四日目会議と素朴な疑問
四日目の会議は、始め、昨夜のうちにヴォルケが体調を崩し一族諸共、帰途に着いた事の報告から始まった
其の体調不良の理由を知るレインは少し遠い目をしながら、大事に至らないと良い・・・とヴォルケの体調を内心で気遣った
甘いと言われるかもしれない・・・殺されかけたのに、その加害者の身を案じるなんてありえないのかもしれない
「(結果死ななかったのだから、私としては終わったことにしておきたいのよねぇ
いつまでも怒ったり恨んだり、なんて、どうしようもなく疲れてしまうものね・・・
きっと口にしたら怒られてしまうけれど)」
ふう、と息を吐きレインは次に上がる議題に耳を済ませた
「では、最後に来年度に予定しております大きな行事について、お手元の資料をご覧ください」
「四大国の、トップ会談か」
「それに、周辺国参加の開国式典とは、以前から分かっていたとはいえ、来年度の夏は忙しくなりそうだね」
バルクス、ナザルの二人の呟きには他領主も無言で首肯する
元々、節目程度にしか交流を持たない四大国の、トップが一同にエーティスに集まる
会場は順番で、前回は100年前にカラクサで開催された
大きな外交の舞台となるため、開催国へ求められるモノも多い
「昨年から、予算の計上など大方は進めております。この先、夏までに各領主並びに各領地の担当やそれに伴う物品その他の手配について順次決めて参りますので、宜しくお願い致します」
会談は勿論話し合いのみではなく、夜会なども行われ、これが貿易に繋がるかもしれない事もあって、八龍、国府のみならず各領主や各領地の気合いもかなり入る
また、周辺国参加の開国式典は、此方も節目で行われるのだが、一月に渡って盛大に行われ、入国してくる外国人の数は数倍に膨れ上がる
会場となるのはナザルだが、周辺領地も大きな経済効果が予想されている
勿論、予想出来るのはプラス面だけでなく、残念ながらマイナス面も大なり小なりある
「宿泊施設を増やし、インフラを改めて整備し、警備の強化など、ナザルの負担は大きくなる。これにヴォルケの港へ共同出資など、可能か?」
バルクスの声に、室内の視線はナザルに集まる
「勿論、厳しくはありますが我が領は三領の一角
成せるかではなく、成して見せましょう」
「言ったからには、必ず成すように。
シュレイアは陸と内海から、クレマは内海、ムーランドは陸からそれぞれ人や物が行き交うであろう。それぞれしかと役目を果たすように」
黄龍の言葉に室内に居る全員が頷いて、四日目の会議は終了した
「レイン」
「なに?サラ」
皆がそれぞれ夜会準備の為に部屋を出、レインもまた、会議室を出たところ、後ろから声をかけられ振り向く
「今日の夜会も魔王殿達、参加されるの?」
「だと、思うけど?」
それが、どうかした?と首を傾げるレインにサラは思案するように俯く
「今日の夜会は、家族参加OKなんよレイン
せやから、ひょっとしたら、えぇ雰囲気やったのに、アカンくなるかもやし」
「う、ん。それはあるかも?」
「眩いばかりの美人揃いやし、家の思惑も絡むかもやし
せっかく、なんや微笑ましかったんやけどな」
「(私はともかく、)サラ、ちょっとオバサンみたいな発言ね・・・」
「まあねぇ」
自覚してるわ、と笑うサラにレインは苦笑した
実際、どうなんだろうか?とレインは内心で首を傾げた
年上の友人達は美形揃いだ
位にしても高嶺の花なのではないだろうか?
血を残す事も大事にする貴族達が、果たして確実性の無い方を取るだろうか?
+面-面→プラス面マイナス面