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娘の心に触れる

聞き流すところだったが、娘…レインは言った

一昨日早馬を送った。と


通りで。体が動かないのは怪我のせいもあるだろうが、寝すぎた気だるさもあるのだろう。寝ない事には慣れているが、寝すぎた事に体が驚いているのかもしれない。

・・・おかげで眠気が一向に訪れない



これほどただ無為に宙を眺めていたことがあったか。

天井を睨むようにジッとしているのが可笑しいようでレインはクスクス笑う


「親のカタキのように睨まずとも宜しいではありませぬか。せっかくの身体を休める機会ですのに。」


クスクス笑うレインの、言葉も態度も身分上の人間に対する礼儀を心得たしかし柔らかい態度


こんな態度を取られたことがなくて戸惑う


皆、火龍に対する畏れで何時だってそいつには何もしていないのに怯えられた


何時だって皆身体を、声を震わせていたのに、

何時からかその反応こそが当たり前だと思っていたのに。


視界に映る人の娘は、当たり前の様に態度を変えない


我の戸惑う視線を受けたレインは一瞬首を傾げるも、先ほど問うた我が問いを思い出したのか得心いった。とばかりに視線を定めた。


「人と言うのは、噂に踊らされ、大多数の意見に従うのが世の常。

また、自身にはない圧倒的な力に脅えるのは力無いものには仕方無いのでしょう。


・・・けれどまあ、脅えるせいで大切な事を見落としていますわね。」

レインの言葉に首をかしげた。


「大切な事…?」


「左様ですわ


皆分かっている筈なのに、ね。当たり前過ぎて見過ごしているのでしょう。


火龍様は、この国を守護しておいでだという事を。

貴方様がいらっしゃらなければこの国に平穏はないでしょう?


…ただ噂に聞く特攻は、貴方が守護する国の民の一人として、止めていただきたく存じますが」


「守護してる……?破壊しか、能のないこの我が?」


「左様ですとも。

水龍様達の様に強力な結界を張るのも守護。

そうして、第一線で戦うのもまた一つの守護の形でございましょう?」


己の力を護る力と思うた事は一度とてなかった。

だが娘はそれも守護の一つの形と言う


「こんな恐ろしい力が守護の形と…?」


「確かに焔は強い力ですわね。万物を燃やし無にする焔。


なれど、火龍様御自身がその御力を恐ろしいと思っていらっしゃるならば大丈夫ですわ。


力に溺れることも、力に潰されることもないでしょう?


大きな力は慢心を誘う。私はそれによって壊れてしまったものを、遠い昔見たのです。何もかも、灰燼と化したその力を私は今でも覚えております。

とてもとても、恐ろしゅうございました。


力は、扱うものによって全く異なる効力を発揮するものです

火龍様が扱いになるのなら破壊の力も守護の力に変わると、私は思います。

どうぞ御自身で御自身の力を否定されませぬよう。己を否定されませぬよう。

貴方は確かに我が国の尊き御方なのですから。


さあ、直に朝が来ます。もう一眠りなさいませ。体は休息を願っておりますよ」



聞き分けのない幼子に語りかけるように、穏やかな顔で語ってくれたレインは、そう締め括り、日々の生活で荒れてささくれのある手を瞼に乗せた

このように触れてきたものは初めてで、レインに会ってから、<初めて>ばかり経験してると思った。

くすぐったいのは慣れないから。


つきっきりで看病された事も、

正面から視線を絡めて言葉を交わした事も

畏れられなかった事も


すべて慣れない。くすぐったい

だが、何よりも嬉しい

編集しましたー。見にくかったら仰ってください!

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