<中>会議二日目
会議二日目が始まる
前日に伝えられていたように、ヴォルケの領地返還に関しての意見を求められる
ヴォルケ領主は会議が始まる前から落ち着きなく、それまでの大貴族としての尊大にも感じられた雰囲気は感じられない
「では、賛成意見が多かったことですから、まずはその理由をお願いいたします
領主の変わるシュレイアとクレマは現領主、次代領主、どちらでもかまいません」
アロウェナの声に先頭きって挙手し立ち上がったのは意外なことにバルクスでもナザルでもなく四領の内のひとつ、ソーレの領主でエルヴィーノ・ソーレである
銀糸の髪を背中に流し普段は涼やかな目元が今はどこか怒りが宿る
「では僭越ながら私から申し上げます
私の返還の賛成理由は、もちろん今回の不手際にありますがそれ以外にも勿論ございます
我等領主は、黄龍様より大切な土地を拝領しています
その領地を守り、発展させるのが勤め
なれど、貴方はここ数年その義務を放棄している
領地の運営を次代でもない一族のものに任せ、自身はアズナスで茶会に出席する
毎日とは言いませんが、ずいぶん頻繁のようですね。
それらの行動は立場を軽んじていると取れます
この国では第三位にあたる地位にありながら如何なものかと思います」
「私もソーレ領主の意見と同意見です
ヴォルケ領地には龍域が御座いますし、領主としての責務を果たせないものに領主の資格は御座いません」
「杜撰な領民の管理も問題ですな」
「これで三領の一角とは随分お粗末ではありませんか」
続く残りの四領領主たちの辛辣な言葉と視線にヴォルケ領主は顔を歪める
「(流石、八龍様至上主義の四領・・・憎しみ篭ってるわね)」
この国の誰もが八龍を尊敬しているが、同じ龍族として余計に、なのか人間の領主よりも遥かに八龍に対して思うものがあるようで、四領主の視線はヴォルケに突き刺さりそうなほどに、鋭い
「私も、宜しいでしょうか」
続いて挙手したのはレインだ
地位としては同位の領主だが家柄では格下にあたる為ヴォルケ領主の視線は忌々しいものだ
「ヴォルケ領主には我が領地から救援物資などを数度送らせて頂いておりますが、調べたところそれらの物資は一部の家のものが取り込み、本当に必要としている、明日を迎えることができるか戦々恐々としているような下層級の民や平民、最近では中層級の民達に一切届いていないとか
門扉を硬く閉ざし、民の流出を防ぐ以上に、物資の流入も滞り餓死者は日々増える一方だと聞いています
ご自身の配下を御せず、領地も領民も損なっているのですからそれ相応に責を負わねばならないと思うのですが、如何でしょうか」
「それ、は」
「黄龍様、宜しいでしょうか」
「なんだ?サラ・クレマ殿」
「ひとつ疑問に思ったのですが、何故こんな事態になるまでヴォルケの領主返還が議題に上がらなかったのでしょうか??
先程から話を聞いていると、ヴォルケ領は随分杜撰な治領を行っていたのですよね・・・?
過去に問題になってもおかしくないと思うのですが」
「ふむ。・・・・アロウェナ」
「はい。
サラ・クレマ様、僭越ながら私が申し上げます
まず一つ、国法により領主の罷免は12領地の領主のうち半数の同意を得てではなければ例え黄龍様であっても不可能ということ
二つ、各領主の治領についてはすべて把握できていないこと
があげられます。これは各領主にある程度の権限があることによる弊害と言ってもいいかもしれませんね」
サラの疑問にアロウェナは淀みなく答える
「最低限の治領がされていたら口出しが難しいということですね
一定の納税がされていたらその税を納める人間が変わっていようと中々気づきません
そもそも各領主それぞれ他領にまで中々気を配れませんし、国府による監査も隅々には難しい」
アロウェナはそういうと一礼して席に戻る
サラも礼を言って着席すると視線は再びヴォルケに集まった
「さて、白熱しておりますが他の領主の方々に賛成意見を求めたく存じます
また、賛成意見の後は反対意見を伺いますのでお願いいたしますね」
前半は賛成した領主たちに、後半はただ一領反対したアズナスに向けられた




