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二日目3

「そもそも領制というのは、非常に慎重に決めなければならないもの

拘束力が強く、領主や八龍様といえども撤回は容易くできないものです


それを、ここ数年、余りにも簡単に、ヴォルケの領制は増えていった

元々国法によって領は良くも悪くも確立されていますから、ソレも相まって、現状ヴォルケがヴォルケである限り、港の修繕などは全てヴォルケが行わなければなりません


果たして、今のヴォルケにその力があるかと言えば、無いでしょう」



淡々と、セルゲイが告げれば室内は妙に静かになった


「(ヴォルケという、貴族としても領主としても高い影響力をもつ一族を、その地位から引きずり下ろす事しか眼中に無かったんやろな。しょーもな)」



ヴォルケの港は十二領一の広さを誇る

貿易相手国も多い

サラは、西の領地と言ったが、事実上、シュレイア・ハレイ・クレマ以外の九領がヴォルケの港を利用している


今はまだ、影響が表面化していなくても、確実に遠からず九領地に影響が出るだろう



「・・・仮に、すぐに領地を返上させたとして港の復旧にどれ程かかる

ヴォルケの中心部に合った港の損壊はどの程度だ」


「全壊と言って差し支えないでしょうな。


イチから作り直して、五年は掛かるでしょう」



「そんなに、待っていられるわけが無い」



「選択肢は、三つ


一つ、ヴォルケの自力復興を待つ事


二つ、ヴォルケの領主返上の後、各領地から資金を共同出資し、港を作る


三つ、それぞれ独自の新たな貿易ルートを確立させる


以上でしょうねぇ。一も二も時間が掛かるから、三がベストでしょうね」


サラが指折り上げていくが、領主たちの表情は余り良いものではない

特に山と他領地に挟まれた領地は、三すら難しいのである



「ふむ・・・どうするべきか。


当座、シュレイアとクレマの港を利用するというのはやはりダメなんだろうな」


黄龍の言葉にレイン達は頷く



「あの内海から近隣諸国の直ぐ側を通って外海に出る事が許されているのは、うちとクレマの領旗の掲げられた船のみです


何年もかけて、近隣諸国と友好関係を築いてきたからこそ、なのです。


勿論、領旗を貸す事は出来ませんし、一朝一夕で新たな関係を築けるとも思えません。」


首を振るレインにサラも同意を示す

安易にここで頷けば、全領地が共倒れになる可能性が出てくる

そこまで危険を冒す事は出来ないし、其の余裕も無い



「分かった。では、ヴォルケの領主返上の件とは別に、クレマの上げた選択肢以外を考える事

それを明日、話し合わなければなるまい


勿論、当初の予定通りヴォルケの今後を決めるのも明日だ

各領主、きちんと考えてくるように」


黄龍はそう締めると、二日目の会議終了を言い渡した





「レイン、ちょっとええ?」


「なあに?サラ」


会議終了後、立ち去ろうとしていたレインを呼び止めたサラは再び座る事を促した


「どうしたの?」


「ちなみに、やねんけどレイン、案はあるん?」


「唐突ねえ・・・


まあ、一つ位は出せると思うけど」


「どんなん?」


「私も、聴いていて宜しゅう御座いますか」


「アロウェナさん・・・?ええ、構いませんよ」


二人の側にアロウェナも座ると興味深げに二人を見つめる



「で、案って?」


「仮の、港を造る。私ならね」


「仮?」


「本格的に整備しようと思ったら時間と費用が掛かる


それなら、ヴォルケの港から西に少し行った場所にエーティスの所有する島があるのだけれど、そこに船を接岸できるスペース、荷物を置いておく事のできる倉庫、船員の休憩施設を造る


これだけなら二月あれば形になる」


「なんで島?」


「ヴォルケの損壊で瓦礫が海の中にも沈んでいる以上、船は近づく事がままならない


なら、貿易は島でしたほうが相手の安全も取れやすい

此方から島へは天馬や翼竜に運んでもらい、島で受け取った荷物は、やはり天馬や翼竜に各領地に直接運んでもらう


其の間、ヴォルケは土地の復興に全力で当たれる

仮に、荷物をヴォルケに通せば、その道の整備なんかにも時間掛かるし、復興の邪魔になりかねないもの」


「ナルホド」


「それなら、早く貿易が再開できそうですね」


頷く二人にレインは微笑む


「あくまでも、案の一つだけれどね。

もし、ヴォルケの領主返上がなった場合、港、領地の所有は一時的に国府預かりになったほうが良いと思います


其のほうが、国府も状況把握に乗り出せますし、ヘタな争いの種を摘むことができますし」



「そればっかりは明日の決定と黄龍様によるけどなぁ」


「まあね」


緩く微笑むレインとサラを、アロウェナは酷く驚いたように見つめた




「(全く・・・新しい領主は二人とも予想の斜め上を行く方たちだ)」

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