第四章【シュレイア】忙しい日々と影なる民
リオルから帰還した翌日から、レインは執務室に缶詰めになった
ヴォルケからの避難民が続々流入して来ているため新たな居住区を制定しインフラの整備を早急に進めなくてはならないからだ
「レイン、私は何をしたら良い?」
「俺は?」
「姉様は避難地区の近隣の村町から女性人を集めて炊き出しを随時始めて。何が必要になるか、要望をまとめてね
兄様は男衆を募って家の建設とインフラの整備を。
下の子達には、先頭に立って避難民の子供と遊ぶように伝えてくれる?
それから医者の手配も。」
「わかったわ」
「グラン爺を連れてくか」
部屋を出ていった二人を見送り再び机の上に山となっている書類を手に取る
西の端のヴォルケから東の端のシュレイアまでやって来た民
途中には幾つも領地があるにも関わらず、一番遠いシュレイアまで来た
他領からの反応も気になる
また、避難民のみにかかりきりになるわけには行かない
あくまでシュレイアの元々の民の暮らしをきちんとした上で彼らの面倒を見る
当たり前だが蔑ろになりがちなことも事実
「暫くは、缶詰めを覚悟しないと」
「しかし、休息は大事でス
柚子茶をお持ち致しましタ」
「桐藍・・・ありがとう」
「イイエ。シュレイアの警備は、我らにお任せくだサイ」
「暫くは、お願いね」
「承知」
影に溶けるように消えた桐藍
恐らく控えている一族の者に伝えに向かったのだろう
「警備は桐藍に任せたら良いし、情報収集も引き続き彰夏がしている
この忙しさが収まったら、最近アシェに沸いた温泉にでも連れていこうかしら」
桐藍は疲れた顔を厳しく歪めていた主人を思う
エーティスより遥か東にあった故郷を追われ流れの民となった一族丸ごと懐に入れてくれた、手を優しく差し伸べてくれた、ただ一人の主
「桐藍?レイン様は如何でしたか」
「笙慶か。暫くは警備は我等のみで行う
ネズミ一匹通すな
情報収集も引き続き彰夏達で行ってくれ。主は情報収集に関しては何も仰せではなかったからな。引き続きと言うことだろう」
「どちらも我ら一族の得意分野ですね」
「アァ。影と共にあれ
我らの至上の主の為に」
桐藍の台詞に幾つもの影が駆ける
全てはレインの為に
シュレイア家の為に