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同胞

「シヴァ、赤龍の様子はどうだ」



「最初は落ち込んでいたようですが、最後のほうは悩んでいたようですね


ウジウジし続けるよりは、どう動くか悩むほうが未だ建設的です」



「確かにな」



月明かりの下、黄龍の宮でシヴァとジルヴァーンは時折酒を飲み交わす


現八龍の中では最古参の二龍は昔からよく酒を飲み交わしていたがここ半年で頻度は一気に高くなった


酒のアテは勿論、同胞の赤龍とシュレイア家次女のレインの話だ




「赤龍は、愛情というものを受けたことが無い


自身が受けたことの無い感情を持つと言うのは奇妙な感覚だと思いますよ・・・まぁ想像ですが」



「そうだな・・・・赤龍は、生まれ出でて二千数百年愛情を得ることは無かった」


赤龍が生まれたとき、その産声を黄龍はこの宮で、樹龍は住み始めたばかりの八龍の宮で聞いた




エーティスには八龍の力を受けやすい土地が八つある


それを龍域と呼ぶのだが、赤龍が生まれたとき、赤龍の龍域・・・最南端のバルクス領にあった休火山が急に活性化した


火山全16が噴火し、そのマグマによって大小あわせて30の村や町が消えた


過去を見ても例がないほどの大惨事は今も未来も語られることだろう



「赤龍の母親は、生まれたばかりのアレの力の大きさに本来浮かぶはずの無いものが浮かび、あろうことか谷底に落とした


見つけたとき、あれは随分衰弱し助かる確率は二割を切っていた」


母龍に浮かんだのは恐怖だった


子を育てよと詰め寄った黄龍に対し、当時彼の母龍は泣いて拒絶した


龍族はその固体の強さの影響なのか、繁殖力がとても低い種族だった

ゆえに子供が生まれると母龍は子供が五十になるまで甲斐甲斐しく世話をする


いくら八龍になる龍だとて母親が子育てを拒否するなど有り得ないことだった



「哀れな同胞だと思う


だから、アレを受け入れる者が現れて本当に嬉しいのだ」



「えぇ・・・・本当に」


同じ龍族すら恐れる赤龍を、容易く受け入れたシュレイア家の面々


どうかこれからも赤龍を受け入れ続けて欲しいと思う



「名を交わすといいな」


「えぇ」



長い年を生きる龍族はその長い生に、孤独に耐えられず、同胞以外を番に迎える際その番を眷属として生きながらに生まれ変わらせる秘術を持つ


その秘術の一環として名を異種族に付けて貰い異種族の真名と己の付けられた名前を交わす




人名を持つ黄龍も樹龍も人族と番になった



「さて・・・そろそろお開きに致しましょうジルヴァーン様。余り遅くなってはアメリア様に嫉妬されてしまいます」



「それは此方の台詞だシヴァ


ベルによろしくな」



お互いの脳裏に浮かぶ愛しい妻


連れ添ってそれぞれ千年を超えるが未だに新婚のように仲がいい


同胞にもこの幸せを味わって欲しいと二龍は心の底から思ったのであった

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