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揺さぶる
「レインが領主に・・・?」
「あぁ、黄龍様は許可なさった。年明けには当主交代の式を行うそうだぞ」
「そう、か」
「そんな寂しそうな目をするんじゃない。まあ、置いていかれそうだと思うのは分かるがな。
当主となる実力も、民からの信も厚い彼女のこと・・・歴史に名を残すやもしれぬ
人は箒星の如く儚いが、彼女はまさしく、箒星の如くあっという間に人生を駆けていきそうだ」
樹龍の台詞に赤龍は俯く
「人の命の長さに例外はない。シュレイアの者達も例外なくあと百年も経てば儚くなる」
赤龍を受け入れた領主一家
慕ってくれる幼い子供、他の八龍と同じく恐怖なく接してくれる上の子供
一際、喪いたくない娘
出会って僅かに半年
確かにシュレイアの者は赤龍の心を大きく占めていた
「赤龍、お前が彼等に、彼女にどう在って欲しいかは己が口で述べなくては誰も分からぬ
生まれて今日まで小さな望み一つ、言わず生きてきたな。
そろそろ、己という存在を大切にしたらどうだ
我が儘と言われても良いじゃないか。元より我等龍族は我が儘なのだから。」