空中庭園にて
視点が2パターンあります
前半 赤龍
後半 レイン
読みづらくてごめんなさい!!
自分の無骨な手に重ねられた小さな手
女の手とはこれほどに柔いものなのかと驚いた
レインの手を引き、会場のバルコニーに出る
この宮の中で特に広いバルコニーは、バルコニーというよりも空中庭園で、沢山の植物が植えてある
夜会が始まったばかりということもあり、この場にいるのは自分とレインだけだ
「どうされたのですか・・・?赤龍様」
「あ、あ。話す、
とりあえず座れる場所まで行こう」
首を傾げるレインに上目で問われ、鼓動は早くなるばかりだ
・・・緊張しているのだろうか
戦場に出たとて此処まで緊張する事はないというのに
一番奥に辿り着き、そこにある長椅子にレインを誘導した
植物が生い茂っているからか、会場の灯りは届かず、月光が場を照らしている
「いい風が吹いてますね。天候にも恵まれて、幸い月が雲に隠される事も無い」
「そうだ、な。」
聞きたい事がある
そう、呟いたのは無意識だった
意図せず口にしていて、気付いた時には再びレインに上目で小首を傾げられ先を促されていた
「聞きたい事が、あるのだ」
「はい」
「その、・・・・・・・昨晩の、夜会で近隣諸国の宰相達や、四大国の側近達と談笑していて思ったのだが・・」
「はい」
「・・・・・・我は、呆れるくらい、呆れられるくらい、レインの事を知らないのだと」
「はい・・・?」
目をパチリと瞬かせたレインは、我の台詞が意外なものであったようだ
「私のことを、知らない、ですか・・・」
「あぁ。
春にそなたに救われ、何度も何度も助けられ、様々な感情を知った
誰かを心配する事も、誰かに心配される事も、歓迎される事も、そなたが教えてくれた
我はそなたを大切だと思う
・・・だというのに、我はそなたを殆ど知らぬのだ
土竜が、言っていた
ヒトは、大切なヒトが出来るとそのヒトを深く知りたいと思うようになるのだと
頭があって、口がある
それなのに何一つ聞く事無く足踏みするのは愚かだと」
レインについて知っている事はなんだろうか
例えば、家族構成、年齢、性別、高所が苦手だと言うう事・・・其れ位ではないだろうか
本当に、驚くほど殆ど知らないのだ
「教えて欲しい。レインの事を、些細な事でも、今更でも、知りたい」
教えて欲しいと、真摯な眼差しで見つめられ、圧倒されてしまった
赤龍は何時だって、真面目に真摯に自分と在ろうとする
そこにくすぐったさを感じるのは何時ものことで、余りの真剣さにほんのり照れるのも、何時もの事
「・・・・・・・さて、何から話しましょうか」
<私>を知りたいというのなら、まずは私の根っこの部分から話さないといけない
真剣な心には真剣な心で臨む
特別隠し切らなければならない事でもない
なら、話してしまうべきだろう
たとえ赤龍様が予想だにしない夢幻のような事でも、確かに私にとっては現実なのだから
「レインについて語るならば、まずは前提として、とある女の人生を語らなければなりません
夢のような話で、少々長くなるやも知れません
それでも、構いませんか・・・?誓って、真実以外は話しませんので」
そう、前置きを伝えてしまえば赤龍様は完全に聞く体制になっていた
「(素直な方ねぇ・・・・・)」
本当に、子供のようにまっさらな方だ
「赤龍様、私は、レインになる前の記憶が在るのですよ」
「レインになる前・・・?」
「この世界には、仏教がありませんから、輪廻転生と言う言葉も存在しませんので、説明が難しいですね
そう、赤龍様は誕生する以前の記憶が在りますか?
このエーティスの、バルクスの火山で生まれる、其の前の記憶は」
「ない、な。我の記憶の始まりは、バルクスのマグマの中が始まりだ
・・・それも、だいぶ薄れているが」
赤龍様が生まれた頃というと2300年は昔なのだから、むしろ薄っすらでも覚えている方が凄いと思うが
「私は、母の胎内に生じるその前の記憶が在ります
92年の時を生きた平凡な日本人であった女の記憶が、何故か鮮明に」
「それは・・・」
「なぜかと問われても、私はその問の解を持っていません
何故記憶をもって生まれたのか
何故薄まらないのか
何故私なのか
正直な話、私自身が御仏にお答え頂きたいものですが、それは敵わないので、永遠の謎ということで、死した後三途で問えたらいいと思っております。
・・・脱線いたしました
とにかく、私にはこのエーティスで生まれた18年分の記憶に92年分の記憶があるのです
そして、私という存在について語るならば、間違いなく92年時を生きた女の話をしなければなりません」
「う、む」
「楽しい話ではありませんけど」
くすりと笑って、私は話し始める
<レイン>の大本、日本人の私の話を




