一体どうなるだろうな?』


ここはアリウス王国、そしてその首都エリマ。その中心にそびえ立つ城、通称『魔王城エリマ』の執務室で、彼サンディ・タートロスはため息を吐いていた。

「・・・あーあ、相変わらず仕事が多い・・・」

その声に、彼の家臣ティル・レイライトが呆れた声で応える。

「主様が早めにやっておかないのが悪いんですよ。いつも言ってるじゃないですか、後に溜めると面倒になるって。」

そう、彼は今まさに執務中。書類の束を脇に、内容を確認してはサインを書く・・・の繰り返しを続けているのだ。

しかしやはり疲れる時は疲れる。彼は万年筆を置いて椅子に寄りかかった。

「・・・ちょっと休もう。手首が痛い、腱鞘炎になる・・・」

「はいはい、まあいいでしょう。お茶淹れてきますね♪」

ティルはそう言って部屋を後にし、後には手首をぐるぐる回しているサンディだけが残された。

「・・・それにしても、いつもより多くないか・・・?」

未処理の書類を一枚手に取り、文章を眺める。その内容を簡潔に纏めると、『行方不明者の発生、それに伴う捜索願』。先程から処理している書類の殆どが似たような内容で、彼は正直飽き飽きしていた。

更に、この書類には不思議な点があった。

「・・・この人達、別にいなくなってなんかないんだよな・・・」

彼が捜索願を受理したところ、捜索願を出されている全ての人が行方不明になっておらず『普通に生活していた』のだ。

「それ、私も不思議に思ってるんですよね。」

「お、おかえり。」

ぶつぶつと呟いていると、ティルがティーポットなどを載せたカートを押して帰ってきた。そしてティーカップを手に取り紅茶を注いでいく。

「いまいち理由が分からないんですよね・・・はい、どうぞ♪」

紅茶を注ぎ終わり、サンディにティーカップを手渡して自らの紅茶を注ぎ始める。

「ん、ありがと・・・相変わらず美味いな、ティルの紅茶は。」

「いえいえ、それほどでも♪・・・コーヒーは絶望的ですけどね・・・」

自虐的に呟くティル。彼女の淹れたコーヒー(飲んだ人曰く「ただの泥」)のせいでコーヒー嫌いになった人がいるとかいないとか。

紅茶を啜りながらサンディは再び思案する。

「・・・何で行方不明じゃない人の捜索願なんか・・・?」

「うーん・・・・・・あっ!」

何か思い当たる節があるのか、ティルが声を上げた。

「どうした、何か思い出したのか?」

「・・・いえ、最近城下町でちょっとした噂を聞きつけたんです。もしかしたら、それに関係あるかなーと・・・」

ぴくりと眉を動かすサンディ。『噂』に興味を惹かれたようで、ティーカップを置いて尋ねる。

「噂って、どんな噂なんだ?ホラー系か?」

「ええ、その通りです。夜中、それも丑三つ時に1人で出歩いていると、『もう1人の自分』に魂を奪われちゃうとか・・・!」

嬉々とした声で語るティル。間違っても嬉々とした声で語る内容ではない。

それを聞き、軽く考え込むサンディ。

「へぇ・・・でも、何でそれが書類と関係するんだ?」

「ええ、実はですね・・・」

彼女は先ほどとは打って変わって真面目な口調になり、こう口にした。


「・・・魂を奪った後、『もう1人の自分』がその人に成り替わっちゃうんですって。」


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