一番の強敵(恋敵)は
レインの一番は果たして・・・
くるりくるりと夜会の中心では白と黒が、踊る
楽しげに、伸びやかに、リラックスして踊る二人をツユリとウェルチは眺めていた
「ヌシの主はさらりと赤龍殿からレインを奪い去ったのぅ」
「左様で御座いますね
・・・カラクサは参戦しないのですか?」
「ワタシはレインとは良き友でありたいからのぅ。
それに、ワタシとしてはワタシの末娘の旦那にキリクが欲しいからのぅ
・・・どちらにせよ、果たしてクラウスがレインに色恋の情を抱いているかと問われると、甚だ疑問だが?」
「まあ、恐らくは興味が勝っていると思いますが・・・しかし、興味が何時か恋情に変わる可能性は十分に。
レイン殿をアベルに連れ行き、長い時を過ごせば変わるでしょうし」
「・・・それにしても、レインは厄介な輩に好かれるのぅ」
「懐の広い方ですから、癖のあるヒトに好かれてしまうのでしょう」
「然り然り。」
「私としましては、是非ともレイン殿にはアベルにいらして頂き、魔王様と良き関係を築いて頂けたらと思いますが」
「さよか。
しかしながら、大きな壁があるのぅ」
「えぇ、まあ確かに」
「(全く。容易く魔王殿にレインを奪われていながら、悔しがる気配が無いとはどういうことか)」
土竜は赤龍を横目に溜め息を吐く
悔しがる気配どころか、何処か満足気なのは、少しはレインの事を知ったからなのだろうと推測した
「(いい加減自覚しなければ、他国に容易く奪われるぞ)」
傍から見れば、分かりやすい執着をしているのに、思いに自覚が無いなんて・・・、と赤龍の無自覚さと鈍さに土竜は苛立ちすら感じていた
「なあ、赤龍?余りのんびり構えているなよ
レインはあの通り、大人気だ。ぽっと出の奴が勝てるような方々じゃないしな」
「土竜?なにを」
「何も浮かばないのか?ああして魔王殿と親しげに踊るレインを見て
仲の良い周辺国の方々を見て
レインに取り入らんとする貴族を見て」
「・・・」
「(まあ、赤龍の自覚を促しても、レイン自身が一番の強敵なのだがな)」
レインを射止めるにはシュレイアが、言ってみれば一番の恋敵になる
シュレイア一番のレインに、シュレイアより自分を選ばせるなんてかなり難しいだろう
じっとレインを見詰める赤龍に内心でエールを送った土竜もまた、レインを遠目に見詰めた
「セルゲイ、良いのか?」
「太白殿。まあ、親としては複雑ですな」
キュルル、と喉をならす相棒の昊を肩に乗せた劉にセルゲイは苦笑を漏らす
「レインは、好む好まざるに関わらず巻き込まれる星の下に生まれたのやも知れぬ
何より、あの懐の深さは、孤独を知るものには堪えよう
かつて、私もお前にはヤられたが、レインは一層だな。比じゃない」
「おや私もですか」
「ああ。私はお前に救われたからな
言ってしまえば、お前は蓮を救ったも同じ」
「そんな大仰な事はした覚えはありませんよ
勿論、レインもそうでしょう」
困ったように笑うセルゲイに、知らぬはなんとやらだな、と苦笑する
「何にしろ、私はあの子の意思を尊重致しますよ。
・・・年が明ければ、あの子は望んだ領主になる
あの子が後悔しないなら、どんな道でも見守ります。それが親の役目ですしねぇ」
「そうか」
シュレイアの子等は、きっと茨の道も、掻き分け先に進むのだろう
目的のためなら労力を惜しまないその生き方は時にどころか、度々危なっかしい
レインの旦那は、そんな茨の道を共に手を取り進むようなヒトが相応しいと劉は思った
「まあどちらにせよ最大の恋敵で壁はシュレイアの民だろう。」
「その存在を疎かにする輩は全力でお断りするつもりですよ」
「セルゲイ・・・」
・・・冷気が漂っているぞ・・・
短いですが・・・というか前の話が少しだけ長かったんですかね?思うまま、きりのいい所まで書いたんですが