二日目夜国府②
「アロウェナ様!!」
「探し回らせてすまなかったな、シリウス。それで、数国が公式訪問の申請中と?」
「はい、既に入国管理の者を中心に虹の間に集まっております
私も、全ての国を聞いたわけではないのですが、大国ばかりだと」
「何故この忙しい時期なんだ全く」
「仰るとおりです」
小走りで虹の間に到着したアロウェナとシリウス
開け放った扉の先には既に大半が集まっていたのだろう、視線が集中する
「お待ち致しておりました」
「すまないね、お待たせしました」
咳払いをし、席に着いたアロウェナは既に猫を被っている
変わり身の早さに流石だと、シリウスは内心苦笑し席に着く
「それで?何処の国が入国申請中なんだい」
「蓮、アベル、カラクサという大国を筆頭に、ローラン、ベルマや周辺国が数国、あわせて十国ほどです」
「一体、何処に?何を目的としてです?」
「シュレイアに、貿易に関する会談を持つため、それから黄龍様に対し来年の夏季に行う予定である四大国、国主の会談の調整並びに開国記念行事の調整とのこと」
「後半はともかくとして、シュレイアは何時も他国で会談を持つのに珍しいですねぇ」
「確かに、珍しいですね。それに、今まで滅多に表に立たなかったシュレイアが、リオルとの一件以降目立つようになりました」
「(さて、何を狙っているのか、それともコレは貴方達にとって想定外なのでしょうか?)」
アロウェナの脳裏に浮ぶレインとセルゲイを思い浮かべる
どちらも一見<普通>を絵に描いたような二人なのに、この数日で<曲者>だと知った
「入国許可は出しましょう。ただし、今は領主会議真っ只中ですからね、それを説明し、暫し客殿に滞在していただきましょう。先にシュレイアに行くか、黄龍様との会談をもたれるかは、黄龍様に相談の後決めていただきましょう」
「では入国許可証を発行いたします。宮内省に連絡し早急に客殿の準備を急がせましょう」
「私が黄龍様には報告に参ります。客殿の準備を優先してお手伝い願います」
<御意>
頭を下げる面々に頷いて、すぐに動き出すアロウェナとシリウス、一拍遅れて集まっていた面々も動き出した
「なに、そんなに一度に入国を願っているのか?」
ぱらりとアロウェナに渡された書簡を捲りながら、顎に手をやり思考に沈む黄龍にアロウェナは静かに頷く
「はい、理由は書簡の通りです」
「ふむ・・・客殿の準備をしているのか?」
軽く首をかしげた黄龍の言葉は、疑問と言うより確認という声色をしている
アロウェナへの信頼もあるのだろう・・・アロウェナが国益を損なうような事をするわけが無い。と
「既に。入国を願っていた各国のメンバーは、どうやら大官のようでしたので特に丁重な持て成しをと伝えてあります。」
「わかった。
私との会談は、各国の都合に任せる。急ぎの予定は無かったしな
シュレイアにも各国の事を伝えてきなさい」
「はい。」
「しかし、シュレイアは貿易に関して会議前に話して来たと聞いたんだがな。
急用ということか、伝え忘れか」
さて、どうしたのかな?と首を傾げる黄龍に内心同意しながら退出したアロウェナはそのままシュレイアの元へと向った
「この時間ならば、まだ夜会の最中か・・・」
アロウェナも生まれは貴族位にあり、夜会、舞踏会、昼餐界など貴族の集まりの出席は経験があったが、国府官になってからは中立の立場をとる為に貴族の社交場に出る事は殆ど無い
煌びやかな世界は、一見して華やかであるものの、内実は腹の探りあいだ
国府内でもそういったことは勿論切り離せないが、えげつないのは貴族の世界の方だろうと思う
特に、この国第三位の地位にある領主が集まる領主会議最中の夜会は、気が休まらないだろうとアロウェナは重い息を吐いた
「何にせよ、伝え終わったらば急ぎで国府に戻らないといけないな」
気持ち先ほどまでより急ぎ足になって夜会の会場まで向うのだった