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願いと帰還

赤龍の背に乗りリオルを出たレインだが、その顔色は優れない



【レイン・・・?】


流石に身動ぎ一つしないことに気づいたのか赤龍はレインの名前を呼んだ


「せ、赤龍様・・・あの、お願いが」


【何だ?】


「こ、高度を下げて速度を落としてください・・・!」


何時もの、年不相応な余裕な口調とは違う余裕なき懇願に慌てて速度を落として高度を下げた


【大丈夫か?!】


「あ、アリガトウゴザイマス」


大きく吐いた溜め息に慌てる

そんな赤龍の様子にレインは申し訳なさそうに苦笑した


「申し訳ありませんでした・・・・


私、昔から高いところが苦手で


翼竜にも余り乗れないのです


赤龍様は大変速くて、本当に申し訳ありません・・・お背中に乗せていただいている身で」


【そのように謝るな。我こそ気付かずすまなかった


速度を落として帰還する】


「ありがとうございます」




先刻より遥かに落ちた速度に今度は安心して目を開けていられた


「(大きな背中・・・流石は八龍様方の中で三番目に長く生きていらっしゃるだけあるわ)」


【レイン】


「?はい、如何致しました?」


【心配、した】


「赤龍様」


【人は、脆い


呆気なく、死ぬ


何人も容易く命を落とすのを見た


此度も喪うかと、怖かった


初めて、我を怖がらず、他の八龍と同じ様に接してくれたレインを、出会って一年も経たず喪うかと怖かった】


絞り出すように紡がれる言葉に、レインは目を見開いた


【レイン、余り無茶をしないでくれ】


赤龍の懇願に、レインは直ぐ返事をすることが出来なかった


無理な約束は、出来ないし、しない


「私は、きっと同じことがあれば今回同様に、無茶でもなんでもすると、思いますわ


口先の約束など、望んでいらっしゃらないでしょう。ですから私は正直に、否やと申し上げます」


【レイン・・・!】


「置いていかれる、辛さも


置いていく辛さも、知っています


それでも、成したいことがあり、成さねばならぬことがある


だから私が約束出来るのは、無駄に死なないように努力すると言うことです」


【・・・・・・】


「それに、私達一家は目指せ大往生!を掲げておりますから。簡単には死にませんわ」


【・・・そなたは、正直だな


我の手前、分かりましたと言えば其れまでなのに】


「約束は守れる確証がなければしない主義なのです」


約束は破るのも破られるのも心を裂かれるように辛いからとレインは微笑んだ



【ならば、我はそなたを迎えにいこう


成すべき事を成した暁に


世界の果てにいても迎えに行く


其くらいは赦せ】


「(赤龍様を足がわりになんて良いのかしら・・・でも此処で断ったら、傷つけるわよね・・・・・?)


そのときは、お願い致します」


返事に満足した様子の赤龍にまあ良いかと内心で笑んだ




【レイン、間もなくシュレイアだ】







「レイン!!!」


「姉様!!」


「ただいま戻りました。


赤龍様、本当にありがとうございました」


レインの礼に、慌てたようにシュレイア家の面々も丁寧に礼をする


【構わぬ。レインには後日黄龍様により王宮に呼ばれるだろう。頭に留めておいてくれ


長く、気の抜けない日々だったろう。身体を休めなさい】


「承知致しました。ありがとうございます」




赤龍の姿が夕焼けに消える頃、レインはシュレイアの家族に囲まれ漸く緊張を解いたのだった

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