〈上〉~会議一日目
「本日より五日間、司会進行を務
めさせていただきます、国府官、アロウェナと申します
どうぞよろしくお願いいたします」
「同じく、国府官、シリウスと申します
五日間、会議の内容を記録させていただきます
よろしくお願いいたします」
領主に治領を任せているエーティスでも、国府は存在する
各領地から上がってきた税を納めたり、資料の保管や国法の制定、国同士の外交で八龍の補助にまわったり、儀式儀礼祭典などや年に四回行われるパーティを黄龍指揮のもと準備を行ったりと、直接政治に関わるのではなく、裏方作業が中心だ
それでも、国府官は国中から厳正な試験と審査のもと選ばれる所謂エリート集団である
「では、初めに年が明けると同時に領主の交代が二組ありますのでそれぞれ、挨拶を願います」
アロウェナの言葉にクレマのサラと父親であるグウェルが立ち上がる
「年明けと共に領主に就任いたします、サラ・クレマと申します。以後宜しくお願いいたします」
「まだまだ未熟者ではありますが、一族揃って支えていきます。どうぞよろしくお願いいたします」
流石に、公の場では地方の訛りは隠している
サラに緊張は見られず、目には光が強く宿っており先が楽しみだと黄龍は内心で笑う
二人が座ると同時にレインとセルゲイが立てばサラ達以上に視線が集まる
「(この方が、レイン
リオルと停戦に持ち込んだ娘)」
アロウェナは、すうっと目を細める
国府でも随分話題に上ったが、珍しい事にシュレイア出の官がいない為詳しいことは分からないままだ
「(調べれば調べるほど、謎は深まる不思議な領地
一度、調べに行きたいものですね)」
アロウェナがツラツラと考えている間にセルゲイの挨拶は終えていた
「レイン・シュレイアと申します。
年明けと共に領主に就任いたします。どうぞよろしく、お願いいたします」
「(容姿は平凡だが、随分良い顔付きだな
強い目といい、面白い
新たな領主二人の先が楽しみだ)」
「挨拶ありがとう御座います。
では、ひとつ目の議題に参ります
皆さんご存知の通り、ヴォルケは現在壊滅的ダメージをおっております
これに関し、複数の領主からヴォルケ領主の交代の声が上がっております。
まずはヴォルケ領主、何かありますか?」
「はい、この度は黄龍様並びに八龍様には大変ご迷惑を御掛けしましたこと深くお詫び申し上げます」
うん十年昔は社交界の華と言われたろう老婦人は謝っているとは思えない程、堂々としたもので、バルクスやナザル領主は勿論四領の領主も眉間に皺を寄せる
「さて、皆さん何か御座いますか?」
「発言させて頂く」
立ち上がったのはバルクス領主のゼウス・バルクスだ
筋骨隆々とした武人風の男だ
ギラギラとした目でヴォルケ領主を睨む
「この度の被害、全てはヴォルケの行動や領制で後手に回ったせいだろう。
聞けば自領の民の人数すら正確に知らない
というではないか
そんなヴォルケに領主を任せて良いのか!」
前半は責めるように、ヴォルケに言って
後半は他の領主達に訴える
領主達は思わず隣同士で顔を見合わせる
「ヴォルケ領主は、領主を返上すべきだろう」
ナザル領主のアーノルド・ナザルが静かに言えば更に室内はざわつく
「お待ちください!それは、余りにも!」
「ヴォルケの領主返上に賛成のものは挙手してくれ」
バルクス領主の視線を受けアロウェナが引き継ぐ
「では、ひとまず決を取りたいと思います。意見や反論はそのあとでお願いします
では、ヴォルケ領主返上に賛成の方、挙手して下さい」