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三日目夜会②

夜会会場へ入室した黄龍達は真白の軍服に似た衣裳を身に纏っている


それぞれ裾や袖口には八龍それぞれを象徴する色が入っている


公的な祭典でしか中々御披露目されない正装に、宮内はざわめく


同様に入室した蓮、カラクサ、アベルの国主達にも視線は集まった


劉は抑えているが薄紫の長衣服に腰帯玉佩をしている

本来ならば冠も被るのだが、外国それも交流の少ない国に居るためか被っていなかった


カラクサ王のツユリは、まさに妙齢の女性のような衣裳であった

ゆったりとした長く軽そうな抑えた朱の服を身に纏い、羽衣のような薄絹をショールのように肩に掛けている首もとには特産の大振りの真珠が光る


アベルの魔王、クラウスはまさに漆黒の衣裳で、髪も瞳も漆黒なので、クラウスだけ浮いたように見える

その首に下がるルビーの深紅と肌の白さに酷く目がいく


レインの隣でサラが感嘆の息を吐く


「ツユリ殿、カラクサの正装であるとはいえ、一見して女性ねぇ

似合ってるのが何とも言えないわ」


「え、男性なん?」


「正真正銘。カラクサは女性も男性もああいうゆったりした衣裳が正装で、貴人は絹の羽衣を纏うの」


「そうなん・・・自信なくすわ」


「別次元な方々だと割り切るわ


それより、明日が心配ね」


部屋の中心に進んだ八龍と三国の国主を見つめ、小さく息を吐いた


「うん?」


「昨日のお嬢さん達、彼の方々見たら折角いい雰囲気を作っていたのに、ねぇ?


家の思惑も絡むかもしれないし」


エーティスの内陸領地は外国と繋がりを持つことは難しい


それ故にこの機会に繋ぎを取ろうと動くだろう

領主でなくとも、貴族ならば考える筈だ


そんなことをつらつら考えているうちに、楽団の曲が緩やかに変わる


「とりあえず、何か飲み物でも頂く?」


「せやね」


周辺国の宰相達は八龍と三国国主に挨拶に向い、更にその後から各領主達が挨拶に動く


中心部が団子状態だ




「女性一人、護衛と壁の華ですか?」


「あら、皆さん護衛は宜しいの?」


「彼の方々を害すなら国軍の全勢力を投入しても少ないくらいで御座いましょう?


護衛といっても、まあ形ばかり名ばかりです」


そう言って笑う三国護衛陣に確かに、と思ったのかレインはクスクス笑う


サラがクレマ領主の父に呼ばれ中心部に向かったのでレインは桐藍と二人壁際で立っていたのだが、そこに三国護衛陣が声をかけてきた


「今夜は少なくとも我等が主は解放されませんな」


「然り。まあ予想の範囲内ですがね」


「意外と八龍の方々からの食い付きも良いですし」


「余り面識を持たないからな。致し方あるまいよ」


やれやれと息を吐き苦笑する面々にレインも変わらず中心部で団子状態の一団に目を向けた


八龍も囲み囲まれている

その中で目を引く、紅と黒に、あら?と首を傾げた


「あぁ、我等が主は赤龍殿に会えるのを楽しみにしていたのですよ」


視線に気付いたクラウス護衛のフェルトがそう言えば、相方のウェルチが頷く



「我等が主は、以前から赤龍殿との手合わせを望んでおりました。戦闘狂とは言いませんが、武闘派ですからね。


赤龍殿のみならず、剣帝と謳われる劉殿にも手合わせを願っていましたよ」


「あら、そうなんですか」


赤龍は同じ八龍以外からの接触を余り持たないせいか、気安げにクラウスに話し掛けられて困惑しているようだ


「今日は近寄れませんな。レイン殿、どうぞ我等が相手でご勘弁を」


「まあ、ふふ

では、是非最近の近況を教えていただけます?話せる範囲で」


「喜んで」


何度目かの苦笑を交わし、出来る範囲の情報交換をしようと更に端に寄った







赤龍は度々視界に入るレインが常に人に囲まれているのに、モヤモヤとなんとも言えない不快感を感じ、そんな自身に首を傾げる


「赤龍殿はレインを大切に思われているのですな」


「はい・・・?」


「ご存知か?あの娘の魂の色は極上なのですよ。そして、元来の性格故なのかあの娘に惹かれる者は多い」


クラウスはにんまりと笑う

魂の色など高位の魔人にしか分からないが、色など分からなくとも性格、眼差し、姿勢など、惹かれる要素は多い


「何故、我にそのような」


「さて、何故かなど些細な事じゃ


しかし、気に止めておくと宜しかろう

何を選択するも自由、とはいえ、か弱き人は容易く掌から溢れるのじゃから」


意味深に告げるクラウスに赤龍は眉根を寄せる


「それは」


「これは忠告じゃ赤龍殿


レインを大切に思うのであれば確と現に留めよ


あの一族は、己の守るものの為なら容易くその命を差し出すのじゃから」


クラウスの口許の笑みは消え、眼差しは酷く真剣で、赤龍は気圧されいつの間にか頷いていた






「ま、そういうことじゃ」


ころりと気配を軟化させたクラウスに赤龍は驚き目を丸くする


「どうした?赤龍」


「樹龍・・・?」


「うん?」


「(大声で話す内容ではないからな、空間をずらしていたのじゃ。)」


クラウスの声が脳裏に響き瞠目する


そんな赤龍をクラウスはクツリと笑った








「クラウス様、赤龍殿に茶々入れてませんでしたか?」


「おや、ウェルチ何故そう思う」


「空間をずらして居らしたでしょう?」


「・・・なんじゃ。やはり気付いたか」


「我等のみならず、劉殿とツユリ殿、黄龍殿も多少気付いてましたよ。


他国なんですから、その辺を弁えて頂きませんと」


「わーっとるわい。仕方なかろう?必要だったんじゃから」


「レイン殿を守るため、ですか?


・・・いざとなれば、アベルに連れ行けば宜しいでしょう。」


真顔でさらりと言ってのけたウェルチにクラウスはクツリと笑う


「相変わらず、二重人格じゃなウェルチ。レインが知れば驚くじゃろーの。」


「おや。それは無いでしょう。貴方もよく御存知ではありませんか。


彼女の器はこの程度の些末な事、笑って流す大きさですよ。だから、貴重なのではないですか。あのような若造に、任せるなど勿体のう御座います」


赤龍を若造と言い切るウェルチにクラウスは呵呵と笑う


「勿論、最終手段は連れ行くさ


しかし、理想は劉殿がするように穏やかに掌中に入れること

これは、ツユリとの約定でもある。


望み望まれが一番じゃて。


ま、・・・難関じゃがの。」


歴代でも最難関かもなあ、と呟くクラウスにウェルチは静かに頷いた




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