リア充爆発しろ……?2 ~守護天使編~
「賀寿明ってキモくね?」
「あいつ変な名前だし、崇文以外とはつるまないしな」
「俺、最近部活の先輩からいじられててストレスたまってんのよ。
あいついじめて遊ばねえ?」
「いいねー。やっちまうか」
わたしは高校の玄関のロッカー越しに
ついクラスメートの会話を聞いてしまった。
賀寿明くんの大ピンチ!
彼をたすけなきゃ!
「ちょっと俺トイレ行ってくるわ」
「うーっす。あとでな」
話していた三人のうち一人が男子トイレに入ったのを見計らって
わたしもうしろから静かに入る。
ふーんあいつは中間ね。あまり好みなタイプじゃないからいいわ。
便器に小便をしている中間に背後から近づいて
睡眠薬をしみこませたハンカチを嗅がせる。
よし、個室のドアに清掃中の看板をかけて……っと
中間を中に連れ込み、制服と下着と所持品を全て剥ぎ取り
ビニール紐でぐるぐる巻きにしてから、中間のスマホで
全裸写真を撮って……っと、それからお腹のあたりに
"お前の全裸写真は撮った。しゃべったらばらまく"
とマジックで書いて……っと。よし。終わりー。
あとはスマホ以外は全部焼却炉で燃やしたらいいわね。
これでこいつは静かになるでしょ。
残るは二人ね。
「あれ、中間はいないのか?おい、城内、三田知らないか?」
「しりませーん。さっきまでは居ましたけど」
担任の先生が、ホームルームで出席していない中間を怪しむ。
ふふっ、今頃トイレの中で全裸でパニックになって泣いているはずだわ。
これもわたしの賀寿明君をいじめようとした天罰よ。
中間とつるんでる城内と三田も早めにやっちゃいましょう。
授業の合間の休み時間に城内が立ったのを見て
わたしは後をつける。またトイレだと芸が無いわね。
周りに人が居なくなったのを見計らって、うしろからハンカチを嗅がせ
屋上まで背負っていく。
わたしの鍛え上げられた筋肉をもってすれば楽勝よ。
ささっ、屋上についたはいいがアイデアが浮かばないわ。
ふーむ。どうするか。どうしたら面白いだろう。うーん。
まいいか。さっきと同じようにして
全裸で縛って、マジックで同じことをお腹に書き、
屋上でグルグル巻きにして放置することにした。
撮影は中間のスマホでして、城内の所持品はスマホ含めて全部燃やしたわ。
授業が始まるチャイムが鳴り響き、わたしは教室に戻る。
その授業中はどしゃぶりの雨が降り
雷がグラウンド近くに落ちていた。
今頃、城内は寒さと恐怖に泣いているはずだわ。
これも天罰ね。じっくり味わいなさいっ。
さ、残るは三田のみね。
所詮は高校生、一人では賀寿明君に何もできないだろうから
放課後まで待ってあげるわ。
え?わたしも高校生だろ?……っふ、うふふふふ
わたしは強靭な男でありながら、
乙女の心と賀寿明君を愛するハートをもつ
スーパー高校生であり守護天使よ!
守護天使をしながらも
授業に精を出して、賀寿明くんとの交流も欠かさない
真面目高校生の鏡のようなわたしは
夕暮れのロッカーで賀寿明君と並んで
靴を履いている。
「崇文。今日はどうすんの?どっか遊びいかねぇ?」
「おう、どうする?ビリヤードとかダーツ、ゲーセンでもいいぞ」
「お前に任せるよ」
「おう、あとで連絡する。ちょっと用事あってな。先帰っててくれ」
「わかった。じゃあとでな」
賀寿明君が学校から出たのを確認して、
わたしは三田の居る、弓道部に行く。
あいつはやる気ないし、すぐに出てくるでしょ。
案の定ついてみたら、ちょうど三田が部活を早退していくところだった。
よし、これで片付いた。とほくそ笑んだわたしは
スマホで知り合いのお姉さま方に電話し、
三田が学校を出たところを睡眠薬を嗅がせて
ひとけの無い路地裏に引っ張っていき、お姉さまたちの車を待つ。
「あらあら、かわいい子ねぇ。もっていっていいの?」
五分ほどで到着したお姉さまたちが三田を見てキャッキャ言っている。
「曲がってるから、ちょっと揉んでやってくださいな」
「わかったわ。ストレートだし、ほどほどにしとくわね」
お姉さまたちは、三田に目隠しと猿轡をすると
車に乗せて去って行った。
それを見届けてから三田の携帯で学校に電話をかけ、
戸惑う当直の先生に裏声で、城内の居場所を告げる。
中間はまあいいとして、
城内は夜までほっておいたら凍死する危険があるからね。
それから二人の全裸写真をネットにアップして……っと。
スマホの指紋を丁寧にふき取って、
河原でライターの油をかけて燃やす。
よし。
守護天使の仕事は完了よ。
さ、高校生に戻って賀寿明君との青春を楽しまなきゃ。
電話よ電話ー。
「おう、賀寿明。今日は星でも見に行かないか」
「いいところがあるんだ」
「そうか。じゃあ九時に」
雲ひとつ無い夜空が、まるでわたしたちの行く果てを
あらわしているかのようだった。




