とある朝の遅刻騒動
やばい。遅刻する。
前日夜遅くまで携帯電話をいじっていたのが災い。寝坊した!!
駅まで自転車、駅で電車を乗り継ぎ、後は徒歩でテクテク。有する時間は一時間。
今現在七時五十分。八時半までに登校厳守。
間に合うか。いや厳しい。
諦めようかな、という考えが一瞬頭をよぎる。
しかし次に浮かんだのが話が異常に長い生活指導の先生。
新入生を迎える一学期の始業式で、新入生数人を毎年貧血で保険室送りにする伝説を持つ先生。
遅刻をすれば説教は確実。
何分、何時間になるかは考えたくもない。
ならば意地でも間に合って見せよう。
ここぞとばかりに闘志を燃やして、いざ自転車に鍵を差す。
一瞬、時が止まった。
ある生物と目が合う。
サドルに赤ちゃんカマキリが乗っている。
必死に両手の鎌を振り上げて威嚇するベイビーカマキリ。
か、かわいい。
心を思わず奪われそうになる。
いけない、いけない。
私には滑り込みという使命がある。油なんて売っていられない。
でもかわいい。
とりあえず葉っぱの上に移動してやろう。
近くの植木鉢に移そうと手をベイビーカマキリに差し出してみる。
人差し指の第一関節ほどしかない小さい体。それでもやはりカマキリ。
切りつけてきた。
でも痛くない。
ちょこちょこと触れる感覚があるだけ。
本人は必至。とにかく必死。
手でつまんでみようかと思ったが、小さな体が潰れてしまいそうなので却下。
指に乗ってくるのを待つことにした。
体感時間なのでどれくらいだったか分からない。長かった気がする。
ベイビーカマキリはようやく指の上に乗っかった。
心の中でよっしゃ! と叫んですぐさま葉っぱの上に移し替える。
ベイビーカマキリは指から降りるや否や葉っぱの裏に隠れてしまった。
怖かったのだろう。
そして私は自転車の前で本来の目的を思い出す。
ち・こ・く・す・る
慌てて時計を確認すると八時四十九分。
なんだかんだで十分もベイビーカマキリと触れ合っていた。
その後、全力疾走で駆け抜けて校門をくぐる。
すでに時刻は八時半を回っていた。遅刻だ。
しかし先生は見当たらない。
一安心。肩の荷が下りた気分だ。
時間的にまだ朝のホームルームだろう。
息を整えながら廊下を歩く。
だが安心するべきではなかったのだ。
警戒して早歩きするべきだったのだ。
ちょうど生物準備室から出てきた生活指導の先生とばったり遭遇する。
本日二度目、時が止まった。
これは実際に私が体験した話です。先生に遭遇した後ですか? そりゃ怒られましたが幸いにも、授業が始まってしまうため短時間で済みました。
こんな感じに漫画みたいな日常をつづっていきたいと思います。なにやってんだコイツは、と笑っていただければ幸いです。