閑話・黄龍と樹龍
「さて、どうしたものかね」
「黄龍様?何をお悩みで?」
「うむ、レインをいつ頃呼ぼうかとな。
今、シュレイアはヴォルケからの流入民への対応を一家総出でしているようだ。
今呼ぶのは少し、な。
しかし余り間を空けてもいかん。」
「一家総出で御座いますか・・・本当に流石としか言いようがありませんね。
ちなみに黄龍様はどのような褒美を渡すつもりで御座いますか?」
樹龍は貴族らしからぬシュレイア一家を思い浮かべる
過去、エーティスに利をもたらした面々には様々な褒賞を渡してきた
ある武人には龍の牙を特殊加工して折れぬ剣を
ある文官には細工を細部まで施した最高級の硯を
金や銀の宝石を渡したことも、貴族なら位を上げたことも、領地を広げたこともある
「シュレイアは特殊な故、彼女自身から欲しいものを聞こうかと思っている。
金や銀の宝石など欲しがらないだろうしな」
「それはそうですね。」
夫人を始め、装飾品の類いを身に付けることが少ない女性陣を思い浮かべ笑う
「そういえば黄龍様、近く領主会議が開かれるのではありませんでしたか?
レインにはその前日にでも会えば良いのではありませんか?」
「そうか。もうそんな時期か。今年は色々あったからすっかり忘れていたよ」
エーティスには一年に一度、各領主が一同に集まりその年の作物の獲れ高などを報告しあう
これを元に次の年の税を決めるのだ
開催は一月後秋の最中である
「一月後ならばシュレイアも少しは落ち着いているでしょうし、余りシュレイアを気遣うと他の領主がまた五月蝿いですから。丁度良い時分かと。」
「ではその様に。文を書かねばな」