収穫
美しい黄金の絨毯が眼下に広がる
試験栽培を始めた米の本格的な初の収穫に、レインは連日の長時間の執務で重たい体に鞭を打って愛馬の小雪に跨った
何て言ったって、18年振りの念願の米だ。期待しない方がおかしい。
米は日本人の魂だと思う
「レイン様、大丈夫ですカ?」
「まだなんとかね。忙しくさせてるのは私なのに、この上更に私の護衛まで、ごめんなさい桐藍」
「何をおっしゃいますカ。警邏も護衛も、私が望んだ事でス」
レインの言葉に桐藍は微笑んだ
「有難う。・・・・・・・落ち着いたら皆で温泉でも行こうね。最近湧き出たらしいんだよね
案内は八重に任せて。」
「北の険峰ノ双頭のテリトリーでしたカ」
「そう。連峰の中ほどにあるんだって。しかも龍域を通るからねぇ
北の険峰は八重の根城だから。」
話をしながら、丘を降り黄金に輝く稲の元へ進む
すでに田には試験田を任せた農家の民が待っていた
「レイン様!!お待ちしておりました!!」
「待たせてごめんなさいね。稲の頭も垂れて良い感じね」
「収穫はどのように・・・?」
「鎌で根元の方から刈って、その後天日干しして乾燥させるわ。あらかじめ言っていた稲架は用意してある??」
「こちらに」
稲架というのは刈り取った稲を天日干しにするために木や竹で組んだものだ
日本では昔から使われている
「天気が良い日が続く予定だから、早くて十日後には乾燥が終わるからその後の事はまた後日ね
今日は力を合わせて稲刈りよ。これが終わらないと始まらないからね
腰をやらないように気をつけなきゃダメよ」
笑いながら注意したレインに農民達も心得たと頷く
試験田の収穫は、任せた民以外にも近隣農家の面々が後々の為にと勉強がてら集まって一緒に稲刈りを行ったためその日の内に終わらせる事が出来た
「やっぱりたまには体を動かさないとダメね」
「体の調子はどうですカ?」
「最初はすこーし心配だったの。最近睡眠時間も短いし、碌に体も動かしていなかったしね
でも勘を取り戻したというか、なんだかとても楽しかったわ。
でも今日くらいぐっすり寝たいわね」
ふふふ。と笑うレインに、是非寝て下さいと桐藍は言う
「余り根を詰め過ぎるト、作業の能率が悪くなると言っていたのハ、レイン様ですよ。
しっかり身体も動かした事ですシ今日は意地でも寝て頂きまス」
真剣な桐藍にレインは頬笑みを若干引き攣らせ頷くしかなかった
その日久しぶりに夢も見ず泥のように眠ったレインであった
この章は桐藍贔屓な章に・・・赤龍サン影も形も有りませんでした
ちなみに第四章はもうちょい続くかも??