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赤龍と水龍

水龍アルテナは、紅を塗った唇に笑みを刻んで眼前の男を見る


「アルテナ・・・?」


「うふふ


貴方が<生きて>て嬉しいわよ」


「?」



首を軽く傾げ頭上に疑問符を浮かべる赤龍に、アルテナは笑みを深くする


「我は生きているが?」


赤龍の言葉にアルテナは首をゆるりと横に振る


「以前の貴方なら、他人を気にするような事はしないわ


夜会だって、ほんの少し顔を見せたらさっさと宮に戻っていたのに、チラチラと人を気にして見て。」


「そんなことは、」


言い掛けて口をつぐむ赤龍に、自覚あったわね、と内心で笑う


比較するなら一年前の冬の夜会

彼は始終無言で無表情だったではないか


「うふ。貴方が漸く生き生きしだした、って皆喜んでいるのよ。」


パチーンとウインク一つ飛ばしてみれば、赤龍はなんとも言えない表情で目を瞬かせた


赤龍は愛情を知らない、と黄龍は言う


けれど、アルテナからしてみれば気付かないだけだと思う


黄龍も、樹龍も土竜も、まだ若い白龍だって赤龍に親愛を抱いているのだから


「そうそう。赤龍は私に聞きたいことがあるのよね?」


つい脱線してしまったが、珍しいことに赤龍はアルテナに態々用があって部屋を訪ねてきたらしい


「で?」


「相変わらず、切り換えが早い奴だな


・・・その、」


やれやれ、と息を吐いた赤龍は少し言い淀んだ


どう言おうか迷っているのかそわそわつ落ち着きない


「どうしたの?」


「・・・アルテナ、は龍域に行くことはあるか」


「ないわね」


「そう、か」


「赤龍だって、行かないでしょう?バルクス。」


「行かんな」


龍域というのは、エーティスに点在する八龍それぞれの力が一番顕現する場所で、赤龍の龍域はバルクスにある火山帯にある


アルテナの龍域はシュレイアの北の険峰のほぼ中心にある


シュレイアが土地は痩せているが、水源が豊富な理由が、アルテナの龍域なのである


「シュレイアに龍域はあるけれど、私がよく行くのは宝石を求めにナザルや真珠を買い付けるハレイだもの


シュレイアは貴人向けでなく平民向けだもの。宝飾も、衣装も。


好きだけど、立場的に中々着れないわ」 


八龍は魅せ、身嗜みを整えるのも一つの仕事だ(赤龍はその辺り疎かにしがちだが)

 

「シュレイアが気になるのね?なら、私よりやっぱり土竜が詳しいわよ


土竜はシュレイアにもう10年は通っているはずだし」


「やっぱり、土竜の方が詳しいか。」


「お気に入りだもの」


「そうか。では聞きに行くか」


「えぇ。でもどうしたの?」


急ね?とアルテナが首を、傾げた


「ああ・・・少しな」


赤龍は言葉を濁し立ち上がった


「すまん。邪魔したな」


「気にしないで」


「では夜会で」


「えぇ。」


静かに部屋を後にした赤龍を見送って、アルテナはどうしたのかしら、と首を傾げた




















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