三日目夜会・・・その前のこと
魔王・クラウス視点
「こうして揃うのは何時ぶりだろうか」
「さて、少なくとも百年単位で揃って無いだろう」
「然り然り」
「俺は初めてだな。」
世に四大国と呼ばれて久しい東西南北に広い国土を持ち建国五千年以上の歴史を誇る我等の国
しかし、四大国揃っての交流という交流はほとんど無い
大陸の端にそれぞれ位置するというのも理由の一つだ(カラクサに至っては海中に国がある)
種族も違えば価値観も違う
文化生活様式も、全て異なる
それ故、四大国国主が同時期に集まると言うことは滅多にないことで、夜会が始まる前に茶でも飲まないか、と黄龍から昨晩の内に誘われていたのだ
この後そのまま夜会へと向かうため正装に着替えているが、儂以外全員随分派手な衣装じゃ
「それにしてもクラウス、ヌシは相変わらず黒を好んでおるのかぇ」
「うん?なんじゃ不満かツユリ」
「ワタシは常識的な面で言っておるのだよ」
呆れたように息を吐くツユリに自分の衣装を見る
・・・黒づくめで、まあ夜会のような場に出るには相応しくないんだろう
「しかし儂は魔王じゃ。魔王と言えば黒と相場で決まっておるのじゃろ」
かつて聞いた魔王のイメージカラーなるものをそのまま告げればツユリは初耳なのか片眉を軽く上げる
「レインが言っておったぞ?こーんなちまっこい頃に」
「・・・クラウス、それでは小人ではないか。俺はレインが生まれたときからあの子を知っているがそのようなサイズは、フェリスの腹の中にいた頃のサイズだろう」
儂が親指と人差し指でこの位、と示せば劉が呆れたような眼差しを送ってきた
冗句じゃ冗句
さておき、黄龍が少し目を見開いているので其方を見る
「どうした黄龍。何を驚いているんじゃ?目玉が飛び出そうじゃゾ」
流石にそれは言い過ぎだが、余り感情をおおっぴらに出さない黄龍が、外つ国の国主に容易く気付かれるほど感情を表に出すなど見たことがない
儂と同じく黄龍の反応にツユリもはて、と首を傾げる
「いや、・・・・そんなに仲良かったか?」
「ああ、なるほど。」
黄龍の言葉に儂もツユリも劉も顔を見合わせる
「まあこうして交流を持つようになったのはここ十数年の内だと思うが。
全てはシュレイアが切っ掛けじゃないか?」
劉の言葉にそうじゃな、と頷く
「それぞれ別々に知り合い、シュレイアを介して、交流を持つようになった
一介の領主と侮る事なかれ
アレは不思議な一族よ」
シュレイアの交流を持つ面々を思い浮かべる
変わり者の多いその中でも、特別親しく特別惹かれる存在
差し出された小さな小さな掌
その小さき身体に見合わぬ成熟した魂
極上の、存在
「とはいえ、ワタシ達が揃うことは滅多にないねぇ
大体、一対一、多くても二対一かぇ
三人揃ったのは五年は前じゃなかったか」
首を傾けたツユリに劉が同意する
その台詞にそんな最近だったか?と首を傾げた儂に二人は揃って呆れた視線を向けてきた
・・・仕方なかろう。六千だか七千だか生きて居るんじゃ
数年など、瞬きに近しい
「毎度のことだが、シュレイアには良い意味で驚かされるね」
クスリと笑う黄龍に、何を今更。と思う
儂なんぞかの領主一族には驚かされてばかりじゃぞ
斜め上を行く行動は、レインもセルゲイも、更に遡った歴代の領主もその傍流ですら関係なくするのだから